沙夜の家
「‐もちゃん!ももちゃん!次は何するの?」
私は先を走る彼女に声をかける。
彼女の明るくやわらかな髪が宙を舞う。
振り返ってくれる彼女の顔は光でぼやけて形を成さない。
「はやくおいで!さくらちゃん!」
明るい朝日を顔に浴びて目が覚める。
なんか、すごく楽しい夢を見ていた気がする。
「桜ちゃんって聞こえたな…」
乙女ゲームの夢でも見ていたんだろうな。
それならもっとはっきり覚えていたかった。
時間がたつにつれて夢はどんどん薄れていってしまった。
そして現実を見つめなければならなくなってくる。
結論から言って一晩経ったところでましになんてなってはくれなかった。
こんな状態で学校に行くのははっきり言ってリスキーすぎる。
いずれ向き合わなきゃいけないことだけど今日くらいは許してほしい。
幸いイベントもない。
「学校、休も。」
先生にLINEを送る。
適当に気分が悪いとでも言っておこう。
あとは、母さんになんて言おう…。
「沙夜ー?まだ寝てるのー?」
あぁ、ちょうど呼ばれた。
どーしようかなぁ。
うちは花屋を営んでいる。
一階店舗、二階自宅、みたいな。
まあつまり何が言いたいかっていうと親にばれずに学校を休むことはできないということだ。
たぶん平気だけど。
私の母さんは人を疑うことをしない人だからな。
昔から妙に勘のいい子供だった私が変な宗教やなんやらに気を付けていたから今日まで何事もなく生きてこれてるけど、母一人だったらどうなっていたことやら…。
たぶん私がそーゆーのに鋭かったのって前世のおかげかもしれないな。
覚えてなくても少なからず影響していたのかもしれない。
父はいない。
なんでいないのかとは知らないけど、仏壇とかがないことから察するに離婚したのだろうなぁとは思っている。
これまた察しがよく気遣いのできる私は父のことを話題に出したりはしていない。
はっきり言って覚えてもいないおっさんのことなんかどうでもいいしね。
だから疑うなんてしない母さんにちょっとうそをつけば済む話なんだけど、罪悪感が半端ないのだ。
母さんはいろいろとちょっと困ったとこのある人だけど、それを補って有り余るくらい愛情深くて優しい人なのだ。
私がすべてはさすがに難しいけど前世のことを馬鹿だと一蹴したり、ちょっと混乱する程度ですんでいるのはその母の愛情を一身に受けて成長してきたからだと思う。
お察しの方もいるのではないだろうか。
そう、私は母さんが大好きなのである。
母さんにうそをつくのだけは心苦しくなるくらいには大好きなのである。
でも、学校に行くわけにもいかないのだ。
「…はあ、お店手伝おう…。」
母さんに知られることはない罪滅ぼしだけど、今日はたくさん頑張ろう。
髪を緩めの三つ編み一つにまとめて左肩から前に流す。
メガネは…下校時刻ごろだけつけようかな。
これ以上やらかさないために徹底しよう!
さあがんばるぞ!!
「母さーん!今日は学校休みだってーー!!!」
「え、そーなの?はーい!」
…ね?これでだませる母が私はほんとに心配です。
ありがとうございました!
たぶん次回は沙夜視点じゃないです。
短いのをちょこちょこ上げる感じになるかなぁ。(たぶん)
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