5 おっさんはドラゴンに挑む
街道を進んでいるとなんか人だかりが。
騎士たちが街道を封鎖しているようだ。
「ここ通れないのか?」
近くにいた商人風の男に尋ねてみると、
「なんかドラゴンが現れたとかでこの先は通行禁止とかのようだよ」
「おー、ドラゴンか」
「大迷惑だよ、迂回して行こうと思うと半月は余分に時間がかかっちまう」
「それは難儀なことだな」
俺は騎士たちのところへ行ってみた。
手前にいた若そうな騎士に尋ねてみる。
「ドラゴンがいるとか、なんか被害があったのか?」
「何だお前は。
旅の戦士ごときに言うことはない」
「俺がちょっと倒してきてもいいだぞ」
「何を大口叩いているんだ。
今、王都に連絡して討伐隊を結成しているから1ヶ月程待っているがいい」
この騎士は頭が硬そうだ。
それにこの任務に緊張しまくってるようだな。
すっげぇガチガチだ。これじゃいざっていう時にまったく役に立たないぞ。
面倒だから強行突破するかな。
「待たれよ」
後ろから隊長風の男が声をかけてきた。
「あなたは、いえ、あなた様はもしや、ガムス様?」
おや、俺のことを見知ってるやつがいたか。
「あーそうだ。旅の途中なんだが、通ってかまわないよな」
「いかにガムス様でもお1人でドラゴン相手には」
「まぁ敵いそうもなかったら逃げ出すよ。
ドラゴン1匹に殺されるほど老いぼれてはないと思うぞ」
「わかりました。
ドラゴンは銀色のドラゴンの様子。上位種と思われます。
馬なら2時間ほどでドラゴンのいるあたりまで着くでしょう。
発見報告が早く街道を早期に閉鎖したので今のところ被害はありません」
「そうか、じゃ行かせてもらう」
「お気をつけて」
俺の顔を見知ってるやつがいて話が早かった。
あの騎士は落ち着いていたし、役に立ちそうだな。
馬を走らせると、銀色のドラゴンの姿が現れた。
美しい。
そのドラゴンの姿を初めて目にしたとき俺はそう思った。
銀色に輝くその姿は神々しくもあった。
「よぉ」
俺はドラゴンに声をかけてみた。
このドラゴンなら人間の言葉も使えるんじゃないかと。
「なんだ人間か。なんのようだ」
どうやら知性のあるドラゴンのようだ。
「俺の名はガムス。お前の名を聞かせてもらえないか?」
「人間に名乗るつもりなどない」
「そうか、じゃ戦おうか」
「愚かな。
か弱い人間風情がたった1人で私と戦うというのか」
「タイマンが戦いの醍醐味だからな」
「いいだろう、か弱きものよ」
ドラゴンはそう言うと大きく息を吸い込んだ。
しまった。
馬をもっと遠くに置いてくるんだった。
ドラゴンのブレスが止めておいた馬のところまで届いてしまったようだ。
愛馬はドラゴンのブレス一撃でやられてしまったようだ。
「愛馬の敵!」
俺は長刀を振りかざすとドラゴンに切りかかった。
すると、ドラゴンの前足による斬撃が俺の左肩をかすめた。
「いてぇな」
このくらいの傷ならほっておいても治るから問題なさそうではある。
「いや、普通の人間なら今ので絶命するはずだが」
「俺は頑丈なんだよ」
こいつでかい体のくせに想像してた以上に素早いでやんの。狙いも適切だ。
完全に見切りに失敗した。
戦いの勘がにぶってやがる。
俺は気持ちを入れ直して大きく構えた。
もう油断はしない。
一気に倒す!