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バーミリオンは彼女を見る

どうか暖かい目でご覧下さい…(´ーωー`)

「っと、あれだな、多分」


史也の言っていたとおりに歩いたし、花屋だしあそこで間違いないだろ。


「…あ!」


店先で女の子が転んだ!

泣いてる、助けてあげないと…

思わず駆け寄ろうとしたら店から人がでてきた。

長い黒髪をゆるくひとつの三つ編みにまとめて特徴的な大きな丸メガネをかけている。


「あいつ…」


急いで女の子を抱き上げて慰めている。

それでも泣き止まない女の子にに、困ったように動きをとめたあと、パッと顔を上げて店の中を見る。


「おかーさん!この子にお花あげていい?」


きっと中にいる人に届くように声をはったのだろう。

ここまで聞こえてきた。

了承を貰ったのか、少し嬉しそうにまた女の子に話しかける。

顔を上げた女の子が可愛らしいピンクの花を指さした。

その花と、周りの花を何本がとってポケットにいれていたのだろうリボンでひとくくりにして女の子に差し出した。

女の子は、もう泣いていない。

明るい笑顔を浮かべて嬉しそうに歩き出した。


「……あ」


どうしてか、つい立ち止まってじっと見てしまっていた。

やろうとしたことを先にやられてしまったからだろうか。

なんでか分からない、けど、さっきの風景は、すごく暖かかった、な。


「って、何を止まってんだ俺は!届けるついでに、史也に嫌わせる材料を集めねぇと!」


てか、あいつ、体調悪いんじゃねぇのかよ。

なんで普通に外出てんだよ!


「こんにちは!」


「はーい、いらっしゃーい」


そこにはあいつじゃなくて、女の人がいた。

黒髪を後ろで一つにまとめて店のエプロンらしきものを着ている。


「何をお求めですか?」


「あ、いや、俺は客じゃなくて…」


「あー!え、なんでバーミリオンくんがここに?!」


横から騒がしい声がした。

ほんとにびっくりしたという様子であいつがそこにいた。


「史也が用事が出来て、俺が変わりにこれを持ってきたんだ。てゆうか、お前、体調不りょー」


「わー!!そうなんだありがとう!!」


「え、うるさ」


なんだコイツいきなり叫びやがった。

女の人も少しびっくりしている。


「さ、沙夜…?どうしたの?」


「あ、え、えーとね!お母さん、この人は同じ学校の人でね、先生が私に渡し忘れたプリントを、持ってきてくれたんだ!」


「忘れたってなんだよそれお前今日学校休んー」


「それで!!この人はバーミリオンくんだよ!!今日は部活だったみたいなんだー!!」


「はぁ??何言ってんだよさっきから俺は部活なんて入ってー」


「お母さん!私ちょっとバーミリオンくんと話してくる!!」


バッと腕を取られて外に連れ出される。


「な、な、なんだよ!」


「静かにして!」


腕を引っ張られ、ズイと顔を寄せて小声で話しかけられる。


「あのね、私のお母さん、すっごい心配性なの。私の体調が学校を休むほど悪いなんて言ったら店を休みかねないから学校が休みってことにしてるの!幸い午前中にだいぶ良くなったから店の手伝いしてるの!OK?だから、お母さんに余計なこと言わないで!」


…よくここまで一気に話せるよな。

でも、そういう事情ならしかたない…か?

まあ、わざわざ言う意味もねぇしいいか。


「わかった……ところで、そろそろ離れてくれないか?」


「へぁ?!あ、ごめん!!」


あわてて俺から離れる。

よかった。

こいつ背が低いから何気に体勢がきつかったんだよな。

すると、何故か睨まれている気がしてきた。


「…なんか失礼なこと考えてない?」


「え?いや、お前ちっせぇなぁって思ってただけだが……ヒッ」


なんだか、黒いオーラが、立ち上ってる気が……


「いや、な、なんでも、ないぞ?」


「うん!そっかー!!」


…怖かった。


「ねぇ、紫藤くんはどうしたの?」


こいつ、史也のこと聞きやがった!

やっぱりこいつ、史也に気があんのか?


「は?なんでだよ」


「なんでって…紫藤君からプリント届けるってLINE来てたのに、その本人じゃなくて友だちが持ってきたらそりゃあ気になるわよ」


と、当然の指摘すぎてもう…さっきまでの自分を殴りたくなってきた。


「あいつは用事が出来て途中で帰った。だから俺が代わりに来たんだよ。」


「なるほど。……別に届けてくれなくっても良かったのに」


今こいつボソッといらねぇこと言いやがったな?

聞こえてないと思ってるのかもしれないがバッチリ聞こえてるんだよ。


「わざわざ届けてやったってのに随分な言い草だなぁ…?」


バッと顔を上げてジッと見られている視線を感じたかと思えば今度は頭を抱えてブツブツと早口で呟き出した。


「え、きこえて…?!バーミリオン君ってまさかの地獄耳設定…?公式ではそんなの出てなかったはずだし…」


こいつ、大丈夫か…?


「おい、なんだよさっきから設定だのなんだの…」


今度は顔をあげるだけじゃなく後退りまでしながら驚いたような声をあげてきた。


「え、ガチ系で地獄耳なの?!こーゆーのって聞こえないのがお約束じゃないの?!それともアレってヒロイン補正だったの?!」


言ってることはよく分からないが混乱してることはよくわかった。


「落ち着け…てか、お前ってそんなキャラだったか?」


「ぇ…あっ」


思いっきり、しまったって反応をされた。

いや…そんな反応されるとこっちも困るんだが…?

あ、もしかしてチャンスか?!

そうだ、こいつのボロを叩き出して史也に突きつけてやるんだ!


「お前…それが素なのか?なぁ、お前って猫っかぶりだったんだな?」


はぐらかされてたまるか、むしろもっと追い詰めてやる、というつもりで視線をしっかり合わせる。

てっきり負けん気を見せてくると思っていたし、なんにせよ反論とかをしてくると思っていた。

だが予想に反し、彼女は黙り込んで俺を見上げるだけだった。


「おい、なんとか言ったら…?!」


いきなり膝から崩れ落ちた彼女を、咄嗟に支える。

しかし何故かその手から逃れようとするかのように彼女はもがきだした。

元々色白だが、今はそれ以上に…血の気がすっかり失せ、青白くなっている。

更には小刻みに震えていた。


「な、なぁどうした?お前ホントは体調良くなってないんじゃないか?」


「っ……あ、ご、ごめんなさ、い。ごめんなさ」


「何も謝ることなんかねぇよ」


俺に迷惑をかけたとでも思ったのか焦ったように謝罪を重ねようとしてくる声を遮ってそう問いかける。

体調不良は本人にも分からないことがある。

謝るとしても、ちゃんと元気になってからだ。


「…お前は何も悪いことなんかしてないだろ、だから謝らなくていい。そんなことよりお前の体調だろ?どうしたんだ?」


落ち着かせるように、優しい声を心がけて話しかける。


「……バーミリオンくん?」


俺の言葉にピタリと体を止めて、ゆっくりと俺の顔を見上げて見つめてくる。

俺の手が彼女を支えているからかなりの至近距離だが、彼女の頭の中にそんなことはないように見える。

…まるで検査されているみたいだ。

安心できるかどうか、自分を傷つけないかどうか。

もしかしたら、体調だけが原因じゃないのかもしれない。

だとしたら、これを誘発させたのはきっと俺だろう。


「あぁ、そうだ。本当にどうしたんだよ、大丈夫か?」


さっきと同じ声色でそう答える。

そうやって傷つける意図がないことを伝える。

史也のことがあるとはいえ、こいつは女で、俺は男だ。

女子供には優しくしろと小さい頃から父親に言われていたし、俺も基本的にはそれを当たり前として心がけている。

しかも、こいつは小さくて、今にも消えそうなくらい弱々しい。

守るべき対象だと、判断した。

まだ不安げな彼女の背に手を当てゆっくりとさすりながら声をかける。


「心配するな、俺はお前を傷つけない。むしろ守ってやるから、大丈夫だ。誰もお前を傷つけない」


ストン、と憑き物が落ちたように彼女の体のこわばりが解ける。

力が抜けたことで少し手にかかる重さが増えたが、全く問題がない範囲だ…っていうか、軽すぎる…。


「お前軽すぎないか?ちゃんと食ってるのか?」


「うん、ちゃんと食べてるよ。この前だってオムライスとワッフルセットで食べたもん」


「それは…だいぶ食ってるな」


太らない体質とかいうやつなのか…?

母が聞いたらとても驚きそうだ。

そういえばこいつの母親も小さくて細い方だったな…遺伝か……

なんてことを考えていたら彼女の体にまた力が入った。


「ん?どうしー」


「あぁぁごめん!!」


まるで子猫のようにスルリと俺の腕の中から抜け出した。

……そういえばついそのままの体勢でいたな。


「あ、あの、その、ホントに申し訳ないって言うか、ごめー」


「いい。」


「…え?」


「謝らなくていい。さっきも言ったろ?お前の体調が最優先だ。元気になったならそれでいい」


しゅんと垂れていた耳としっぽが、嬉しそうにピンとたってブンブンと触れてい……あれ、おかしい、こんどは何故か子犬に見える。

なんでしっぽと耳が見えるんだ……。


「ありがとう、バーミリオン君…」


「あ、あぁ、気にするな」


どことなく気まずい空気が流れる。

……ど、どうしよう。


「沙夜ー?どうしたのー?いつまで外にいるのー?」


なんともなしに突っ立っていたら店の中から声をかけられた。

こいつは母親に体調が悪いことを知られたくなさそうだったけどさすがに伝えた方が…


「あの、娘さん何ですがー」


「大丈夫!もうすぐ戻るよー!」


…また遮られた。


「おい、お前、さすがに…」


「バーミリオン君、心配してくれてありがとう。でもね、私、お母さん大好きなんだ。ほんとにもう大丈夫だから…心配させたくないの」


ひっそりと微笑みながら、たくさんの愛情の籠った声でそう言った。

そんなふうに告げられたら、反対なんてできやしない。


「わかった。けど、無理はすんなよ。しんどかったらちゃんと休め。その方が親御さんにとってもいいはずだ」


「うん、ちゃんと休む。ほんとにありがとう」


「あぁ、偉いぞ」


「んぇ?!」


「あっ」


子犬フィルターに、つい騙されて頭をクシャッと撫でてしまった!


「あ、す、すまん!」


「え、ううん!大丈夫!」


2人でワタワタと慌てていたら、店の中から無視できない音が上がった。

何かが崩れるような音と彼女の母親からの助けを求める声。


「きゃー!やっちゃった!!沙夜ちゃんちょっとたすけてー!」


「あーも、はーい!!すぐ行く!!」


いい頃合いだろう、もうこいつを追い詰めてやろうという気にもならないし、史也のアレは他の方法を探そう。


「じゃあな、俺はもう帰る。」


「うん…本当にありがとう、バーミリオン君」


「おう」


予想外に色んなことが起きたな…。

史也のちょっと理解できない話を聞いてから、驚くようなことばかりだった。

わかったことは、あいつは思ったより悪いやつじゃなかったことと、きっと周りが思っているよりもずっと弱いってことだ。

あとは……最後まで子犬フィルター外れなかったな……

ありがとうございました!!

バーミリオン君は本当はとっても紳士ないい子なんです!!

という伝える技術の少ない作者の叫びをここに載せさせていただきました。

次は学校に行く前の夜の沙夜ちゃんの一人語りになる予定です。

そこでワンステップ踏んでからの(沙夜ちゃん的には)新しい学校生活スタートの予定です。

コロナウイルスにより皆様大変な毎日を過ごされていると思います。

どうか体調にお気をつけて、元気でいらしてくださいね。

いつもほんとに感謝です!

これからも頑張りますので、よろしくお願いします!

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