10 おっさんは小さな幸せを手に入れる
救い出したファンタちゃんを連れて俺は宿屋へ引き返した。
ファンタちゃんは安心したのかオネムのようなので、お姫様抱っこしていくことに。
宿屋に戻るとアルタさんが嬉しそうに飛び出てきた。
ファンタちゃんを起こすと可哀想なので、感激のシーンはあとまわし。
俺は抱っこしたまま受付の裏の家族の暮らしてるほうへ案内され、そのままファンタちゃんの部屋のベッドにやさしく降ろした。
起こさないようにアルタさんと2人そっと部屋を抜け出して、家族の居間であらためて、
「本当にありがとうございました」
アルタさんは満面の笑みで俺の胸に飛び込んできた。
「待たせたな」
「いえ、こんなに早く戻ってくるなんて思ってもいませんでした。
それで、ファンタは無事だったんですよね」
「あー、怖い思いをする前だったようだ。
心配することは何もない」
「よかった……すべてガムス様のおかげです。
約束通りに……」
アルタさんは目をつぶった。
俺は優しくその唇に……
ぐ~~
俺の腹の虫が盛大に鳴りやがった。
「夕食の準備はできてますよ。
先に食べましょう」
宿の食堂でなく家族の居間で夕食をいただくことになった。
そういえば、アルタさんといっしょに食事するのは初めてだな。
「うん、いつも以上に美味い」
「ありがとうございます。
こんなことくらいしかできませんので」
「いやいや、この料理は自慢していいぞ。
これからずっと、アルタさんの料理が食べれるかと思うと」
「はい……
どこまでも着いてまいります」
「そのことなんだけどな。
アルタさんはこの宿屋続けたいんじゃないのか?」
「確かにこの宿屋には愛着がありますので、続けられるものなら続けたいです。
ですが、ガムス様との約束がありますし、もし約束がなかったとしても私は……」
「続けていいぞ。
俺もここに住まわせてもらえないか?」
「え?」
「まぁ俺には宿屋とかできない。
それに1ヶ所に縛り付けられたりしたくはない。
すぐに何処かへ旅立ってしまうと思う」
「はい、ガムス様がそういう方ってことはわかる気がします」
「そんな俺でも帰ってくる場所がほしい。
この宿はとっても居心地がいい。いつでも宿としては戻ってこれるだろう。
でも俺はそれじゃ嫌だ。俺がほしいのはそんなのじゃない。
待っててくれる人がほしいんだ」
「はい、ここはガムス様の家です。
いつもここでお待ちしております」
「いや、俺とアルタさんとファンタちゃんの家だな」
「はい」
「ファンタちゃんも俺のこと受け入れてくれるかな?」
「大丈夫だと思います。
割りとダムス様には馴染んでましたし、助けてもらったってことはわかってると思います」
「そうだといいな。
まぁそれは明日、起きてからだな」
そういえば、シルバのことも話しておかないといけないか。
まぁそれも明日でいいか。
「アルタ」
「はい、ガムス様」
さっきの続きからだ。
今度はもう失敗しないぞ。
まぁこれは魔王倒したときにはそう思わなかったけど、この状況なら、
『そして皆、幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし』
と、話を終わってもいいんじゃないか?
-完-
予定通りこれで一旦終わらせていただきます。
そこそこ多くの皆さんに支持していただきましたので、最初の約束どおり続きを考えてみることにします。
もし続きを書いたとして、今ここで終わるよりおもしろくできる!と確信できましたら、また続きを投稿したいと思いますが、その自信がもてなければこの作品はこれで終了となります。
また続きでお会い出来ることを祈って。




