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転生天使エノク  作者: 藤咲流
14/23

第14話・変革~ベーコン視点~

一ヶ月後、繭を元に発生した


世界樹はみるみるうちに大きくなり、


町一つ程度の大きさにまで育った。


世界樹は巨大化だけに止まらず、


同じような紫色の木が日本の


あらゆる場所で発生した。


不気味な木々の出現に戸惑う日本だが、


さらに木々の出現した地域を中心に


突如として植物人間が現れ始めた。


日本は簡単にパニックに陥り、


「未曽有のパンデミック発生」として


世界中にも知れ渡ることになった。


日本政府は世界樹に派遣隊を送るも、


そのすべての人間が木に取り込まれてしまった。


そして、世界樹に与えた栄養素だけ


新しい紫色の木々が発生し、


さらに日本に植物人間が増える事態を招いた。


世界樹はみるみるうちに成長し、


人類滅亡の危機へ誘う「死の大木」


として報道されるようになった。


この事態に何もできなかった日本政府は


不測の事態にも関わらず責任を問われ、


昏迷を極める状態なのに


国民は怒りのデモ活動や


暴動行為を取り始めた。


哀れだ、八〇〇年前から


人類はまるで成長していない。


私は絶望しなかった。


やはり、こんな人類は


滅んでしまったほうがいい。


私の800年前からの


疑惑が確信に変わり、


心底そう思っていた。


「ベーコン殿、聞いておられるのか」


私は用意していた屋敷に


生活空間を移していたが、


そこにまで保身しか考えていない


大臣が土足で上がり込んでいた。


核攻撃による効果や


生物兵器使用の必要性と


まったく無意味で生産性のない


言葉ばかりを並べている。


そんなものを使い、


周辺住民やその後の生活について


こやつらは何も考えていないのだろうか。


エノクからかすめ取った少しばかりの遺産を使い、


ここまで文明を発展させたというのに、


その時間を巻き戻すつもりなのだろうか。


私は呆れ、目の前の脂肪の塊を


見ているだけで吐き気がしてくる。


「あなたのお名前……。すみません、


ちょっと思い出せませんが。


さっきから何をおっしゃっているのでしょうか?」


「お前こそ、何を言っているのだ!


先ほどからこちらが建設的に話そうとしているのに、


全く聞く耳を持たずに


ぼうっと突っ立っているばりではないか!


そもそも、君があのヤドリギによって


緑皮病を治せるというから、


わしらはお金を何とか作り上げて


研究費用に回しあというのに。


結局は何の訳にも立っておらんではないか。


どれだけの資金を投資したと思っておるのだ。


君にも責任がー」


「ごちゃごちゃとうるさい」


いい加減聞くに堪えなくなり、


私は彼の前で変身を解いて見せた。


私の姿を見た彼は狼狽し、


先ほどまでの威勢など


微塵も無くなってしまう。


復讐のため、私は植物人間になり、


まずは政財界の人間たちが


喜びそうな長寿の薬を作ってやった。


資金を得た後、私はエノクを復活させるために


「ヤドリギ」の開発に注力した。


私を熱狂させた「ヴォイニッチ手稿」を書いたエノク人。


そのエノクの技術に恐れおののき、全滅させた愚かな人類。


「もう、お前たちのような人間のリアクションも見飽きたわ」


私はツルを出し、目の前に男の脳天を一突きする。


何とも容易い。


復讐とは、もっと体全身が


震えるほどの快感だと思っていた。


しかし、ただ悲しいだけだ。


これからこの世界は、


こんな悲しさだけが漂うのだろうか。

「悲しいなぁ」


そう言いながらも、


私は大臣の皮膚を被り


自分の身体に溶け合わせていく。


馴染んで皮膚を変質させ、


一度大臣の顔に変わってみる。


鏡でチェックするも、


やはり少しやせて見えてしまう。


「普段はこちらのほうが都合いいか」


私はロベルト・ベーコンと呼ばれた


医師の顔に皮膚を変質させる。


この顔も見納めになることを祈り、


私は自室を後にした。

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