クラスメイトと森
別視点入れました。
知っている情報は伝え終わった。人間種族の多さに驚いていた。幻想種・幻獣種の話は彼女達全員聞き入ってた。
ドラゴンの話をしたらツインテだけが目を輝かせていた。他はやっぱり顔でげんなりしていたが。魔物もドラゴンもそんなに変わらないのだろう。
彼女達からはクラスメイト達がどんな力を選んだか聞いた。有意義な時間だったと思う。大体は隠密系の力や探知系の力を一つ選んだそうだ。他には得る力にも向き不向きがあると聞けた。基礎スペックを上げたのは間違いじゃなかったらしい。
危険そうな力を選んだやつについては名前を教えてもらったから気をつけよう。顔と名前が一致しないが。彼女達の選んだ力は流石に聞かなかったが、忘れてた彼女達の名前は聞いた。
ロングが白咲さん、ツインテが葉桜さん、ショートカットが阿笠さん、眼鏡が芽木さんだ。覚えていよう。
装備やら道具やらのついでにシャンプー、ボディソープ、ハンドソープがあると言ったのは不味かった。四人全員が必死に迫ってきた。
細かいことは言わないが恐ろしい顔だった。無邪気そうなツインテでさえもだ。やっぱり女の子だ。瓶を持ってきたら分けると約束した。初回は無料にしておいた。
彼女達はここで資料を読むらしい。俺は薬草採取をしにいくので別れた。別れるときに感謝された。良かった。
ーーーーー
「行っちゃったね」
亜実がいう。
「そうね、感謝しかないわ。どう?」
彼のお陰で貴重な情報も聞けたが、私は二人に目を向ける。
「うんにゃ、オールグリーン。殺意も危険もなし」
「大丈夫、信用できる。読めたのは心配と安心と軽い警戒だった。私達の反応を見て少し面白がってもいたと思う。女神様の話には少し怒って呆れてた。シャンプーのときが一番怖がってた」
「あれは反則だよ!」
確かにあれは反則だ。あれを白い空間で思いつかなかったのは最大の失敗だった。あれを口にした以上、どんな事をしても彼を逃がすつもりはなかった。どんな事をしてもは流石に比喩だが逃がすつもりはなかった。
昨日は街に着いてから宿を取ってみんなで探索をした。道具屋で安い石鹸を買って試したが満足できるものじゃなかった。いい石鹸もあったがかなり高くて諦めたのだ。
初回は無料と言っていたから遠慮なく試せる。後で絶対瓶を買わなくちゃ。
「それより白ちゃんどうだった?」
名前のことだろう。
「ペスト・エクスマキナ。名前も変わってたわ。前の名前はなかったよ」
「偽名じゃなかったのか」
「姿も名前も変えた方が安全」
それは一般的な話だ。彼は目立っていた。
「前の彼を覚えてる?」
「ムキムキ!」
いや、そうじゃなくて。
確かに他の男子より筋肉質だったと思うけど。
「うんにゃ、一番前の端だったことだけ。あと、いつも一人だったな」
「普通に真面目。でも小説をよく読んでた」
確かにそんな記憶がある。数分前に登校して来て、普通に授業を受けてた。いつも一人で眠そうな目つきをしていた。
彼の元の名前を私達は覚えてなかった。彼も私達の名前を覚えてなかったけど。
「でも名前のペストって?」
亜実が私に聞いてくる。
「多分黒死病のことよ。中世に流行った病気ね。世界史の教科書に絵もあったわよ」
記憶にある不気味な絵を思い返す。何故その名前にしたのかは分からない。今度聞こうかな?
「エクスマキナは?」
「デウス・エクス・マキナ」
叶ちゃんが答える。
「機械仕掛けの神の名前。そこから取ったと思う。物語の内容が錯綜したときに神がご都合主義的に登場して問題を解決する。昔の悲劇的な物語によく出る」
「へー」
私も知らなかった。
「しっかし、あんなに綺麗になってるとはな」
玲奈が言う。
「あれは反則にも程があるよ!」
「同意、羨ましい」
「凄かったわね」
あれは余りにも反則だ。あんなの誰だって見る。一目見たときは固まってしま った。ここで笑った顔を見たときは見惚れてしまった。狙ってやっていたのだろうが私達は見惚れた。
彼の顔を思い出す。
灰色にも銀色にも見える綺麗な髪を横と後ろに流し、眉毛は細長く優美で、二重まぶたで切れ長のつり目ととても綺麗な銀色の瞳は知性と意思を感じさせた。鼻筋はスッとして高く、薄く赤い唇が肌の白さを際立たせていた。どのパーツも完璧と言えるものだった。
マントを外していたので彼の背格好も衣服もしっかり見えた。背は百八十を優に超える高さで肩幅はあるが、体の線が細く見え手足が長かったのでモデルよりも映えて見えた。
背の高さで青年にも見えるが、中性的で少し幼さが残る顔立ちのせいで少年にも見えた。
布の服の下から見える、首や手首まである黒のヒートテックも彼の肌の白さも相まって容姿を一層映えさせていた。
あんなの誰も見たことがない。できればずっと見ていたいと思えてしまう程の容姿だった。
だが、それよりも、
「それよりも、今は資料よ」
「うえー」
「うげー」
「情報は大事」
私達の状況を見越してここに呼んでくれたのだから。
「彼には感謝しましょう。それにまた会えるわよ」
「うん!」
「ういー」
「無論。シャンプーは絶対確保」
やっぱりシャンプーは反則だ。
ーーーーー
冒険者ギルドを出る前に受付嬢さんに道具屋の場所を聞いた。親切に教えてくれたのでお礼を言った。
受付嬢さんだけに話しかけるのはもう辞めておこう。去り際に他の受付嬢達と少し揉めてる声が聞こえた。
時間は恐らく昼近くだろう。屋台の食事で済ませた。生地に肉と野菜を挟んだやつを食べた。肉の旨味を感じられた。
道具屋で袋をいくつかと木の皿と器、コップを買った。お金が心許ない。
門兵に冒険者証を見せて街の外に出る。
これから歩いて二時間位かかる森に行く。魔物もいるが薬草もそこにある。森の浅い所なら危険も少ないと資料にあった。
道があるのでその道の上を走りながら森に向かう。
ーーーーー
森の手前に着いた。走ったので一時間もかかっていない。もしかしたら三十分もかかってないかもしれない。かなりのハイペースだったのに目眩もなく、息も上がらなかった。
異世界だからでもあるが、凄いなこの身体。
森を見てみる。遠くから見てたが、結構な大きさだ。木々も生い茂っている。手前の場所の木は切られていて、キャンプ場のような形跡だった。今は誰もいない。
森の深部にはオーガやトロールがいたと過去の資料にあった。中層にも出てくるとも。深部には入らないように気を付けよう。
そして俺は森の中へと足を踏み出した。
彼女達四人の内、三人の一部の能力はこの描写で予想できるでしょうか?