1 おっさんは魔王を倒す
急に書きたくなったので連載開始です。
何故か今流行?って感じのおっさんものです。
とりあえず10話で完結の予定ですが、人気が出るようなら続編も考えます。
同時連載中の2作品もよろしくお願いします。
「妹が最強すぎて冒険がぬるい」 http://ncode.syosetu.com/n6181eh/
「クマの料理屋さん ~のんびりVRMMO~」 http://ncode.syosetu.com/n3672ej/
俺の体当たりで魔王は吹っ飛んだ。そのまま魔王をへ向かって連続攻撃をしかける。
勇者カインは全身の気を貯めている。必殺技を使うタイミングは今しかないと見たわけか。
あれは、ちと時間がかかるからな。
その間は俺が1人で魔王の攻撃を食い止めてやる。
いかん、魔王がカインに気づいたようだ。ジャマさせるわけにはいかない。
俺が魔王の正面にまわりこんだ瞬間、魔王の腹から3本目の腕が現れ俺の腹に食い込みやがった。
まずい、こんな奥の手がありやがったのか。
その瞬間、魔法使いアンナの放った氷の塊が魔王を吹っ飛ばし、僧侶ジャネスのヒールで俺のHPは完全回復した。
助かったぜ。
そして、カインの必殺技が炸裂し魔王は、朦朧とする。俺はその瞬間を見逃さなかった。
長刀を最上段から魔王めがけて振り下ろし、渾身の一撃は魔王を切り裂いた。
5年にも及ぶ魔王との戦いはついに終わりを告げた。
「一番美味しいところを、おっさんに持っていかれちまったぜ」
勇者カインが悔しそうにつぶやく。カインがいてくれたからこそ、俺が思い切った攻撃をできたんだがな。
「ははは、狙ってたからな。それにしてもなんかメチャクチャ強かったな魔王は」
俺は最後の一撃の余韻を噛み締めながらそう言った。
「さすがのおっさんも危なかったね。おっさんのHPが半分切るのを初めて見たよ。
そういえば戦闘中におっさんにヒールしたのも、初めてじゃないか」
僧侶のジャネスは満足気にそう言ってきた。ジャネスへの信頼感は絶大だ。ジャネスが無事にいてくれればこのパーティーが全滅することはありえない。
「まともに食らっちまったな。俺の無敵伝説にケチがついたぜ。
次やるときはもっと完璧に倒してやる」
普段の戦いは俺のスキルであるHP自然回復でまかなえる程度のダメージしか負ったことはなかったからな。
「何言ってるのよ。いやよ、こんな強いのと、もう一度戦うなんて狙い下げだわ。
もう1回やるなら、おっさん1人でやってよ」
魔法使いのアンナはこんなこと言ってるが、実は魔王へのダメージは俺よりアンナのほうが多く与えていたことは間違いない。
「魔王とタイマンか。
ぜひやってみたいもんだ。
俺ももっと鍛えないといかんな」
俺がそう言うと、3人の笑いが爆発した。
本当にこのパーティーでの冒険は楽しかった。正直このままずっと、こいつらと戦い続けることができたら最高なんだがな。
俺はガムス・ラインバーグ、戦士だ。
もともとは騎士団所属の一騎士。
ただ、王国の武闘大会では4年連続の優勝者だったものだ。
まぁ戦うこと以外は何の取り柄もなかったがな。
王命を受けて、こいつらと旅立った時、俺はすでに30歳。
ジャネスは20歳超えていたはずだが、カインとアンナはまだ10代だった。
俺1人だけ年が離れていて最初はどうなることかと思ったものだ。ジェネレーションギャップってやつにいろいろ苦しめられはしたが、3人とも気のいい奴らだった。
まぁ、俺のことをおっさんと呼ぶのだけは気にいらなかったがな。
だが、いつのまにか俺も35歳。おっさんと呼ばれるのも自然な年になってしまったようだ。
そういえば、カインは勇者様ってことで王女様となんか約束があるようだし、ジャネスとアンナがいつのまにかいい仲になってることは鈍感な俺でもわかる。
本人たちはばれていないつもりらしいがありえないな。
おいおい、よく考えてみたらこのパーティーでボッチなのは俺1人かよ。
とにかく、まぁなんだ。
この楽しかった旅も王都へ凱旋帰還したらそれで終わりか。
さびしいよな。
本日、もう1話投稿予定です。