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代行者視点から

カレンさんのターン☆(°▽°)


途中までは完全な被害者でもないのですが、神の被害者と言える彼女にも活躍の場を与えてあげたくなります。



 ☆




 その時まで、変わり映え無い日々でした。


変化する様も何回も見慣れた、在り来たりと言える物。


このままでは、これもこれも…… また捨てられてしまう。


しかし、流れて消える小波(さざなみ)の一点に、綻びが産まれた。


パチッ。


静止の後、減速再選。

自己減速では間に合わなかった。

しかし、(しるし)が無いのに、死んだ……?


魂が勝手に転んだ?

何故…… いや、雇い主の機嫌を損ねて(しま)いかねない。


どうするべきか……。

いや、言わぬは無いが、最善は…… 直ぐの報告だな。


[……間違いで死ぬはずじゃ無い()(ころ)しちゃった?]


やはり不機嫌に、しかし見た目は軽薄に復し問う彼こそが、我が雇い主であり、現代(こんだい)の神だ。


[はい……]

[いいよそんなの、輪廻(まわ)しちゃえば]


おや?

今は存外機嫌が良いらしい。

何かしら巫山戯たり憂さ晴らしをした後なのかも知れないな。


[その…… 余りにそれは…… 無情……]


いや情など元から併せ持ってはいなかった。

会話に使う飾りとして『程度』に後から備え付けたのだ。

虚飾と、言い放ってやりたい。


[死んだ()なら別にいいんだよ]

[……全ては貴方様の思惑の元にあります]


しかし神は神だ。


[どれも生きて死んでまた繰り返すんだからなー]

[はい。生き死に輪廻(まわり)、繰り返す駒達]

[……あ、いい事を思いついたぞ]


また…… 何を……。


[やり直し人生をやらせるんだ。捨てた世界(トコ)に放り込んで、テキトーに観察しておけ。条理の違う新天地、様々に食い違う常識、進化のデータベースに足りない『異常事態』が見られると思わないか?]

[……生まれ直しですか]

[……憐れむな? ……全てはデータだ……]

[はい。生まれ直しに適しているとでも煽って行かせます]

[そうそれでいい。異世界転生とかPR部隊も役に立つしな]

[分かりました]

[んん。代行者である自分を、忘れるな?

で、名前は……?

イノウエ……?

気のせいか?

まあいい。

よし、デジタルゲームのファンタジー世界として大雑把な知識を追加しといてやろう。

優しいな、世は]


どこがだ。


[はい]

[じゃあ、何やらせるか?]


無茶振りを何通りも蓄えてらっしゃるのに、私に聞きますか。


[観察だけならば、目的を作る所からやり直しさせては?]

[何をするかから?

ほー。面白]


本当に面白がってくれていればそこ以外が平和なんですが。


[パーソナリティー維持、肉体強化、内面はそのままで]

[うむうむ。なるべく生き残ってデータベースを充実させて欲しいね。

異常事態に悶えて

苦しんで

立ち直って更に叩き伏せられんのが希望だがー?]


やはり。


[……幾つかパターンを作りますか]


その希望に添えない場合の為に、注力(ちゅうりょく)尽くすのも仕方ない。

神命としてなら、加力命じてくれるだろう。


[いらん。

イレギュラーの観察だ。

一つも余分を重ねるな。

……こちらも観察は断じて止めては成らぬが。

次は大きな分岐になる、様相推移が見えたらな]


おや、珍しくマジメに取り組んでらっしゃる。

ならば、その気持ちを削いではならない。


[はい]

[じゃあ、その様に]



 ☆



[……この不手際に対する報いは私が後から……]

[上手くやってんな。演技上手いし、相手がポンコツ臭いし、大丈夫だな]


転生予定の魂とのやり取り。

上手く話すつもりだが、相手が少々ヒートアップしている。


[……の当たり前が求められており…… いえ、お気遣い無く]

[んん?]


「この神の代行者さんは悪くないぞー! むしろフォローが神対応だぞー!」


途轍もなく余計な一言を!?


[ほう?]


いけない、管理制界に軋みが?

ビキビキっ。


[世の膝許で、吼えるな。擂り潰すか]

[ひいっ…… 御心配無く。でわ参りますよ?     ☆お達者で~!]


問答無用に送り出す。

間一髪、だった。


[……行ったか]

[申し訳ありません]


謝りつつ、周辺の罅割れを延べ詰め復元していく。


[いやいい。思い出した。イノウエタケシ。試作品か]


試作、とは。

何をしていたのだろう。


[アレは、御尊意の(モノ)でしたか]

[いーや、試作品は試作品さ。

どうにか変化が成らぬか推移が変わらぬか、長々見てきただろう。

その端に思ったのさ。

人等に任せ措くから何も大差なく満遍なく色褪せた普通に偏るのではないかと。

輪廻(まわ)ってかき混ぜちゃあいるが、人の心も変わらず斑。魂の汚れを落とせる限りまで廻り輪を潜っているはずなのに。

な?

じゃあ汚さない様にしてから輪廻(まわ)ったら?

輪廻(まわ)った後にまた保護してまた輪廻(まわ)ったら?]


そうか、そんなろくでもない事をしていたから。

上っ面の機嫌を良くしていたのだ。

やはり、巫山戯た憂さ晴らしをした後だった。


[……アレは、その試作、と]

[そう、名前に印付けるの忘れてた。

お前にも知らせてなかった。

まあ思い付きだったしな]


いつも思い付きでしか行動しないでしょう。


[……私がソレを喪わさせてしまいましたか]

[いや、そういう仕組みの上に置いていた。

一定空間、一定数の関係者、一定水準の知識、短い寿命。

繰り言は括りから解けているが、何回目だったか。

まあいい。

また作るか]



 ☆



「ァアァア……」


[赤子になって眠ったか。

体は小さいが。

魂には手を掛けてやったんだ。

何かしら、面白い結果を、出してくれよ。

何かは、試作品(オマエ)が決めるんだがな?

……お?

世の視線を受けて、焦りを感じたかよ。

おい、手伝いはしてやれよ?]


[……おめでとうございます。うまく繋がってくれたみたいですね。あぁ、説明不足で送り出してしまいましたね……]

[さあ、こちらは暫くは任せておくぞ]


(……暫くですか。

面倒に成れば放りそうな予感がしています)


[すいません、神に罰を受けてきました。そうです、私の雇い主です…… まぁ、何とか。話を全て伝えて判断を仰いだところ、貴方のサポートを為べしと告げられて参った次第です…… ご安心ください。こちらに来ているのは分霊ですので、そこまで大きな咎というわけではありません]


[……そうそう、そんな感じ。

お前はサポート。

頑張らせるのが、メイン。

じゃあな]



 ☆



[暫くの間が空いた、かと思うが……]


「いつも、あいあとっ」

「スライっ……」

「うん……」

「あり、あとうっ」


[まだまだ喋れてすらいないじゃないか。

直に観察しなくて良かった]

[おめでとうございますっ…… かかりましたね…… いいのですよ、思いの丈を吐き出すには、覚悟も時間も必要でしょう]

[んんん?

大分優しい言葉を選ぶ様になったなあ。

情が遷ったか]


(いえ、速やかに成長を促すのに有効なんですが……)


[ああ、仕方ない部分ですよ]

[ふーん。目が届かない場所だと、見た事のないモノが見られると。

ま、人等(オモチャ)に気持ちが揺らぐ神側(こちら)の例はあるワケだし。

お前も気を付けろよ?]


ご配意有難く、この身に余る光栄です。


[愛されていますね]

[さて。

じゃあな。

纏めたデータ、待ってるぞ]


了解致しました……。


[愛…… でしょうか]


(心とは、定義が難しくも、暖かなこの子等が持っているこの輝かしいモノを指しているのだ)


(人らしい情など、私の中に未だ残っているのだろうか)


(気持ちが揺らぐ神側の存在、つまり、感情とは自らの存在すら否定したり、献身的に変化をもたらす劇物)


(感情とは…… 愛、とは……)


「毎朝、起きるまで顔を見詰めている母の姿は恐いじゃん」

(……ふふっ)

[はい…… まぁ……]

「ま、そんなこんなでね。温かい両親が、今居てくれる幸せが、もうね。生きているって、凄い」

(凄いですね)



 ☆



[ソレにもそろそろ、神の代行者として無理難題を言い渡しても……?

何だよ。

まだ赤子か。

おい、どうなってる?

お前『短縮化』は使える筈だろ……?]


[いえ、それは……]

(気軽に放たれた手下(わたし)は弱体化しています)


[あ、分霊だったか。

じゃあ無理だな。

本体は…… 忙しいか。

ち]


(舌も無いのに舌打ちのクセだけあるのでしょうか?)


[しかし気長に待つのは趣味の外だ。

よし、決めた。

完全に任せるからな。

区切りの後、お前の残りが尽きる前に纏めたデータ、寄越せよ。

じゃあな]

[了解致しました]


バ…… チン。


(了解…… 致し…… 私が尽きる前…… 送りま…… 纏めて……)


「好き~ぃ」

「アタシもよッ!!」

「俺もだッ!!」

「おかあん、プニプニ、好き…… おとさん、ふわふわ、好き…… おかあん、お耳、長いの、カッコイイ…… おとさん、お目々キレイ…… みんな、だい、好き」


(……この家族は、キラキラしている)


「ふぅっくっ……!!」

「ぅうん、ありがとうねー……」

「……お前がこの(ミュゼラ)の体に宿って、神の代行者が現れて……貴方が導いてくださった出会いは、何にも代え難いものでした」


(……導いたのは結果、原因はあの気紛れ)


「私は兎に角びっくりした。でも、何よりも、私達の子供達が死ななくて済んだのが一番、嬉しかったわー」


(そこは、私も良かったと思いました)


「二度と失ってたまるものかって、言ってたな」

「うーんっ、本心だけど、カミサマ相手に言うべきじゃーなかったわねー」


[カミサマじゃないんですが]

(一緒にしないで欲しい)


(……欲しい?

私は…… 何を、考えて、いる?)


「いつも身近に居てくれる代行者さんも、今は家族みたいに思ってるんだ。

ありがとう。

これからも、ヨロシクお願いしましゅ。

あ、噛んだ。

思考の中、噛みが出るってどゆこと」


[ふふ、こちらこそ。緊張、してらっしゃいますか?]

(……微笑ましい人だ。応援したい)


(……私が、応援したい?)


(……私の、感情だ。私の意思、だ)


……ぶちっ。

過去に押し潰し、消したと思っていた感情に、火が着いた。

私は元々、そんな存在だった。

人の『助けになる』事が、存在だ。


〔ステータス表示……〕

〔強化反応……〕

〔上級機関指示……〕

〔個体識別情報を更新、同個体は上級機関指示に従い管理します〕


(もーやりたい様にします、放置した事を悔やめば重畳)


(任せた。じゃねーよあの気紛れ)


(この心に残っていた、気持ちを忘れない様に)


[さあ、冒険の準備を致しましょう]

(応援させて、ください)


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