資料とクラスメイト
朝になって起きた。昨日は髪を洗って、身体を布で拭いた。シャンプーは植物のいい香りがしたが、身体は濡らした布で拭いただけだからいくらか不満だ。シャワー浴びたい。
寝る前に魔法の練習をして魔力を使い切ってから無性体になって寝た。性欲が湧かないからやっぱり無性体は便利だ。着替えて、ヒートテックを大きめの半袖短パンにサイズ変更して寝た。天使族になったお陰で夜中で暗くなっても目が見えた。
魔法は水魔法、闇魔法、光魔法を試した。宿内だから事故は起こせない。魔力は冒険者ギルドに着いたときには全快してた。かなり早いと思う。
ヒートテックと水筒に付けた洗浄能力も試したし、衣類は水魔法の洗浄をイメージしながら洗って水分を抜いた。宿内での光魔法の現状の使い道は明かりだけだ。闇魔法は色々試せた。
ここの宿の食事は普通だ。元の世界と比べるのはよそう。夕食に一階のカウンターで硬めのパンに肉料理、野菜の入ったスープを食べた。箸がなく、スプーンとフォークで食べた。
水と酒を選べたので、好奇心で酒を一口飲んでみたが辞めて水にした。あれは不味い、というか苦い。ただ、肉料理は前の世界より美味しかった。
パンはアリステア様に貰った食料のパンよりは柔らかかった。昨日の昼に食べてみたがあれは水でふやかして食べた。旅用の保存食なので美味しくなかった。
宿の名前は『竜の眠り亭』だ。名前の由来は店主や宿の防犯度の高さ、快適さから付けたそうだ。店主が筋肉隆々のナイスガイで元は冒険者だったそうだ。今は奥さんと二人の子どもがいて従業員さん達と宿を切り盛りしているそうだ。
食事も防犯も悪くなかったので宿を追加で十日分取ったら宿代が安くなった。本当に部屋が空いていて良かった。
朝食を取ったら冒険者ギルドで資料を読もう。
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顔を洗って着替えていたら、朝の鐘が鳴ったので一階に降りて食事をしに向かう。一階に降りたらキッチンで調理しているバルザスさんが目に入った。
バルザスさんは店主の名前だ。見た目は背が高く筋肉隆々で三十歳前後に見えるが、四十は超えているそうだ。少々豪快に見えるが気さくな人だった。
アリステア様から種族の話を聞くときに聞いたが、この世界では短命とされる人族や獣人族でも前の世界と同じくらい寿命が長く、若い時が長い。
戦闘をしている人や鍛えている人は寿命も若さも更に長くなるようだ。一流以上の人になるとそれが顕著に表れる。
両親の種族や先祖の影響も受けるので人族、獣人族でもあまり老いない人がいる。長命種族はほぼ老いない。やっぱり種族差は大きい。
「おはようございますバルザスさん」
「おお、ペストか、おはようさん!席に座って待ってな、もうできる」
そう言われたのでカウンターの端で座って待つ。席はカウンターとテーブルがある。従業員の人が料理が運んできた。パンと野菜と肉が入ったスープだ。
いただきますと心の中で言い食べる。こっちの人は手の平を合わせることはしない。両手を組んで祈りを捧げることはあるが。
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食べ終わったので皿をまとめて返却口に返して部屋に戻る。装備を着けて宿を出る。鍵はスペアがあるから渡さなくていいらしい。失くしたら罰金だ。
街は朝でも人通りが多い。のんびり歩きながら見たが、野菜やら果物を売っている市場があるからだ。やっぱり顔を見られた。買い物をしている女性が多く、背が高く美人に見える。
昨日から顔を見られると波が割れるかのような感じだ。本当にやりすぎた。
冒険者ギルドに入ると多くの冒険者が右手の依頼書が貼ってある掲示板に群がっていた。少し遅かったらしい。しばらくは常駐依頼を受けるから別にいいが。
テーブルで待ってる冒険者達が一斉にこっちを見てきた。扉を開けた瞬間に見てきたので噂になったかもしれない。見てくる人には女性や少年少女もいたが、多くは野郎どもである。こっち見んな。
獣人の人もいたが、犬耳の生えたムキムキの男である。誠に残念だと心の中で思った。
獣人族の種族概要だが、彼らは犬猫狼獅子熊などの動物の特徴を持ち種類が多い。身体能力が総じて高く、五感は他の種族より鋭い。魔力は少ないが、狐と山羊の獣人は例外で魔力が多めである。一部は過去に滅びている。一部には獣化が使える者がいるらしい。
今日は資料を閲覧するから左手奥の階段に向かう。昨日の受付嬢さんがこっちを見ていたので手を軽く振ってあげた。冒険者達と受付が騒がしくなったが気にしないことにする。
二階の資料室は小さかった。真ん中に四人がけのテーブルが四つに椅子、右手側に本棚があった。植物と魔物の資料を見よう。
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資料をいくらか見たが、やっぱり昨日追い払ったやつはゴブリンだった。簡単な絵がある。これで遠慮なくやれる。魔物の資料には他にも定番のスライムやコボルト、オーク、オーガがいる。
動物や虫、爬虫類、植物の魔物の資料があった。変わり種だと不死者や魔力生物、悪魔の資料もあった。目を引くのは不死者の資料だ。
この世界の不死者は死体や霊が該当する。死者の怨念や悪霊、悪霊の死体への憑依、周囲の魔力の影響から発生する存在だ。吸血鬼族は関係ない。生者が死者を操るのも不可能だ。
不死者に殺されると不死者化しやすいと資料にあった。不死者の魔法使いが死者を不死者にして操るという報告もある。不死者は可能なら見つけ次第、討伐したほうがいいらしい。
植物の資料も呼んだ。
植物の資料は傷を治す薬草がある。ポーションの材料だ。他にも解毒剤や病気に効く薬草、魔力回復に使われる希少な植物の資料もあった。その採取方法も。
記憶力も良くなったので労せず覚えることができた。有意義な時間だったと言えよう。しばらくの間は資料室に通うことになるだろう。
なんだか一階が少し騒がしい。降りよう。
一階に降りると、こっちの向きに座っている冒険者達が見てきたが、他の冒険者は別の方を見ている。
そっちを見たらクラスメイト達がいた。