屋上と中庭
やって参りました!放課後ー!!
素早く美月に変装して、ただいま桜ちゃん監視中!
絵面的にはほんとに私やばい人だね!
空き教室から望遠鏡で確認してるんだけど、あの感じだと、屋上…かな?
よっしゃ!
緑川先輩だー!!
次は絶対アイツなのにとかは今は考えない!
素直に喜んでいこーぜ!!
さーて、尾行するぞ!
緑川先輩は、屋上からの景色を見に来た桜ちゃんより後にいつも登場していた。
つーまーり!
桜ちゃんより早く屋上に隠れていれば、イベントを最初から最後までしっかり見た上カメラたちも回収して帰れるってことなのだ!
ってことで、到着しました!屋上!!
さっそく隠れて待機です!
ん?なに?
…テンションがおかしいって?
だって、これからものすごく大変だということが確定してるんだもの。
無理にでもテンション上げなきゃやってらんないよ!
気分的には神様と喧嘩だよ。
運命ねじ曲げる気満々だしー、てゆうかすでに曲げてる気がするしー。
「あ、来た」
隠れていじいじしてたら桜ちゃんが到着した。
緑川先輩は、いつ頃来るのかな。
しばらくは桜ちゃんが景色を眺めてるだけなのよね。
にしても、ほんとに美少女だなぁ桜ちゃん。
多くのイケメンが夢中になるのも納得の可愛さよね。
…モブから告白とかされないのかな?
前はモブのことなんて考えたこと無かったけど、ここは現実。
なら、普通に告白とかされてもおかしくない。
そーなったら、また展開が変わっちゃったりするのかな。
だって、ゲームではなかったことが起こるってことだもの。
え、それも把握して回避する必要あったりするの?
なにそれしんどい。
と、とりあえず!そーゆー考えても泥沼になりそうなことは起きてから考えよう!
よし、そーしよう!
「あれ、桃井さん?」
おお!緑川先輩だー!!
「あ、緑川先輩!こんにちは。」
「こんにちは。桃井さんも景色を見に来たの?」
「はい!ちょっと気になったので。」
和やかだなぁ。
まさに癒し系イベントだね!
「あの、先輩。桃井さんって、ちょっと堅苦しいので、桜でいいですよ?」
「んー、そう?なら、桜ちゃんって呼ばせてもらおうかな。」
「はい!」
「オレのことも、涼でいいよー。」
おおー!
名前呼びってやっぱいいよね!
この名前呼びがだんだん他の人にも広がっていく感じで、最終的に桜呼びになるんだったよね。
イケボで呼び捨てとかもう最高だと思う。
すーっごく楽しみ!
「わかりました!涼、先輩?」
桜ちゃーん!!
可愛すぎるよっ!!
小首傾げて上目遣いでそれはやばい。
ほら、緑川先輩も凝視してるやん!顔ちょっと赤くなってるもん!
もー!
これぞ乙女ゲームだよ!
「…うん、桜ちゃん。」
はぁ、これで明日から緑川先輩も桜ちゃんに少しずつちょっかいとゆうか、話しかけてくるようになるんだよね。
ふぅ、素敵なイベントだった!
あとは二人が去ったあとにカメラたち回収して帰ればミッションコンプリート!!
「それじゃあ、涼先輩、私そろそろ帰りますね。」
「あ、いや、待って。」
「なんですか?」
ん?
おおっと、もはやお馴染みの嫌な予感だね!
「さっきから、そこで覗いてる子いるよね?気配がするんだよねー。」
えぇぇ?!
何そのシックスセンス!!
そんな設定なかったよね?!
ここが現実だからとかそーゆー問題じゃないよね?!
と、とにかくバレてるってことは確かだ。
逃げなきゃ!
でも、入口はたったひとつ。
…見られるのは仕方ない。
全力で逃げ切る!!
「ねえ、出ておいでって、うわっ?!」
近づいてきた緑川先輩の横を駆ける。
桜ちゃんが唖然としてこっちを見ている。
「あ、あの子!!ねえ、待って!」
ごめん、待てない!
…って、めっちゃ追いかけてくるー!
桜ちゃん何気に足速い!
緑川先輩もさすがの高スペックだね!
二階からなら、跳べる!
階段を駆け下りて開いている窓を探す。
あ、あった!
迷わず勢いそのままに跳ぶ!!
「え、ちょ、ここ二階!」
後ろで焦った声がするけど知らなーい!
平気だから気にしないでー!
近くの木に手を伸ばして掴まる。
そのまま木を伝って人目のない所まで移動!
そろそろかなー。
上手く逃げれた安堵で気が緩んだせいか、うっかり細い枝に乗ってしまった。
「え、あ、きゃあ!」
枝が折れて体が傾く。
さすがにこれは無理!落ちる!
咄嗟に頭を庇うように体を丸める。
「は?うわっ!」
ん?あれ?
予想してた衝撃はない。
誰かの焦ったような声と温かくてやわらかい何かに受け止められた。
いや、柔らかいっていったって地面よりはってだけで結構硬いけど。
あぁまてまて、そうじゃない。
そんなのはどうでもいいんだ。
問題は、私は今誰かに抱きしめられているとゆうことだ。
「あ、あの、すみません。ありがとー」
言葉を続けられなかった。
「あなたはたしか…」
あぁそうだ、ここは中庭だった…。
優しそうな顔を怪訝そうにしかめている彼を見て血の気が引いていくのを感じる。
「ふ、副、会長…」
私を抱きとめてくれたのは、藍野創也副会長その人だった。
ありがとうございました!
ついに美月ちゃん副会長と接触!
次は前世について触れていきます!
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