沙夜が去った後
沙夜が去った後の食堂は、ちょっとした騒ぎになっていた。
「す、すげー身体能力。俺あんなのはじめて見た。」
「人間とは思えない身のこなしだったね。」
生徒会の面々がそれぞれ沙夜の印象を口にする。
「少し、元気がすぎる気がしますが。」
「あ、髪長かったですね。」
彼らは後ろ姿しか見ていない。
「白川先輩、あの子のこと見ましたよね?どうでした?」
「やっぱり一年だよ。リボン赤かった。それで、かなりかわいかったと思う。」
「やっぱりですかー!それもちょっと小悪魔感ありますよね、優しそうなのに。」
「あー、ぴったりそんな感じ。」
「これで、見つかりますか?」
「いや...はっきり顔を見てわかったけど、俺たちが見た写真の中に、あんな子はいなかった。俺が入学式の時一年の女子を見てたときも、見たのはくつ箱の時だけだ。」
「え、それってつまり...。」
「普段は見た目が違うのか、見落としているのかだね。」
「これは大変ですね。...でも」
「でも?」
桜は首を傾げながら記憶を掘り起こそうとする。
「あの声、聞き覚えがある気がします。それも、最近聞いたような...」
「えっ?じゃあ桜ちゃんの近くにいるのかな。」
「ですかねー。」
「うーん...あ、そうだ!」
良いことを思いついたとでもいうように目をキラキラさせて白川明良が宣言する。
「俺明日の昼休みに桜ちゃんのクラスに行こーっと。」
「「「はぁ?!」」」
その発言に全員が声を上げた。
「ぇ、い、嫌です。何でそんなことになったんですか?頭大丈夫ですか?!」
桜が自分の体をかき抱いて距離をとる。
「お前いつの間に、ストーカーになったんだ?」
黒木春人が不審者をみる目つきをする。
「生徒会の一員として、恥を知りなさい。」
藍野創也が虫けらでも見るような目で睨む。
「明良、相手が嫌がっているときは、おまえがどう思っていようが、犯罪なんだ。」
緑川涼が優しく言い聞かせるように言う。
「君が警察に捕まるところなんて見たくないよ、明良君。」
水城真が悲しげにつぶやく。
「ちげーしっ!別に桜ちゃんをストーカーしようとか思ってない!」
白川明良が叫んだ。
「白川先輩、先輩の言葉、信用できると思いますか?」
桜がトドメをさした。
「桜ちゃん、ひどっ!違うよ、ストーカーじゃなくて、あの子捜しだよ。」
「え?」
不可解な顔をする桜に白川明良は言いつのる。
「だーかーらー、あの子の声に聞き覚えがあるんでしょ?桜ちゃんこの学校に来たばっかなんだから、クラスメイトの可能性高いじゃん。だから行くの!わかった?!」
「あ、なるほど。先輩って馬鹿じゃなかったんですね。」
「どんどん心をえぐってくるね?!」
「なら良いですよ。ってゆうか、それならみなさんもそれっぽいの捜してくれませんか?」
「スルー...絶対気づいてるのにスルー...」
「まぁ良いぜ。明良が変なことしないとしないように見張る必要があるしな。明日は幸い仕事もない。おまえ等もそれでいいな。」
黒木春人が生徒会長っぽく仕切るが、その顔はいたずらを思いついた子供そのものである。
「はぁ...まあ良いでしょう。生徒会きっての問題児を放ってはおけませんからね。」
藍野創也が仕方ないとゆうふうに言った。
「オレも良いっすよ。暇なんで、手伝います。」
「僕も、頑張ります。」
「「明良(君)が何かやらかさないように。」」
緑川涼と水城真ものっかって続ける。
「誤解はなくなったはずなのに、みんなひでぇ!」
「ふふっ、よろしくお願いしますね。」
こうして沙夜の知らないところで、計画は進んでいった。
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