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放課後2~紅野琉理side~

  「あんた、ちょっとかわいいからって調子乗んないでよね!」


 あたしを呼び出した子がそういって睨んできた。

 まぁ、昼休みに誰かが好きだって言ってた人に告白された時点で、こうなるんじゃないかなとは思ってたけど。


 「調子に乗ってなんか...!」


 こんなこと言っても、誰も信じてくれないのはわかってる。

 けど-


 「自分が男子に見てもらえないからって僻まないでよ!」


 我慢できるかどうかは別だ。

 だって、あたし何も悪いことしてない。

 自分の顔が人より整っていることも、少しきつそうな顔立ちをしていることも、わかってる。

 何か企んでいそうとか、いろいろ言われてきた。

 友達もできなかった。

 だから、ずっと笑っていようって、ニコニコしていたら、少しはましになるかなって思ったから。

 その結果がこれ。

 あたしに手にしたのは、男子に媚びを売るきもい女というレッテルだった。


 「だから、あたしはそんなつもりじゃなかったの。あなたたちの勝手な勘違いよ!」


 ワーワー騒ぐ彼女たちに、そういい返した瞬間、その中の一人の顔が真っ赤になった。

 あ、やばい。


 「キモいんだよ!」


 「きゃあ!」


 肩を突き飛ばされた。

 階段を踏み外す。

 視界が傾いていく。いや、あたしの体が傾いていっている!


 --落ちる!


 とっさに頭を抱えて衝撃に身構える。


 「?!」


 何かがあたしを引っ張った。

 その何かに包まれる。

 

 「っ!」


 衝撃がきた。

 でも痛みがこない。

 何かが受け止めてくれたから。


 「ぅぐ-ったー。」


 声がした方を見ると、女の子の顔がすぐそばにあった。

 痛そうに顔をしかめている。

 その子にあたしは抱き抱えられているようだ。

 あたしを受け止めてくれた何かはこの子だったんだ!


 「え、あっ!ごめんなさい!」


 慌てるあたしにその子は笑いかけてきた。


 「大丈夫だから、謝らないで。悪いのは、あなたじゃないでしょ?」


 そういって、その子はあたしを抱える腕に力を込めた。

 優しい声。温かい。

 なんだか泣きたくなって、堪えようとしたら、体が震えた。

 その子はあたしを突き飛ばした女の子たちを睨んで怒っていた。


 「あんたたち、何してんの?」


 ついさっき浮かべていた笑顔とは真逆の冷たい表情。

 かっこいい。きれい。


 「まさか落ちるだなんて」


 「そんなつもりじゃなかった」


 「じゃあ、どんなつもりだったって言うのよ。」


 刃のような声。

 あたしのために使われるのは、初めてな気がする。

 いつも振るわれる側だった。

 

 「そいつが生意気だったから、ついカッとなって」


 「ちょっと脅してやろうと思っただけで」


 「...わざとじゃなかったって言うの?」


 「そ、そうよ!元はといえば、そいつが悪いのよ!」


 「男子に色目使ったりしてるから」


 ヘ?!


 「な、そんなことしてない!」


 止めてよ!

 そんなこと言わないでよ。

 誤解されたくない。

 あたしはそんなやつなんだなんて思われたくない!


 「あたしは、そんなことしたことない!媚びなんて売ってない!ぶりっ子なんかじゃ...そんなんじゃ...」


 お願い、信じて。

 

 「もういいよ、わかってるから。ね、だから、泣かないで。」


 強く抱きしめられる。

 今、なんていったの?

 わかってるって、いってくれたの?

 嬉しい。

 この人は、わかってくれた。

 今まで、どんなに叫んでも、どんなに泣いても、誰も信じてくれなかったのに。

 今日初めてあったばかりのこの人は、信じてくれた。

 あたしのために怒ってくれているその子の横顔を見つめる。

 女の子たちは顔を真っ赤にしている。


「い、意味わかんない!あなたに関係ないでしょ!」


 そう、関係ないはず。


 「関係あるとかないとかの問題じゃない。」


 凛とした声。

 そうか、関係ないんだ。

 あたしが誰であろうと、なんであろうと、この子にとって関係ないんだ。

 この子は、自分自身で生きているんだ。

 平等に、自分で見たもの、感じたものを信じて生きているんだ。

 なんてかっこいいんだろう。


 「悪いのはあんたたちよ。彼女に謝りなよ。」


 なんて、強いんだろう。


 「い、嫌よ!誰がそんなやつに」


 「私たちは悪くないわ!そんなやつ庇ったりして、絶対に後悔するから!」


 女の子たちが逃げていく。


 「あ、待ちなさいよ!逃げんなー!」


 女の子たちが去ってった方を睨んでいるその子をしばらく見つめていたけど、あることに気がついた。


 「あ、の。すみません。」


 「ん?なぁに?」


 あたしが声をかけると、一気に花のようなふんわりとした笑顔になった。

 胸がキューってなる。


 「その、もう平気だから、離してもらっても良いですか?」


 いつまでもこの体勢でいるのは、少し恥ずかしい。


 「あ、あぁ!ごめんね、大丈夫だった?」


 パッと手を離してくれる。

 冷静になったらいろいろと恥ずかしくなって、少し距離を置いたところに座った。


 「う、うん。助けてくれたから。本当に、ありがとう。」


 「そっか。良かったよ、怪我がなく...て...」


 その子の顔が急に青ざめた。

 なぜか焦っているように見える。


 「あの、どうしたの?」


 「え、えっとー、無事でよかったねー。」


 なんかアワアワしててかわいい。


 「それじゃ、私はこれで!さよなら!」


 唐突にそう叫んで立ち上がる。


 「え、ちょっと待って-」


 伸ばした手もむなしく中をつかんだ。

 こんなことならもっと近くに座っておけばよかった。

 

 「名前、聞きたかったのに。」


 ポツリと呟く。

 仕方ない、明日探そう。

 あんだけ髪が長くてかわいい子なら、すぐ見つかるだろうし。


 「ん?」


 これは、生徒手帳?

 もしかして、あの人の?!

 すぐに拾って中を見る。


 「え?!」


 生徒の顔写真のところに写っていたのは地味ーな女の子だった。


 「うそ、違うの?」


 でも、あの人の可能性が一番高いよね。

 こんなまじめそうな子が生徒手帳をこんなとこに落とすだなんて思えないし。


 「わけあり...だったり?」


 髪の長さとか、顔の形はあの人の面影があるように見えなくもない。


 「神月沙夜さんか...。」


 どちらにせよ、届けなきゃいけないし、明日、会いに行ってみよう。

 どんな格好をしていても、あの人であることに変わりはないんだし!


 「待っててね。絶対見つけるから!」

  ありがとうございました。

 ブックマークありがとうございます。

 これからもよろしくお願いします。

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