森で狩りと急変
四日目だ。清々しい目覚めである。昨日はあの後宿に帰ってから夕食を食べて寝た。夕食はカウンターで食べた。彼女達とは会わなかった。
夕食は野菜スープの色と味が変わっていた。ポトフからトマトスープに変わっている。豆が多く入ってた。美味かった。
そこからは部屋に戻り魔力消費と魔法の練習だ。発動も操作も手足を動かすくらい簡単だ。ならば水を浮かばせ続けることも簡単だろう。
水魔法で作った水で体を洗うことが出来た。タオルでボディソープを泡立てて洗っていく。お陰でサッパリした気分だ。やっぱり体を洗うのはいい。
洗った水は洗面器に流して捨てた。水分も拭き取れるから身体を拭く必要はない。微妙な感覚ではあるがすぐに慣れるだろう。
この街は湯屋もあるが今までの経験から絶対に目立つ。そんな中でわざわざ裸を見せに行く趣味はない。これで家を持つことや高級宿に泊まる必要はなくなった。
アリステア様に、ある程度快適な生活を送れていることを感謝する。髭も生えなくなったから、剃らずに済む。肌荒れもなくなった。ヒートテックはサイズ調整できるから活動も睡眠も楽だ。
この街に来て良い宿といい人にも出会えた。そしてそれを続ける為にはお金を稼がなきゃならない。
今日は狩りをしよう。
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一階に降りるとバルザスさんがキッチンで調理しているのが見える。
「おはようございますバルザスさん」
「おっ、ペストか。おはようさん。料理も出来てるぞ」
いただこう。カウンターに座ると料理も運ばてくる。肉と野菜がゴロゴロ入ったトマトスープにパンだ。切られたリンゴか梨もある。
「ありがとうございます」
「おう!しっかり食べろ!」
やっぱりこの宿は良い宿だ。気分も上向きになる。
周りを見るが彼女達はいない。
「どうした?彼女達のことか?」
「ええ」
「寝てんじゃねえか。夕食も時間ギリギリに来てたぜ。宿に帰って来たら疲れた感じがしてたからな」
「そうですか」
「しっかしお前モテてんな。周りも見てるぜ」
「ハハッ、バルザスさんもモテたのでは?」
照れることはせず、そのまま返すがこれは本音だ。
少し悪戯っぽく笑いながら聞く。
「いやいや。俺は元冒険者だぜ。そうでもねえよ」
「そうなんですか?」
聞いてみるが、とてもそうとは見えない。リャーナさんという綺麗な奥さんもいる。
二メートル弱の長身で、髪は短く刈りそろえられているし。目つきも鋭く精悍だ。筋肉隆々でこの性格ならモテると思うのだが。
「ああ、昔はこんなんじゃ・・・」
「バルザス?」
リャーナさんの声だ。
「おっ、いけね。また今度な」
長話になりそうだから良かった。話を聞いてみたかったが、今日は狩りがしたい。
いただきます。
早めに朝食を食べる。美味しかった。
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朝食を食べて、装備を着けて冒険者ギルドに来ている。のんびり歩くのは止めた。お陰で人も少なめだ。今日は右の掲示板を見ている。
魔物の討伐依頼や護衛の依頼。薬草の納品まで様々だ。街中の依頼もある。ドブさらいや日雇い労働もある。
これにしよう。
バイズ草の実の納品だ。二日前にキュール草と一緒に取った薬草の実だ。解毒薬がこれで作れる。
依頼書を取って受付に行く。列はないからすぐに受けられる。今度は別の受付嬢のところで受ける。
「これ、受けられますか?」
「はい。バイズ草の依頼ですね。少々お待ちください・・・はい受領しました。期限は明日までですね」
「分かりました」
バイズ草の実は収納から取り出せるから、帰ってから出そう。森でゴブリン以外の魔物と戦えることを願おう。討伐依頼はそれからだ。
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走って森に着いた。二日前よりペースを上げた。魔物は全部ガン無視だ。少し身体が温かい。ヒートテックの温度調整ですぐにそれも収まる。ヒートダウンだ。
いくらかペースを落として森の中に入る。今日は浅い所から中層まで行く。それなりに周りを見て注意しながら進もう。
そう思ったら早速ゴブリンだ。三体いる。突っ立ったまま近づかせて後ろの奴を右手の投石で頭に当てる。相変わらずだがいいやり方だと思う。楽に殺せる。
悲鳴もない。一匹目!
また投げる。二匹目!
三匹目がナイフを持ちながらこちらに突っ込んでくるが、収納から左手に取り出した棍棒で腰を使って横に振り抜く。
「ギャア!」
ゴブリンを仕留められなかった。転がって蹲るゴブリンに近寄って頭を潰す。砕いた感触が伝わる。もう動かない。
周りと石の当たったゴブリンを見る。どっちも動いていない。死んだようだ。解体の時間だ。一箇所に集めて闇魔法を発動する。首の後ろと後頭部を覆い嫌悪感を減らす。胸を切り開いて魔石を取る。左耳もだ。
一体ごとに周囲を確認していくのでロスがでる。三体とも終わったときに矢が飛んで来たのが見えたが当たらない。
下手くそだ。闇魔法も切り終えている。
矢が飛んできた方を見る。またゴブリンだが、今度は弓持ちだ。傾斜を二体のゴブリンが駆け下りてこっちに向かってくる。二体は棍棒持ちだ。
矢がまた飛んできたが二歩分右横にずれて躱す。矢がヘロヘロしていたからだ。右手で前のゴブリンの頭に向かって投げてから走りだす。
ゴッという音がしてゴブリンが右向きに倒れる。もう一体は走りながらファルシオンで右首を貫いた。碌に反応できていない。少しの抵抗を感じながら、そのまま弓ゴブリンに向かって走る。
もう一矢飛んできたがやはり当たらない。弓持ちの右斜めに進み、間近まで近づく。
最後の一矢を右に切り替えて躱し、持ち替えた棍棒で振り抜く。手で防ごうとしていたが頭の真上から叩いて潰した。骨を砕く感触があるから殺しただろう。
他を見てみる。動いていない。周りに他の魔物もいなさそうだ。息を吐く。取り敢えずこれで六体仕留めた。これで宿代二日分と少しだ。解体に移ろう。また集めて手早く左耳と魔石を取る。魔力は一割半は削れた気がする。
弓を見てみるが駄目だ、使い物にはならないだろう。小さくて細く張りも弱い。矢筒から取って一本射ったが速さも精度もない。残念だ。折って捨てる。
棍棒は後で森の入り口で燃やす。ナイフは刃がボロボロのやつと錆びたやつだが、端金になるから取っておく。
戦闘時間は一戦あたり一分もかかってないと思うが。殺し合いだ。試合よりも神経が研ぎ澄まされる。この感覚は悪くない。弓持ちに近接戦を試したが大丈夫だった。今度は投石で腕や足を潰そう。
武器を見る。ファルシオンで一体貫いたが大丈夫そうだ。剣鉈は研ぐ必要が出てきそうではあるが。
最後に周りを見る。もういない。行こう。
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あれから森の少し奥に進んだ。ゴブリンも途中で二体殺した。薬草がいくらかあるところに出たが、虫の魔物がいる。芋虫だ。うえー。
グリーンキャタピラーだ。高さは膝位で胴体少し長い位だ。ぶよぶよの皮で覆われている。この魔物は襲うか近づかない限りまず敵対してこない。攻撃手段は糸を吐くくらいだと資料にあった。無視しようか迷ったが、お金の為だ。
投石で遠慮なく潰した。
緑色のドロっとした粘液には触れたくなかったので柔らかい身体の上部を切り開いて剣鉈で魔石をほじくり出した。匂いも変な匂いだ。ゴブリンよりはマシに思えたから闇魔法は使わなかった。
薬草採取をしよう。
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薬草を取り終えて奥に向かう。八時か九時位だろうか?この森の中層域は少し暗くなり、魔物の数も増える。オークや猪の魔物、狼の魔物も中層域に結構出るらしい。浅いところにも出てくる時がある。
そしてそのオークだが既に死んでいる。身体には傷一つ付いていない。頭以外は・・・
ごめんなさい、投石で殺しました。
大きい石を使ったせいか、当たりどころがオークにとって悪かったせいか分からないが、一撃だった。
歩いているのを見つけたので左斜め後ろから右手で石を本気で投げたが、そのまま倒れ込んでしまった。動いていないので警戒しながら近寄ったら頭がいくらか砕けていた。マジですか・・・
オークの容姿だが、人間と同じ位の身長かいくらか大きめと資料にあった。襤褸の服を着ているが汚れた灰色の肌で胴体がでっぷりしているのが分かる。手足は太く、首は短く足も短い。
ひっくり返して顔を見たが、豚の顔を潰したような顔と言えば分かるだろうか?口には牙が二本見える。ゴブリン同様、醜悪な顔だ。
こいつらも人間種族の女を攫って苗床にする女の敵だ。ゴブリンよりは足が少し遅いらしいが、ゴブリンの数段上を行く危険度だ。武器持ちなら銅級冒険者四人で挑んでも危険らしい。
左耳と魔石を急いで切り取る。オークは常駐依頼になっていた。少し増えてるらしい。この世界ではオークの肉は食べない。女を犯す魔物など食べたくはないだろう。頭を潰しておく。
切り取り終わって剣を取る。オークが持っていたやつだ。片刃で軽い反りがある。刃こぼれはあるが短剣やナイフよりは金になるだろう。鑑定したが鉄の剣と出た。鉄の武器なら、鉄の○○と出てくる。
ゴブリンの棍棒を二本取り出し、剣を収納に仕舞う。容量不足だ。次魔物を倒したら、バックを出さなきゃいけなくなる。気を付けよう。
オークになると木の盾や大きめの武器を持った奴が出てくることも多いらしい。今度は投石で足を潰してから戦おう。
昼前ぐらいかな?今日は帰ろう。
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あれから街に戻って来た。森の浅いところでゴブリンを二匹見つけたが、投石で殺した。投石だと作業に近くなってしまっている。ゴブリンの棍棒は全て火魔法で燃やした。
ギルドに報告しに行く。なんか騒ついていたが気にせず受付に行く。人が並んでいないので楽に済む。今日の報告は受付嬢さんだ。
「ペストさん!無事だったんですね!」
ホッとしているが、顔が強張っている。何かあった?
「?何かあったんですか?」
「オーガが森に現れたんです!」
はい?
さて、どの国のせいでしょうか?(すっとぼけ)




