放課後1~沙夜side~
放課後、今日は特にイベントもないからさっさと帰ろうと思っていたのに、藍野先生に呼び止められた。
「おーい、神月ー。」
着々とたててはいけないフラグをたててしまっている気がする。
「...なんですか?」
ほら、ほらぁ!針が刺さってくるよ!クラス中から!
「少し手伝ってほしいことがあるんだ。」
それ私じゃなくてもよくない?!
「あの、それ私なんかじゃなくても、先生の手伝いなら喜んでしてくれる人、いっぱいいると思いますよ。」
「ん?そうか、ありがとな。」
お礼?まぁ、私の発言は確かに先生は人気があると言っているようなものだからかな。とりあえず、これで逃げれるだろ。
「はい、なので-」
「でも、神月が良いんだ。」
ザワッ
なんちゅーことを言うんじゃこの先生は!
つい口が悪くなるわ!誤解しか生まれないでしょ、これ。
「なんでですか?」
「ほら、入学式のプリント関係の仕事でさ、まとめてくれたのが神月だったから、手伝ってほしかったんだよ。今日無理だったら明日でもいいからさ。」
あー、なるほど。
つまりあの時すでに詰んでいたってことか。
「今日で大丈夫です。行きましょう。」
むしろ明日の方が無理。
「お、そうか。すまんな。」
ほんとにね!針のむしろだよ!
今更だが、この学校は金持ちである。
教師一人一人に個室がある。赤点をとったりすると、ここで先生に指導されながら勉強したりするらしい。
とろうと思えば十位以内にはいれる学力を持っている私には関係ない。少し私のステータスがおかしい気もするけど、害どころか良いことだからそれはいいや。目立ちたくない私はだいたいいつも三十位くらいにいるけど。
とりあえず、ほとんど入ることがないだろうと思っていた場所に私はいる。
先生と二人きりで。
いったい何の罰ゲーム?
「神月。」
「はい、なんですか?」
「これも頼む。」
「...はい。」
時間外労働している気分だ。
特別手当がほしいよ!お給料ほしいよ!残業代は大切だよ!
「神月。...神月?」
頭の中で馬鹿なこと騒いでトリップしてたら、先生に不思議そうに見られてた。
「あ、なんでしょうか。」
「いや、さっきの終わったかな、と思って。」
なるほど。
「あぁ、ちょっと待ってください。......はい、終わりました。」
「ん、ありがとう。これで終わりだから-」
やっと終わったのか。
じゃあさっさと帰ろう。
「そうですか。それでは...」
「お礼にこれ食うか?」
そ、それは...!
超人気洋菓子店[フェアリードリーム]のケーキ?!
くそぅ、私は甘党なんだ!こんな罠を用意していたとは...。
「食べ...ます...。」
負けた...。だって、仕方ないじゃん!食べたいじゃん!本当においしいんだもん!
「おぅ。紅茶でいいか?」
「はい。ありがとうございます。」
こうなったらもう、楽しんで食べるしかないよね。
「三つあるんだが、どれとどれ食べる?」
「へ?」
どれとどれ?もしかして二つ食べて良いの?
嬉しい!いや、しかし、良いのかな?
てゆーか、この先生は私を太らす気なのか?!
残念、私は太らない体質なんですー!って、そうじゃなくて!
「二つ...ですか?」
「あぁ、お礼だしな。好きなの選んでくれ。」
「あ、ありがとうございます!」
この先生空気読めないけど、いい人だ!
わぁ~、どれもおいしそうだなぁ。ショートケーキにチョコレートケーキにモンブラン。どれも王道だからこそ悩むよ。
次いつ食べれるかわかんないし、高いんだもん。
「なぁ、神月。」
「なんですか。」
「これからも手伝ってくれないか?」
「......。」
は?
「え、なん、え?なんでですか?」
この先生はそんなに私をいじめたいの?
(視線の)針が私の心にガンガン突き刺さってくるんですけど?
「神月は、テキパキ仕事してくれるし、無駄なこと喋らないし。」
先生と一緒にいても楽しくないし、早く終わらせたいからね。
「この学校仕事多くてさ。これからもお礼するから、頼めないか?」
今、なんと?
「お礼とは、ケーキってことでしょうか。」
「神月がそれがいいって言うなら。」
めんどくさいけど、ケーキ食べたい。
「時間があるときなら...ケーキはたまにで良いです。」
ケーキの為なら仕方ない。
好きなんだもん。
「そっか!ありがとな!」
キラッキラの笑顔いただきましたー。
顔がいいって得ですねー。
「あ、はい。」
「...。」
ん?なんか変な顔してる。それでもイケメンなのが憎たらしい。
「どうしました?」
「ケーキ、食べるか。」
「はい、ショートとモンブランいただきますね!」
「...。どうぞ。」
また変な顔してるけど、どうでもいいや。
ケーキの方が大切さ!
「いただきます!」
ん~!おいしい!
クリームの甘さとイチゴの酸味が最高!
スポンジはフワッフワだし、本当に好みそのもの!
あっという間に食べちゃった。
次はモンブランを...
「神月、一ついいか?」
「はい、なんでしょうか。」
ケーキはあげないよ!
「お前の眼鏡、どうなってるんだ?」
「ふぐっ!」
「お、おい、大丈夫か?!」
なぜ急にそこに注目するかな?!
「ゲホッ、平気、です。な、なんですか?急に。」
「お前を見てて、ふと気づいたんだが、その眼鏡、どこから見ても光が反射して目が見えないなって...おい、本当に大丈夫か?」
私が死んだ魚のような雰囲気を漂わせはじめたからか心配された。
「平気ですよ、あはは...」
「そ、そうか?」
目が見えないか...。その通りである。
実はこの眼鏡は特注品で、先生が気づいたとおり、私の目が見えないようになっているのだ。
前髪長いし、私のことじっと見るような人いないし、基本うつむいてるから、今まで気づかれなかったのに...。
「気になります?」
「あぁ、まぁ、少し、けっこう、かなり。」
すごーく気になっていることはよくわかったわ。
「ちょっと事情があるんです。特注品なんです。」
先生だし、別にいいや。
言いふらしたりしないでしょ。
「外したりしないのか?」
「え、なんでですか?」
外す意味ある?ないよね?
「いや、気になるとゆうか...」
何この先生めんどくさっ!
あーでも、桜ちゃんのストーカーするのの協力を条件とかにしたらメリットあるかも。
なんかかなり本気で捜しているみたいだし。
「先生、私のお願いきいてくれませんか?そしたら、外してもいいです。」
一応聞いてみる。
「お願い?なんだ?」
「約束してくださらないなら言いませんし、外しません。」
まぁ、たかが眼鏡のためにこんな得体の知れない約束する人なんていないだろうけど。
「わかった。約束する。」
いたーー!
なんかベタなノリツッコミみたいになったじゃないか!
「本気ですか?」
「あぁ。」
そっすか。
良いけどさ、もう少し悩んだりしないの?
「はぁ、えっと、お願いっていうのは、眼鏡を外した顔が私だとばれないように協力をしてほしいってことなんですけど。」
「ん?わからんけど、良いよ。説明してくれるよな?」
「はい。」
なんてあっさりとしているのでしょうか。
「実は、とある事情で、私はたまにこの眼鏡を外しているのですが、その私の正体を捜している人たちがいまして、その人たちにばれないようにするための協力をしてほしいんですけど...」
うーん、こんな説明で良いのかな?
「わかった。」
良いらしい!どんだけ外してほしいんだよ!
「あ、ありがとうございます。」
「あぁ、それで、外してくれるかな?」
おのれ、なぜか目をキラキラさせよって...子供なの?秘密の気になるお年頃にしては遅くない?!
「はい、どうですか?」
なんだかわくわくしているみたいだから、あっさりと外してやった。
こうマジマジと見られていると恥ずかしい。
てゆうか、なんで呆けてるの?
何か言ってよ!居心地悪いから!
「先生?」
「あ、や、良いんじゃないか?」
「は?何が良いんですか?」
何、急に。
意味わかんないぞ。
「えっと、あそこまでして隠すってことは、顔に何かコンプレックスでもあるのかと思って、先生としてフォローしなくちゃいけないなーとか、思ってたから。」
ヘ?あんためっちゃわくわくしてなかった?
「あんなに目をキラキラさせてたくせに?」
「え?!いや、そりゃ、ちょっと気になってたから。」
「ほーん。つまり先生はコンプレックスがあるかもとか思っていながら、わくわくしてたわけですか。フォローとかついで程度にしか考えてなかったんじゃないですか?」
「い、いや、五割くらいは...」
「本当は?」
「...二割くらい。」
「ほとんど無いじゃないですか。」
「すまん。」
「てゆーか、コンプレックスがとかもけっこう失礼じゃないですか?」
「すまん。...って、ん?」
ひどい先生を追求していたら、急に眉間にしわを寄せて見つめてきた。
ちょっとびびった。
「神月、キャラ変わってないか?」
「あっ」
ついうっかり、やっちまったーね。
眼鏡外すとどうもなー。
「こっちが素ですもん。内緒にしててくださいよ。」
しっかりと注意しておく。
「あ、あと、もしこれから眼鏡を外した私を見かけても、名前呼んだりしないでくださいね。」
そんなことされたら、一発でばれちゃうからね。
「なんて呼べばいいんだ?」
うーんと、どうしよう。
そうだな、カミヅキサヤをちょっといじって...そうだ!
「先生!」
「わっ!な、なんだ。」
「八坂美月って呼んでください。」
「八坂美月?うん、わかった。」
ふー、思いついてよかった。
「なぁ、神づ-」
「先生?」
「もう変えるのか?」
「当たり前です。」
いざ外で呼ぶときに間違えられたら最悪だもん。
「あー、美月。」
下の名前の方で呼ぶの?
別に良いけど。
「はい。」
「そろそろケーキ食べたらどうだ?」
あ!すっかり忘れてた!
「そうですね!いただきます!」
モンブランもおいしい!
まったりとした甘さが最高!
ん~!
「ははっ」
えっ、何?
「なんですか?急に笑ったりして、怖いんですけど。」
「ひどいな、ただ美月は本当においしそうに食べるなって思って。」
なんだ、そんなこと?
「おいしいですからね。...ごちそうさまでした。」
食べ終わったので時計をみると、もう結構な時間になっていた。
「先生、LINEかメールアドレス教えてください。さっき言ったように、事情があるので。」
もう(視線の)針に刺されたくないからね。
「え、わかった。」
約束とはいえ、もうちょっと渋ってもいいと思うんだけど、ま、いっか。
楽だし。
「......よし、OKです。」
「おう、これからよろしくな、美月。」
「はい。私が助けてほしいときとかは、それで連絡しますし、お手伝いについても、それで連絡してください。神月と美月の近くに先生がいるとばれるかもしれないので。」
「わかった。そういえば、美月は別に目は悪くないのか?」
「両目とも2.0です。」
「そ、そうか。かなり良いんだな。」
「はい。」
おっと、さすがにもう行かなきゃ。
「先生、さようなら。」
「あぁ、また明日。」
礼をして部屋を出る。
最初は最悪だと思ってたけど、いい日になったな!
ありがとうございました。
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