4 おっさんはゴブリンの群れで無双する
村で散々飲み食いして案内された家で寝ようとしていると、助けた娘がやってきた。
「先程はありがとうございました。
何もできませんのでせめて」
そう言って俺に寄り添ってくるじゃないか。
これは、やってくれってことでいいんだよな。
この娘は正直好みじゃないんだが、この状況でそう言って追い返すのはあまりにも失礼だろうな、頂くことにしよう。
まぁ人を殺した後は血がたぎってるのも正直なところで、ありがたくもある。
勇者パーティーのときは、そんな日は街で女を買いに行ったものだが、そのことでアンナに冷たい目で見られていたものだ。
しゃあないじゃないか、男の性ってものを理解してもらわないとな。
「戦士様、いろいろ忘れさせてください」
そうか、山賊どもにやられたんだな。
あいつらと穴兄弟と思うとなんか悲しいものがあるが、まぁこれも人助けだよな。
翌朝、遅めの朝食を取り終わると、老人が訪ねてきた。
確か村長だったっけ?
「戦士様、おはようございます」
「あー、おはよう」
「実は戦士様にお頼みしたいことが」
ほらきた。なんか歓待されるとすぐこうやって、お次がくるんだよな。
まぁ別にヒマだからいいんだが。
「近くにゴブリンが集落を作っておりまして、このたび討伐隊を組もうとしておりました。
近くの街の冒険者ギルドへも依頼を出そうとしているのですが、戦士様にも協力願えませんでしょうか?」
「ゴブリンか、まぁそのくらいなら今からちょっと倒してくるが」
「いえまだこれから討伐隊を組織しようと……」
「いらんだろ、ゴブリンなら。
誰か案内してくれる人がいれば、倒してくるぞ」
「ですが50匹近くもいそうな集落ですので」
「なんだ、その程度ならすぐ終わるぞ」
オーガ100匹とか言われると面倒だがゴブリンならいくらいても問題ないだろ。
村長は半信半疑って表情ながら、狩人っぽい男を1人連れてきた。
「戦士様、この男が案内いたします」
「そうか、よろしく頼む。さっそく行こうか」
「は、はい」
男に案内されて俺はゴブリンの集落へ向かった。
村から2時間ほど山道を進むと、崖の下にゴブリンの集落が見えた。
これだけ近くに集落ができるとさすがに不安だろうな。
それにしても、この男なかなか気が利いている。
ゴブリンの集落の全貌が一望できるところに案内してくれるとは。
「見える限りですべてか?」
「はい、そうです」
「んじゃ行ってくるわ」
俺はそのまま崖を滑り降りていった。
滑り降りたところにいたゴブリン2匹を斬り殺し、おたけびをあげると、ゴブリンたちが集まってきた。
1匹ずつ殺していくとか面倒だからな。これで勝手に集まってくれる。
わさわさと集まってくるゴブリンたち。ホブゴブリンが数匹混ざってるようだがまぁ関係ないな。
近づいてきたやつらを切り捨てるのみ。
楽すぎるな。あまりこういう楽な戦いばかりしてると腕が逆に鈍りそうだから気をつけないといかん。
5分かからずにすべて片付けることができた。
これで終わりかな?
とりあえずまわりに生きていそうな気配はないが。
「おーい、まだ残りいるか?」
崖の上にいる男に聞いてみる。
「いえ、全部倒したようです」
じゃ、金目のものでもないか、探してみるか。
集落を漁ってみたがたいしたものはなかった。
盗賊とかと違ってシケてるよな。
まぁそれでもマジックアイテム数個がGETできた。
こんなものでも売れば数ヶ月は遊んで暮らせるだろう。
「よし帰るか」
村へ戻って男に報告のほうはまかせておいた。
あわてて村長がやってきた。
「まさかこんなに早く終わるとは思っていませんでした」
金目のもの漁ってなければもっと早かったがな。
「冒険者に依頼するために用意したお金です。
わずかではありますが」
まぁくれるものはもらっておこう。
この程度の作業で金もらうとか冒険者って気楽そうな仕事だな。
なんだかんだと往復で時間をとられてしまった。
今から出発すると山の中で夜を迎えることになりそうだ。
どうやら今夜もゴブリン討伐で歓待してくれるようだから、もう1泊していくことにした。
昨夜の娘が今夜もお相手してくれた。2晩目となると肌が馴染んでくるな。
ずるずると居着いてしまわないようにしよう。