藍野先生
どーしよー。
なんか私の記憶にないことが起こってるよー。
私のせいなのかなぁ?
だって、モブが注目浴びるとか思わないじゃん!
尾行技術を磨かなきゃ!そんな技術聞いたことないけど。
昨日失敗したし、今日はちゃんと準備してきたんだから!
尾行しなきゃいいのかもしれないけど、こんなチャンス見逃せないよ、大好きなんだもん!
私は校門側の席だから、チラーッと外を見てみた。
すると、まだ桜ちゃんと白川先輩がお話しをしている。言い争ってる?
と、思ったらなんだかさっきと様子が違う。
なんか仲良くなってきてない?
え、もしかしてイベント見逃した?!
いや、なんか変だぞ...あれは...握手?
しかもがっしりと握りあっている。
あれは甘い恋の予感というより、熱い...友情って感じが...。
あ、離れてった。
なんか嫌な予感がする。
い、いや!気のせいだ!きっと...たぶん...。
私が机に突っ伏して一人悶々とそんなことを考えていたら、教室の空気が急に変わった。
チラリと顔を上げてみると、みんなの視線の先に美少女桜ちゃんがいた。
あー、同じクラスだったもんね。
さすが主人公。何もしなくても注目を浴びている。
それにしても運が良かったな。桜ちゃんが教室にいる限り尾行する必要がない。
席も私の二つ右で結構近い。自分の席から十分見れる。
今日は後イベントは昼休みだけだ。
もうすぐホームルームだな、実は昨日は担任が体調不良だとかで副担任の先生しか知らないんだよねー。
今日は来てるのかな?ゲームで担任見たことないし、気になってる。
優しい先生だといいなー。みんなからニックネームで呼ばれちゃうようなおじちゃん先生。
「時間だぞー、席に着けー。」
お、来た!
サラサラな茶髪、キリッとした目、スッと通った鼻筋、キラめく白い歯、185は確実にあるであろう身長、これは...。
おぉふ...イケメン先生だぁー!
この学校マジでイケメン多すぎない?!
この世界の人は基本的に綺麗だけど、その中でもトップレベルな人が多い。
うーん、おじいちゃん先生ではなかったけど、イケメンだしそれはいいや。
一番の問題は性格だ。
さぁ、どうだ!
「自己紹介をする。昨日は体調を崩していなかったが、このクラスの担任の藍野聡だ。よろしく。」
...なんか...厳しそうだな。
すっごくがっかり。
いや、まだ希望はあるはず。
仲良くなったら優しくなるタイプかもしれないもん。
それに、私以外の女子はイケメンってだけで大喜びしてるし。
目がハイエナみたいにランランとしてる。...怖い。
これ、へたに仲良くなったらやばいかも。
気をつけよ。
「ホームルームはこれで終わる。ところで、神月って誰だ?」
「へ?」
はぁぁぁあ?!
今、なんて言った?神月って誰だと?!私だ!
何してくれてんだよー!
周り(主に女子)がザワザワしてしまってるじゃないか!
私は地味子さんだから神月沙夜という名前を知ってる人じたい少ないのに!
「ん?いないのか?」
「...います。私が神月です。」
なんなんだよー…私何かした?
「おぉ!お前か、ありがとな。」
うぅ!笑顔がまぶしいっ...て、え?
「なにがですか?」
「知らなかったのか?昨日、神月が手伝ってくれた仕事、俺のだったんだよ。」
手伝い?
あぁ、桜ちゃんと下校時間あわせるためにやったやつのこと?
「あの出席表作りとかのことですか?」
「そうそう。あと書類整理とかもだな。」
やっぱり。
でも、私のためにやったようなものだし、そろそろ女子の目が怖いから離れてほしい。
「いえ、気にしないでください。私はただ昔から両親に老人は大切にするように言われていただけですから。」
これは割と本当のことで、副担任の先生は私の理想のおじちゃん先生よりさらに年のいったおじいちゃん先生なのだ。
優しそうだけど、少々頼りないんだよね。
そんなおじいちゃん先生がよろよろと書類を抱えて歩いていたら、目的がなくても手伝うと思う。
「確かにあの先生はだいぶお年がいってるな。だがやっぱり、それでもすばらしいと思うぞ。」
「ありがとうございます。」
視線が...!視線の針が突き刺さるー!
「せ、先生。そろそろ授業の準備を-」
「俺は、お前みたいな生徒、いいと思うぞ。好ましいな。」
私の小さな声は届かなかったようです。
...ん?
「これからよろしくな。」
「きゃ?!」
笑顔からの頭ポンポンはやばいですよー!
主に私の心臓とこれからの学校生活が!
わたわたする私に手を振って去る先生の後ろ姿がうらめしい...。
そして、先生が教室を出た後、私に襲いかかるのは言葉の暴力だ。
ありがとうございました。
ブックマーク嬉しいです。これからも頑張るので、よろしくお願いします。