プロローグ
「朝よー!!起きなさい!」
そんな声が聞こえた気がして、目を覚ます。母の声だ。ああ、また朝が来てしまった。そんなことを最初に考えながら、自分の朝は始まる。できればこの朝が夢であって欲しいと考えながら。
朝食を済ませれば、作業の時間である。着替えを済ませ、リュックを背負う。階段を降りて玄関を開け、その直後に目に入る、陽の光に目を細め、逸らしながら、「行ってきます」と言い家の外に出る。陽はあるがやはり寒い。怠さを感じるけれども染み付いた感覚により、身体は勝手に動き出す、作業を当たり前のようにこなそうと。
登校の途中で自分と同じ制服を着た学生達を目にし、彼らの話し声や車の音、自転車の音を聞いて、彼らを目にしながら、学校に向かう。
校門を通り抜け、いつも挨拶をしている教員に会釈として軽く頭を下げ、校舎に入り、上履きに履き替え、自分のクラスに向かう。元気そうな、同級生達の声に頭痛を感じながら。
いつも通りに自分のクラスのドアを横に引き、教室に入る。ドアの音を聞いて、話していたであろうクラスメイトの何人かが自分の方に振り返ったことに気にも留めず、すぐそこにある自分の席に座り机の横にカバンを掛ける。
ちょうどそこでチャイムが鳴り始め、担任の先生が教室に入ってきて生徒が全員来ているか確認した後、挨拶を始める。これから始まる作業の本番に気が滅入るのを感じながら、自分は一限目の準備をする。
―――――
毎度毎度のことながら、最後の授業の終わりのチャイムを祝音のように感じる。クラスで振り分けられている掃除場所に向かい、掃除を終わらせて自分のクラスに戻る。
自分の席に着き、時計の針の位置を確認すれば、後数分で担任が来て、帰り前のホームルームが始まるのだと、内心うきうきしながら待つ。
クラスメイト達も数人のグループで話し合っているが、どの顔にも嬉しさが朝の時よりも浮かんでいるので、考えていることは自分と同じだなと感じながら、担任を待つ。
ちょうどその時だった、
周囲から聞こえてきていた、声や音が一瞬、一切しなくなり、部屋が真っ暗になったのは。
さっきまで明るかったのに教室が真っ暗になったことに内心驚きつつ、その直後に困惑や驚きを含んだクラスメイトの声が聞こえてきたのを耳にして、若干安心する。今動けば躓いたり、誰かにぶつかったりして危なそうだと思いながら、何故教室が真っ暗になったんだろうと考えていた時だった。
また異変が起きた。
自分の視界の下から青い光が差し込んできたのだ。教室が真っ暗になったとき以上に驚きつつ、回りの下に視線を向けて見ると、そこには幾重にも重なった青い線と何らかの文字らしきものが目に映りこんできた。
青い光により、教室はまだ暗いが、辺りを見回せるようになったことに気づき、回りを見てみるとクラスメイト達も下を向いて青い光を見ていた、いったい何だこれは?皆がそう思っていただろう。そう感じつつもこの異常事態に対し、自分はまずリュックを背負い、教室から出ようとしてみた。
ドアを開けて外に出ようと手をかけるが、ドアが開かない。力を込めて開けようとするが、それでも開かない。クラスメイト達もこの事態に対して、危険を感じたのか焦った顔で廊下側と外の窓を開けて出ようするが、開かないみたいだ。
視界に入る青い線と文字が放つ光が強くなっていくのを見て、クラスメイトはこの事態に声を荒げたり、困惑している。担任がまだ来ないことと光が強くなっていくことに嫌な予感を感じて、自分はドアを無理やり開けようとした。
校則や社会的なことなどを無視して、ドアに蹴りを入れてもタックルをしてもビクともしない。クラスメイト達は自分の突然の行動に驚いているらしいが、そんなことはどうでもいい。頼むから何も起こらないでくれ、いや、自分だけは巻き込まないでくれと、心の中で懇願しながら他の方法で開けようと試みるが一切開かない。
ふざけんな!と業を煮やし、次は本気で壊そうと椅子を振りかぶって、勢いを利用してドアに打ちつけようとした。
だがその瞬間に音が消え、青い光が強くなり、視界一面に広がったのを感じたときには、青い光以外何も見えなくなった。
意識が遠のいていくのを感じながら自分は最後にこう思った。
どこかの誰かが、たとえ皆のことを嫌いになっても私のことは嫌いにならないでください。と言っていたのを思い出しながら。
たとえクラスメイト達がどうなっても、私のことだけは助けてくださいと。思想の自由には感謝である。
そうして自分とクラスメイト達はこの日、教室から姿を消した。
読んでくださりありがとうございした。