ビビリ今度は司祭見習いです
命を粗末には出来ません。
助けられる命と、助けたい命は比べられない。
優先順位は、追い追いでもいいですよね……?
☆
風月に入り、6才になりました。
今日は、小雨が朝からずっと降っています。
雲行きは怪しく…… コレは嵐の前兆。
昼なのに薄暗く、風が荒れて来た。
収穫前の野菜や果物、麦や米を守るため、村人達が忙しなく動き回っています。
今までの家庭菜園レベルの頃、嵐は来たら来たでどうにかしのいでいました。
天候の予測をするのは村長や長老で、それも常にではなく、的中率は完全でも無いモノなのであまり充てにもしてはいません。
大体行き当たりばったりでバタバタ。
そこでッ!!
[私の出番です?]
はいっ、その通りです。
代行者さんを回復する為に、人々から信仰をどう集めるか。
[……また、呼び方が]
あっ、はい。
ごめんなさい。
カレンさん。
[はい、よろしい]
何とか、さん付けで譲歩してもらえた。
閑話休題。
今や農業生産主体の村の皆に『天候の予測』という加護を持った神がいると知らせれば、信仰や祈りは自然と集まるのではないかと。
今日の嵐が予報で的中したし。
どうすか皆さん。
では、お天気お姉さんの、カレンさ~ん。
[は~い]
ノリノリですね、何より。
どうです?
信仰の響きはありますか。
[村の皆さんから来てます]
おお、早速!
[ジワジワと染みてくる感覚、やはりくすぐったい……]
カレンさんの健康の為、これは我慢我慢。
どれ位で使った分の力が戻りそうですか?
[間もなくです。あの、所で、私は何故に調停者と?]
あれ。
あっ、説明をしていませんでしたか、すいません。
流されていたから納得かと勘違いを。
えっと、まあ、性格です。
性格のタイプを分けると、幾つかのパターンになるんですが。
9だったか10くらい?
因みに僕は研究者タイプらしい。
昔の、以前の世界の話。
勉強で躓いて、どうしたらいいのか分からなくなっていた頃の知識で。
性格別の勉強方法ってのが頭に響いて残ったんですよ。
代行者さんは、平和的で、攻撃的な意見を嫌い、我慢し過ぎてしまう。
近い献身家というタイプもありますが、どちらかと言えば調停者かな、と。
勝手に決めつけてすみません。
[……いえ、納得いたしました]
良かった。
[私の事を良く見ているという事ですね]
……はい。
恥ずかしながら。
いつも考えて、います。
[……また手玉に取るつもりなんですね?]
無理です。
勘弁してください。
[ふふふふっ]
うん、調停者。
言いやすくて良いな。
纏めると。
神としてカレンさんを信仰してもらう為、新興宗教として広めて貰おうと考えました。
父母に説明すると二人して協力を即決。
恩人(?)だからと、話をそのまま、先々月に三つ子を産んだティグルさんとマブリさんに伝えたら更に大事に。
大地母神の教会ごと改宗すると言い出す。
……元々は色々な種族毎の神に対しての祠として機能していたので、長老(マブリさんのお母さん)も構わないと。
孫が嬉しくて仕方ないらしい。
更には三人が改宗した瞬間、カレンさんが元気になったので、信仰してもらうのが有効であると確信したわけです。
……とんとん拍子。
村長は快諾、先生は宗教として纏まれば、海の民に広げてくれると約束してくれた。
[頼もしい味方ですね]
はい。
何度か話し合って、教義は「全ての生きとし生ける民草に、法と理の調和を」という、今の人間に対してケンカを吹っ掛ける様な内容に。
[法律的治世は、貴方も望む所でしょう?]
はい。
そりゃ、法の外側に追いやられてますし。
今の世界では人間のが圧倒的に多くて、他種族は奴隷制の基盤としてしか見られていない。
人間が人権を認める亜人種は「海の民」だけ。
大戦に参加しなかった海の民だけが共生社会を築けている。
元大地母神の神殿で、カレンさんに天候予測の加護を敷いてもらいました。
誰でも尋ねれば、応えられる様に。
これは神殿等の結い要が必要らしいんですがそこら辺もクリア。
信仰や祈りの切っ掛けとしてだけではなく、この加護の使用だけでも回復しているくらいに広まり、役立っている。
[風が強くなっています。そろそろ皆さんを避難をさせてください]
あっ、はい。
魔力宣告で村の全域に呼びかける。
『っえ、えー、間もなく、嵐が来ます。作業を切り上げ、屋内に避難を、してください。繰り返します……』
何度やっても恥ずかしい。
人前で喋るのとか沢山の人に向けて発言とか。
『ス~ラ~イ~。開けて』
ノック代わりの魔力宣告。
この声は。
『テレコ姉ちゃん』
『……そうよっ』
何だろ。
昨日はデートとして三人で川に釣りに行って……。
迷い込んだグリズリーを森の住人から守って元の住処に送り、そこに割り込んだゴブリン21匹を一掃して、生き残りの鼠族を二人助けた、位。
[冒険しちゃってますね……]
さらっと言ったけど、モノすんごいつかれたからね。
庇いながらとか、意識したらメチャ大変。
実戦も久しぶりだったからな……。
実際やったのは補助と調べたり治したりばっかり。
扉を開けると、気まずそうな顔をしたテレコ姉ちゃんが。
「こんな天気の時に、どうしたの」
「用事は別にあるけどっ。まず、言いたいの」
……?
「ねえっ、呼び方変えて」
あれ、最近聞いた言葉の様な。
[擬視感では、ありませんね]
「……テレコ姉ちゃん、じゃダメなの?」
「うっ、ん、レモ姉さんは『レモ』じゃない」
「あっ、そうか」
レモ姉ちゃんは「レモテトラ」が長いから。
っていうか父母がそう呼んでいたから。
「う~ん、テレコ…… どうしよう」
「なっ、なんだったら呼び捨てとかオススメするわっ」
真っ赤になりながら言われても。
確か、『波の反響』って意味だよね。
テレ…… ティー…… 姉ちゃん。
「ティー姉ちゃん、でどうかなぁ?」
「ふ、ふっふん? ふっ、ふふっ」
……分からない…… 悲しんでる?
喜んでるの?
どっち?
俯いた表情が分からず困っていると……。
[……いけません、一人、小さな人が外に…… 遠くに離れたままです]
カレンさんから警告。
えっ、カレンさん、何処です?
[河口…… いえ、彼処は滝になっていますね]
海か、それはいけない。
子供なのかな?
助けなきゃ。
「ティー姉ちゃん!!」
「はっはい!」
「手伝って!」
手を取って降りだした雨の中、神殿の外へ飛び出し走る。
魔法で二人を覆う天幕を作りながら話すよ。
「海端の滝に、誰か居るらしいんだ」
「あ、ソコにウチの姪を待たせてるの」
え、意外な答。
「だ、ダメじゃん! 危ないよ」
「スライの手を借りたくて来たのよ?」
つまりどゆこと。
「ウチの畑に子鹿が迷い込んで、追い出したら川で溺れて怪我をしたの。
姪はそれを助けてあげたいと聞かなくて。
子鹿は眠りの魔法で落ち着かせて守護結界を付けてきたけど、私の白魔術では骨折までは治せなくて…… お願い」
うん、姪っ子ちゃんは子鹿の見守りをしてるんだね。
「分かった急ごう、掴まって」
羽根を広げて、近付いてきている嵐の風を受け止める。
魔法で風向きを操り、飛行の補助に転化。
ティー姉ちゃんを抱き抱え、道の上を低空飛行。
「やったあお姫様抱っこ」
「ちょっ、お、胸がっ、頭に掴まらないで」
「当ててんのよっ」
やーめーてーえ、集中できない……。
ティー姉ちゃん、12才にしてはちゃんとあるからっ。
昨日も胸をレモ姉ちゃん(19)と比べる話をしてたけど、トップは有るが全体に筋肉付いてるし、タッパもあるからって言ってたじゃない。
バランスで綺麗に見えるのは細いティー姉ちゃんだと言ってた。
実際、綺麗だと思うし……。
「前、見えないからっ」
嬉しいけど今はダメだよ。
[全部口に出していたらもっとモテますよ]
……ですか。
「……あそこよっ」
「良かった無事」
まだ本降りでもないし、雨風が吹き付けるのはティー姉ちゃんの守護結界で防がれている。
すぐそばまで行き、着地っ。
この飛行補助、慣れるとかなり早い。
バランスを保つために、無駄に魔力を使ってしまうのが難点だな…… ポヨポヨがなかったらもっと集中出来たのに。
[男の子らしくなってきましたね]
……がんばってマスターしよう。
シルトちゃんはこちらを見付けると、もう泣き崩れてしまってた。
「待たせたね、見せて」
「ぉ兄、ちゃ~……」
よしよし、泣かないで。
しっかし小さい頃のテレコ姉ちゃん…… いや、ティー姉ちゃんそっくり。
も少ししたら、きっとそっくりそのまんまに成長するんだろうな。
子鹿の怪我を治療する。
と言っても、外側はほぼ完璧近く治っている。
骨が変にずれていたので、ソコだけを探り、正しい位置までは腕力で引き上げる。
痛がる子鹿に謝りながら、暴れない様に抑えて…… はい、終わり。
「治療完了だよ、お疲れ様」
「お兄ちゃん、後ろにいっぱいいるの……」
いつの間にか傍に来ていた親鹿らしき群れが嘶く。
子鹿はそちらに歩き出し、群れごと移動していった。
「……ばいばい」
うんうん、微笑ましい。
しかし、こんな危なっかしい行動は困るなぁ。
……ティー姉ちゃんが居るし、僕からはいいか。
「ありがとお兄ちゃん」
「どういたしまして。良く言えました」
「ありがとスライ」
「どういたしましてティー姉ちゃん」
「ふうぅんん……」
あ、照れてる。
喜んでくれてるんだね。
「ねね、スライ」
「なあに?」
「私に、白魔術、教えて欲しい」
「いいよ」
「か、代わりに炊事洗濯、何でもするわ」
えっ、今、何でもするって……。
いやいや。
何でもないから。
何でもないからねー。
「……即答なのっ?」
「うん、ティー姉ちゃん素質あるし」
それに、人の遣りたい事を否定したくないよ。
「……ぅん、ありがとっ」
ぎゅっ。
ってうわわ、正面から抱きしめられると、凄く照れる。
「お兄ちゃん、お顔真っ赤っかー」
し、仕方ないじゃん、恥ずかしいもん。
しかも位置がちょうど胸なんだもん。
顔がクリティカルヒットするんだもん。
横を向かなかったらまた乳サンドの刑だったぜ。
[嬉しいのでしょ?]
はい。
っいや、えー…… はい……。
こほん。
お兄ちゃん呼びのシルトちゃんちは米農家。
米の色々な利用方法を探ってもらっています。
元々、米に情熱的な愛情を持つ泉の精霊のお陰で、日本人の魂である僕は助かっています。
おっ米っ、ごっはんっ、白っ米っ、やっほう。
「……私、治癒師に成りたいの。教えてスライ」
[私にも新しい生き方を、教えてスライさん]
……スライさん?
カテキョじゃ、ないよね?
スライ・オーニス Level=9
状態=健康(鍛錬中)
職業=司祭見習い 称号=誠実な徒弟(神の愛し子)
ギフト=「壁無き友垣」対話、心理学、人類学、生物学、多言語の優良性
「狙い違わぬ指」目星、回避、隠密、追跡、投擲、技能数値への補助
スキル=「構成編集」
精神力向上(大)
集中力向上(大)
身体強化(小)
学習指導(中)
悪戯耐性(小)
身体俊敏化level.6/10
片手剣術level.7/10
盾・両手操作level.7/10
演算強化level.2/10
説法技術level.2/10
魔法=無属性魔術(上級)
空間魔術(初級)
黒魔術(上級)
白魔術(上級)
精霊魔法(中級)
レモテトラ・ゴォド Level=20
状態=恋愛(充実)
職業=鍛治士見習い 称号=なし
ギフト=「研鑽の重ね」目星、聞き耳、投擲
スキル=炉の護り手(小)
道具整備(大)
併せの呼吸level.6/10
耐熱・耐火(中)
調理(小)
縫製(小)
身体機能向上(小)
調理師Level.2/10
魔法=無属性魔術(中級)
黒魔術(初級)
目線の魔法(中級)
テレコ・レクラス Level=13
状態=恋愛(充実)
職業=治癒師見習い 称号=水耕の担い手
ギフト=「弛まぬ水車」回避、聞き耳、水泳
スキル=水流操作level.8/10
泉精霊魔術level.7/10
農作業(中)
調理(中)
縫製(中)
清掃(大)
調理師Level.6/10
魔法=無属性魔術(中級)
黒魔術(中級)
白魔術(初級)
シルト・グラン Level=1
状態=健康
職業=農家の娘 称号=なし
ギフト=「雪割の水歌」回避、聞き耳、水泳
スキル=水流操作level.1/10
泉精霊魔術level.1/10
魔法=?




