第19話・真相~???視点~
羽山は腕に伸びてきたツルを
もう片方の手で必死に振り払う。
しかし、そのツルは腕だけでなく腰や足、
身体にも生えていき、
彼女の身体をあっという間に
拘束してしまった。
「羽山、どうして私はお前たちのような
異質でおぞましい生物を残しておいたと思う?
それはな、私がお前に乗り移るためだよ」
「なん、だと……」
「私はな、植物人間だけでなく
お前らのような矮小な生物にも
乗り移りながら八百年もの間、
なんとか生き残ることができたのだよ。
それこそヤドリギのようにな。
私は自分の体をもって、
このエノク復活の計画を進行していたのだ」
「どういうことだ」
羽山がツルによって身体が覆われ、
徐々に彼女はツルとの融合が深まっていく。
「私が八〇〇年前に見つけたヴォイニッチ手稿。
この手稿はエノク言語を使う異星人の
最先端技術がかき込まれていた。
私はこの書物を見つけたとき、
人類はなんと小さい存在なのだと思った。
それと同時に、私はヴォイニッチ手稿に
書かれてある内容すべてを解き明かしたいと思った。
私は何とか自分でヴォイニッチ手稿の
解読を行おうと試みると共に、
この書物に書かれてある内容の
実験を行っていた。しかしだ!」
ベーコンは自分の体を貫いている
手を思い切り握りしめる。
バキバキという音が響き渡り、
羽山は雄叫びを上げてしまう。
「人間は自分たちの想定を超えた力に出会うと
それを異端ものだと恐怖し、遠ざけようとする。
何の検証もせず、ただやみくもに
『これは悪魔の所業だ』、
『魔女の仕業だ』といって差別をはじめる。
私もそんな人間の一人になったよ。
そのおかげで私は何十年も投獄され、
その分実験も解析もすることができなかった。
それがどれだけ愚かであり、
罪深いことであるかもわからずにな。
牢屋から出るころには、
すでに私は半死半生の状態だった。
どうせ老い先短い身だと思った私は、
投獄中に考えていたプランを
実行することにしたのだよ。
自分の体を植物にし、
次々と別の植物人間へと
魂を移す実験をね」
「……あんた、やっぱり狂ってるのね」
「狂っているのはどっちだ!
人類がもっと早く技術革新できた可能性を
あいつらは自ら潰したのだぞ!
私の実験は何とか成功し、
こうして植物人間として
再び生をうけることになった。
そして、長年の転生生活を続けることで、
私に奇跡が起こった。
それが『ヤドリギ』に含まれる
エノクのDNAとの出会いだ」




