緑色で腰にボロ切れはいたやつ
俺はしばらく歩いていた、そしてやつに出会ってしまった。恐らくやつだ。ゲームや小説の定番、お馴染みのやられ役、体格は子どもで緑色の肌に顔は皺くちゃ、腰にボロ切れはいたやつだ。そう、ゴブリンである。正式にはまだ未定だ。鑑定を使ったが、やはり名前は出てこなかった、残念である。そしてそのゴブリン(仮)だが濁った目でこっちを見ている、こっち見んな。
「ギィィ」
ゴブリンは親の仇を見るかのようにこちらを見ている。
いや、だからこっち見んな。
「ギャッ!」
ゴブリンがこっちに向かってきた。
俺は逃げた。
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とりあえず分かったことがある。ゴブリン(仮)は俺より遅い。検証した、体の大きさの割には早い印象だったが全力疾走せずとも余裕で逃げれた。俺は止まって後ろを振り返る、ゴブリンはまだ遠いので待つ。待つ間に荷物を置いた、次だ。
ゴブリンが追いついてきた、さっきよりも憎いものを見る目でこっちに向かってきて殴りかかってきた。
腕を取って投げた。次だ。
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ゴブリン(仮)相手に練習をした。殴りかかってくるが、手で止め、流し、崩し、払い、投げた。何度かやると逃げたが、逃さなかった。逃げようとしたところに回り込んだ。ゴブリンは逃げたそうにこちらを見ていたが俺は首を振ってやった。
ゴブリンは逃げられなかった。
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しばらく練習してみたが収穫はあった。自分の身体が良く動き、ゴブリンは遅く感じた。お陰で傷つけない技をかけるのは容易だった。蹴りやパンチなどの打撃は寸止め前提で試した。技と呼べるか分からないが。
そしてゴブリン相手にこれ以上やるのは無意味だった。
ゴブリン軽くて小さいし。
そしてゴブリンは息も絶え絶えだった。感謝を心で言いながら最後は向こうに優しく放り投げてやった。ゴブリンは急いで逃げていった。さらばだ。
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歩きながら考える。ゴブリン(仮)を殺していいか分からなかった。逃げるのも技をかけるのも容易だったのは幸いだった。お陰で楽に追い払えた。本当に殺していいかは街について冒険者になれば分かるだろう。ただ・・・
ゴブリンの殺意は本物だった。本気で殺そうとしていた。普通なら殺しても問題ないくらいに。足の速さが自分より速ければ、武器を持っていれば殺していたかもしれない。そう考えると怖かった。そして・・・
ゴブリンは汚かった。ハンドソープで手を洗った。