ビビりがベビーベッドにて思案中。
過去はたまに目の前に現れて、感情を掻き乱すよね。
かつて居た世界の、両親の姿が過った。
不遇と言うか…… それは無関心の生活だった。
ただ学歴を求められ、言葉には熱も情も無く。
触れられず、触れてもらえない親子関係というか。
他人を見るのと変わらない目が、ずっと恐かった。
……ちょっと感傷的になってしまった。
仕切り直し。
ありがとうございます。
声しか聞こえない代行者さんに、まず感謝したい。
しかし眠りながらもちゃんと考える事が出来るって、凄い事だと今気付いた。
流石、神の代行者。
[これからの予定は立てていますか?]
いやぁ、まだ来たばっかりで。
周りも何も分からないですし。
[では、情報公開いたしましょう]
あっ、宜しくお願いします。
まず。
今居る場所。
古代都市の跡地、祭壇を囲む遺跡を利用して作られた多種族の村。
遺跡に残っていた名前をもらい『フルオロ村』と呼ばれている集落なんだって。
立地としては南から北へ張り出した半島の半ば、ちょっとどころかだいぶ隔絶された場所にある。
周囲に広がるのは『深き暗き森』。
北と西には海、南に山脈、東は古代都市群が砂漠に埋もれている。
他所との交易は乏しく、物々交換としてのみ。
主とする産業は漁業と塩作り…… コレは魚人族の方々が担当している、と。
ぎょじんぞく……。
住民の殆どが自家菜園と狩猟採集で生活している。
水は豊富で、山からの恵み、キレイな川が流れている。
そのまま飲める川かぁ、初めて見た。
周辺の森林地帯は広く『村長さん』のテリトリーで、その中に住まわせてもらってるんだって。
その森には鳥獣や小さな魔物のみ生息している。
でも森だから、居住可能な立地が少ないとも言える。
気候は寒冷地寄り。
森の南の山々の高いところは針葉樹が多く、山頂付近は雲に届くほどなので植物が生えていない。
低い部分は植生が入り雑じり、海岸近くはまた針葉樹が増える。
四季はあるが、やや冬が長い。
……東北地方か、北海道くらいの気候って感じ?
世界には人間種族が3種。
白、赤、黒と呼ばれる国々で分けられている。
近い所には、排他的で保守的な「白い守人」が住んでいる北の帝国。
海を挟んでいるため、ここからは近いが交通手段的に遠い。
だが多種族が船出する際には危険が伴うという。
亜人は敵視されているからだ。
白、以外にもいるけれど、また後程。
人以外というのが、多種族と呼ばれる人に似た姿の種族。
父の様な有翼型、母の様な兎人型など。
亜人と一纏めに呼ばれる者達がたくさん生きている。
人には魔物と混同されるコトもあるが、そんな軋轢もこの世界の日常なんだ。
そうして、多種多様な人々が暮らしている。
文明としては、やっぱり低い水準みたいだ。
魔法(!!)が主であるため、科学的な部分はまぜこぜな感じ。
この世界には、日光を好む『ステアンド』という菌類が居る。
コイツは金属腐食性を持っていて、世界中から鉄を奪いつつあるため魔法文化、道具が主体的にならざるを得ないのだとか。
古代大戦中の生物兵器だとも言われるコレは、文明ブレイクスルーの澱、らしい。
何が起きたのかはまぁ、これもまた今度。
で…… ですね。
俺の一番の関心は新しい身内の安全確認。
まず、帝国とやらは危険な連中?
[距離としては近いですが、海を隔ててさらに断崖絶壁、山脈も挟むため脅威としては低いかと]
人種族が危険ってのは、元人間としては微妙に悲しい。
今、一番の危険は?
[食糧難と、冒険者ですね]
ぼーけんしゃが、きけん?
冒険者といえば、ファンタジーの基本職業みたいな?
多種族はそんなに立場が悪いのか。
[多種族非難はまだ多く『黒い狩人』の国々や『白い守人』の帝国の人間から依頼され、亜人は冒険者に襲われたり、捕らえれたり、そして奴隷として街へ連れ去られたりがあります]
うわぁ、最低。
ドレイ制度ありなんだ…… 頻度は高いのでしょうか?
[いえ、一年に一度あるかないか]
毎年恒例(?
充分にヤヴァイじゃないですか。
多種族狩り!?
冗談でも無しだ!!
[大きな国という枠組みが崩れ、種属間の交流が滞り、世界的に差別意識や格差が発生して奴隷制度が採用されて100年程経過しています]
危険性、有るじゃないですか!
あの両親だって、生まれたての俺を連れてたら逃げる事も出来ないだろうし。
[この村はある程度安心して居ていいですよ]
えぇ…… あの両親、強いんですか?
[賢者の称号持ちと騎士の称号持ちですから]
……称号?
[この世界の人々に付与された強さについて説明いたします]
はい、お願いします。
[人々は個々に『ギフト』という技能を授かります。その種類は様々で、身体能力向上、特殊技能、単純に何かが上手くなる、できるようになるなど…… 個性を決定づける事もあります。1才を迎えたら、この異能とも言える力が開花します。生存競争に挑む力としてもらうのが、神から人種族への『贈り物』なのです]
ギフト…… おくりもの、はい。
1才になれば、貰えると。
[次に『職業』。これは職能を司る神々との盟約により、働き手に与えられる報酬の一部ですね。職種にも依りますが、能力や技能の付加、成長率など多岐に渡り変化します]
職業でも、強くなる?
大工さんが器用に作る様に、料理人が美味しいご飯を作れる様に?
……ご飯は違うな。
兵士であるなら強くなる、みたいな事か。
[次に、職業別に技術を修めたり、各技能的に極めたりすると得られるのが『称号』。例えば、剣士の称号は『剣聖』『剣闘士』等。称号は職業のみに限らず一定の条件下で発生し、習得される技術とは別に付与される効能があります]
……つまり?
個人的技能の『ギフト』。
頑張って仕事する『職業』。
会得していく『称号』。
という事か。
まずギフトありきで職業を選ぶのが普通の生活って事ですね。
職業を得れば能力付与され、技能の幅が広がり色々できる。
称号を得たら更に出来る事が増える。
[昔に整えたシステムですから、後程、齟齬や異常がないかを改めて確認致します]
アドラスというこの世界には、神がいて、代行者がいて、世界中のバランスを整えていた…… らしいのだが、元々が気紛れな神の所為か、600年前から管理システム構築は留まり、変わっていないのだそうだ。
代行者すら居なくなるってどゆこと?
まぁ、地域的なバランスから見ても、両親ともに屈強であると。
なら、大丈夫?
[今の時点では食糧難の方がありえますね]
ふむふむ。
色々、学ばねば。
赤ちゃんな俺でも出来るところから、始めていこう。
俺 Level=?
状態=産まれたて
職業=赤ちゃん
ギフト=?
スキル=?
魔法=?
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