ビビリがビックリした蟻の話
日々の努力が実ると嬉しさの反面、もっと上手くできたのではないかという欲目も出てきませんか。
欲張ると大体は事故のもとなんですが。
慢心と油断はいけませんね。
☆
季節は秋から冬に移りました。
村長が眠りついている間は、迷いの森と呼ばれたこの一帯も眠る様に静か。
動物達は本当に眠りについているのだろう。
そんな中でも、村を警邏する番は各家持ち回りで、2日に一回行います。
……しかし雪はツライ。
今年も降ってきた。
真っ白に山々が化粧され、森の木々には堆く粉雪が積り、畑と水路の境目だけが目安になる白一色。
まぁ、白銀の景色に圧倒されたのも懐かしい。
毎年恒例の風景だし、寒いの苦手。
ハァ〜っ。
掌に息を吹きかけ手袋を付け直す。
マフラーと耳覆い(ほっかむりとも言う)だけでは寒いからね。
ん?
魔法は警邏中は使えないよ。
村長が掛けている『幻惑の魔法』は、魔力を隠す事は出来ないからね。
放出を抑えて巡回するので、服装は厚着待った無し。
「っくちっ」
……寒い。
「ダイジョブ?」
「無理すんなよぉ」
「風邪ひくなよぉ」
レモ姉ちゃんとテウ兄ちゃんとセス兄ちゃんが一緒だ。
心強いね。
引率に父が居るのが一番だけどね。
「準備はいいかー? 行くぞー」
役目だけど、ちょっと楽しい。
遠足みたいで。
でも、コレは仕事。
気を付け!
……警邏のコースは決まっていない。
村の周りではあるが、ゆるく楕円軌道のコースを通って帰る。
常に同じ道筋だと『道』が出来てしまうし、監視がいたならば場所を特定されてしまうから。
先頭は父。
続いて僕。
後ろにレモ姉ちゃんが後方監視、テウ兄ちゃんとセス兄ちゃんは足跡隠し。
行程の半ば位で、姉ちゃんが気付く。
「木々の根本、噛じられてません?」
不自然な傷。
樹皮を深く傷付け、喰い荒らされている。
藤かな?
樹液を吸っていったの?
此処ら辺に、何箇所も同じ傷があった。
「大牙蟻かなー」
「あー…… 仕方無い。スライ、雪退かしてくれ」
「やったあ」
いやいや、現場の確認のため。
暖がとれるとか、副産物っすよー。
ココまで常にイメージしてた雪解けを、火の精霊にお願いする。
「春の踊火」
熱が広がり、直径5メートルくらいは雪が溶け、地面が乾く。
「精霊魔法も順調だな」
父が嬉しそうにうなずいた。
広がった視界。
地表が露になると、ここは…… 岩が多めの湿地かな。
「げげっ」
「げっげぇ」
しかし双子が、奇妙な物を見付けて来た。
「コレ…… 何?」
抜殻?
団子虫のデッカイ奴…… 何て言ったっけ。
「具足虫じゃんカッケエ」
「具足虫だぜヤベー」
おお、コレがあの。
……抜殻が、30個くらい。
「持って帰ろうぜー」
「あっ、モロい」
触ると崩れてしまう。
多分濡れたせいだ。
「ちえーっ、いらねえや」
「ちぇっ、いらねーよー」
いやあ、だいぶグロいよ?
臭いし。
「具足虫の繁殖地に、匂いに釣られ大牙蟻が集まったってトコか」
父が分析する。
具足虫は寒さに耐えられないから暖かな場所へ移動して行ったのだろう。
しかし大牙蟻はまだ、この辺りを動き回っているかも知れない。
「巣に帰っていて、戻って来なければいいんだが……」
楽観は出来ないよなー。
ヨーシ。
「……捜査波動、やっていい?」
無属性の、任意の方向へ魔力を帯状に放ち、生物の存在や地形を把握するというもの。
「良いが…… 何処を探る気だ?」
「一番居てほしくない所を探そうかなって」
「ドコドコ?」
「ナニナニ?」
蟻が居るかも知れなくて、都合が悪い場所。
つまり。
「地下か」
「うん。先ず、辺り一帯を把握するね」
地表に薄っすらと水を流して広げるイメージ。
全域捜査と父が呼ぶ、僕のオリジナル捜査波動。
2キロ四方を確認。
縦は余り気にせず、拡げるだけ。
あ。
不自然な穴が見つかってしまった。
近い。
「……悪いお知らせ。ソコに、割と深めの穴がある」
「じゃ、二人は感知してみてくれ」
双子に父からお題が渡された。
「おおっ、やったらあ」
「おうっ、やってみよー」
反応は…… 具足虫だといいなあ。
「あっ、アリだ」
「アリ、コッチに来る」
ぎゃー!
出の早い魔法は~っ!
「光爆撃!」
父の氷の矢で怯んだ大牙蟻に止めを刺して、蟻の群れを撃退した。
ヤバいなあ。
あと5箇所もある穴はどうなんだろ。
雪を撫で均す為の箒で蟻をつつきながら、姉ちゃんが言う。
「コイツラ待機部隊?」
そう、大まかにしか知らないが、蟻の行動として考えられるのは巣から本隊が引っ越してくる可能性。
食料が多くありそうな場所を探していて、候補地に先遣隊が残っていたのでは?
という意見。
「多分ね…… ここだけで7匹か」
集中をしながらもう一度、全域捜査。
今度は下方向へ深く。
……2箇所に、蟻が居た。
「あと2つ待機部隊が居るよ」
「よし、一つは俺が行こう。もう一つは任せていいか?」
「うん、任されるよ!」
「テウ、セスは村に知らせてくれ。アンゴールさんに助力願おう」
ベテラン狩人のアンゴールさん。
僕はあんまり会いたくない。
外見的な意味で。
「レモちゃんはスライに付いててくれるか?」
「っ悦んで!」
喰い気味に返事が出てた。
何かニュアンスおかしかったし。
さて。
魔力断絶は姉ちゃんも出来るので、蟻達に気付かれる事も無く退治したけれど。
6匹、冬で動きが鈍くて、助かった?
問題はこれから来るだろう本隊だよ。
待機部隊が20匹居たから、まず10倍位の本隊が来るのだと予測される。
「なあに、既に巣が有るんで無えなら、大丈夫だぁて」
こちらの、じっとり濡れたマント姿の方が、アンゴール•ベンシさん。
頭にカタツムリを被っている様なグロい…… いえ。
個性的なヒトです。
お隣さんで、父の恩人。
罠とか弓のスペシャリストで、魔物の群れに対しての知識は村で一番。
冬場は半分寝ている筈だけれど…… 起きてたんですね。
蟻の魔物は、大群になるが予測がしやすい…… らしい。
次の日、後続が来る可能性が高い場所へ、罠を張る事になった。
1つは括り罠。
僕も以前に教わっていたので手伝う事が出来た。
コースに予測が付かないから、広い範囲に設置した。
アンゴールさんは此処ら辺だら、って集中的に作っていた。
2つ目は先遣隊/待機部隊の死骸を使った誘い罠。
トリモチだね。
コレを5箇所。
仲間の死体からは特別な匂いが出ているから、回収しようとして絶対に掛かるんだって。
3つ目は待機してた縦穴に、駆除剤。
穀物と毒素を混ぜ込んだ物を放り込んだ。
仕掛けて3日後。
ビックリする程、大牙蟻がかかる。
アンゴールさんの予測通り。
簡単にすら思えるくらい。
「多分、もう来ねえ」
そう収束宣言が出たのは、働き蟻(って数えていたの)が209匹、女王蟻が2匹、討伐された後。
途中雪も降って、一週間。
「もとの巣にゃ、後2匹は女王がいんだらぁが、冬場は卵が孵らない筈だらば、来ねえさ」
あー、訛りが凄い。
しかし、虫の素材が沢山手に入ったね。
「村の財源になる結晶以外は幾らかお前ら貰え」
「あっ、ありがとうございます」
結果、10匹分の大牙蟻の素材が。
これから魔法の道具作りを行うので、その材料が山盛りに。
これは…… ワクワクが捗るう。
スライ・オーニス Level=6
状態=育ち盛り
職業=教師見習い 称号=誠実な徒弟(神の愛し子)
ギフト=「壁無き友垣」対話、心理学、人類学、生物学、多言語の優良性
「狙い違わぬ指」目星、回避、隠密、追跡、投擲、技能数値への補助
スキル=「?」
精神力向上(大)
集中力向上(大)
身体強化(小)
学習指導(中)
悪戯耐性(小)
身体俊敏化level.4/10
片手剣術level.6/10
盾・両手操作level.6/10
魔法=無属性魔術(上級)
空間魔術(初級)
黒魔術(上級)
白魔術(中級)
精霊魔法(初級)
バァン・オーニス Level=78
状態=溺愛(永続化)
職業=魔術学校長 称号=賢者
ギフト=「遠き呼び声」気配察知、聞き耳、神学
スキル=黒、白、空間、精神魔術強化
常時異常回復
常時魔力微量回復
調理師Level.5/10
狩猟採集level.7/10
経営学(大)
鳥目(夜間視力低下)
魔法=黒魔術
白魔術
空間魔術
精神魔術
召喚魔術
レモテトラ・ゴォド Level=17
状態=献身(片想い)
職業=鍛治士見習い 称号=なし
ギフト=「研鑽の重ね」目星、聞き耳、投擲
スキル=炉の護り手(小)
道具整備(大)
併せの呼吸level.6/10
耐熱・耐火(中)
魔法=無属性魔術(中級)
黒魔術(初級)
テウ・アーモウ Level=9
状態=高揚
職業=農家の伜 称号=なし
ギフト=「謡いの梢」気配察知、聞き耳、回避
スキル=農作業(中)
道具整備(小)
体力向上(小)
魔法=無属性魔術(中級)
黒魔術(初級)
セス・アーモウ Level=9
状態=高揚
職業=農家の伜 称号=なし
ギフト=「奏でる岩瀬」目星、跳躍、隠密
スキル=農作業(中)
道具整備(小)
体力向上(小)
魔法=無属性魔術(中級)
黒魔術(初級)




