第3話 うーん、クラスメートに絡まれた…
「サトルー!また居眠りで怒られてたじゃん!ホント懲りないね。」
放課になるやいなや、やたらとハイテンションなツッコミが飛んできた。
帆奈・アレクサンダー・クロウリー。
大昔の有名な魔術師の末裔らしいが、中学1年生?と聞きたくなる身長と気の強そうな猫目からはどうもイメージがかけ離れている。魔術師っぽいのは三つ編みにした腰まではあろうかという黒髪くらいだ。ぶっちゃけシャム猫に一本おさげを足したらハンナである。
ハンナという名前を格好つけてネイティブっぽい発音で自己紹介して以来、ハナちゃんとクラスメートから呼ばれているのが哀愁を誘う。
「うるさいなぁ…。魔法学だけは眠気に勝てないんだから、しょうがないだろ??」
「まぁ、気持ちはわかるけどなー!天才のアタシもどうにも現代魔術は苦手だもん。」
「天才って…お前、魔法学も魔法実技も僕とどっこいどっこいじゃないかよ」
「ふん!あんなたかだか20年も経たない学問や、チンケなアプリ実習なんて興味ないもん!」
もんっじゃないだろうに。いくつだよ。
…とはいえ、アプリ実習とはまた乱暴な表現だが、ある意味的を射ているのだ。
魔法が発現してまだ20年未満、その間に人類が魔法に見出したのは、新たなエネルギー源という価値だった。
生活における移動、通信、発電、果ては軍事利用まで。
とうに底を尽きかけている化石燃料に代わり、魔力を燃やして機能させることが第一の目的として掲げられた。
長大な呪文や儀式は簡略化・記号化され専用端末に記録され、使用者は言ってみればボタン1つで魔法が発動できる。自動で精神力を吸い上げる為、まるでゲームのMPのような使用が可能なのだ。
魔法実技は、魔法学に加え、昔の学習指導要領から追加された端末操作を練習させられる科目である。
「あんなのは魔法じゃないっ!ただの便利マシーンだっ!!」
「ハ、ハナちゃん、落ち着いて、ね??教室中に響き渡ってるから…」
「恵!!アタシはハナじゃなくて、ハ・ン・ナだってば!!」
友人の大声を見かねて、我が妹からの静止が入ったが、さらにそれに噛み付く帆奈。もう猫どころか狂犬である。
「もう、お兄ちゃんが居眠りしたりするから、ハナちゃんが噛み付くんだよ??」
いやいや、恵さん?居眠りと狂犬をさらっと結びつけられても困ったものなんだが…。
「あ、あぁ、悪かったよ。ハンナも落ち着けって。呼び方も今更だろ。」
「ぶーぶーー!」
狂犬がブタになった、と言ったら後が怖いので、波風を立てたくない身としては黙るしかない。
「はいはい、じゃあ、次は魔法実技だし、演習場に移動しよ??」
妹は手馴れた様子で狂犬を手なづけるのであった。本当、よく出来た、出来過ぎな妹である。