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こちらは最初に書いていた少年姫と少女王子の一話です。
ここから1〜7話までは最初に書いていたものですが、8話めの「絵本のはじまり」を一話として、最初とは違う話になりますが、書いていけたらなと思います。
よろしくおねがいいたします。
「遠い遠い、昔の、4つの季節が巡る国のお話。」
そう、母様が切り出した大切なお話を、僕はその時、どんな気持ちで聞いていたんだったか。
「エグランテリアという、精霊や妖精ととても仲の良い小さな国の王妃様と王様は、長いこと子供を欲しがっていました。ですが、子供は天からの授かり物です。
ある日、王妃様が庭園の池のほとりを散歩していると、池の水上の花の妖精が、王妃様に言いました。
あなた方の願いはもうすぐ叶えられます。かわいい王子様が産まれますよ。
妖精のいった通り、ほどなく王子様が産まれました。
王子様はヴァルトと名付けられ、たくさんの愛をもらい、たくさんの愛を返しました。そう、たくさんの愛を。
大切なことなのでもう一度いいましょう。
たくさんの愛を返したのです。
つまり、たくさんの女の子に言い寄られ、それら全てに応える、愛情深い方になってしまってね?
その女の子達のなかに、すこーし嫉妬深く、精霊に愛された魔法が得意な子がいたの。
その子は王子様が自分のことを本当に愛していてくれた訳では無いと知って、ひどく悲しんでしまった。悲しんだ女の子をみて、精霊は怒り、女の子は王子様に、王子様の子孫にも続く呪いをかけてしまった。
“あはは、悲しいなぁ、本気だったのに、本当、だったのに。
王子様、だなんて、嫌い、キライ、ワタシは、アナタの唯一に、なりたかったの。
アナタに、唯一はイラナイ、認メナイ。
ダッテ、アナタは唯一を選ぶつもりもナイのでしょう?
アナタが愛する者はイラナイ。貴方は誰かを愛してはイケナイの。
ふふふっあはは、悲しんで後悔スレバイイわ。
あぁ、でも、でも、そんな表情は見たくないの。
いやぁ、イヤ、嫌よ、唯一なんて認めない、でも、でも。
呪いがかかった貴方ヲ、本当に、愛することのできる人が現れたなら、貴方がその子ヲ望むなら。
絡めて、繋いで、不幸にして、それでも愛せるなら。”
だから、エグランテリアの王族の男児は精霊に好かれないの。
呪いは、ともに歩んでくれる人が現れなければ、愛せる者が15歳になるまでに愛してくれなければ、感情の無い、お人形になってしまう、というもの。
まだ難しかったかしら‥?でも、今知っておかないといけないことなの。
だから、貴方は、愛する人ができたとき、その手を離してはいけませんよ。」
申し訳ありません、母様。僕、手を、離してしまったかもしれません‥‥。