謎の地下室
卓人はさっそく仕事を探すため、求人票を見ていた。エルが持ってきてくれた。
「どれも微妙だなあ」
卓人は取り合えずコンビニのバイトでもと思ったが、もちろんこの世界にそんなものは存在しない。
「土木作業多すぎだろ、半分くらいそれじゃねえか。あとは飲食店とかのバイトが多いなあ...てか求人少ねぇ…」
エルさん曰く、外に並ぶ店のほとんどが個人経営で、基本バイトは雇っておらず、1人、もしくは家族で店を回してる場合が多いらしい。デパートやスーパーといった大きい店はここらへんにはない。
「はぁ、土木作業やるしかねえかな」
全ての求人を眺める限り、土木作業が一番給料がいい。卓人もスポーツマンだ。体力には自信があるし、これしかないと思った。
「……?なんだこれ」
求人票をエルに返そうと立ち上がった時、卓人は、自分の左手首についているものに気付いた。
「なんだこれ、輪っか?輪ゴムか?」
卓人の左手首に、瑠璃色のアクセサリーのようなものがついていた。
「いつの間に…表で寝てた時に、誰かにつけられたのか?……なんだこれ、かてえし、とれねえ!」
瑠璃色のアクセサリーのようなものは金属でできており、かなり固く、そして手から外れない。
「なんだ、ホントに外れねえ、びくともしない、どうなってんだ!?」
引っ張っても、壁にたたきつけても、腕を振り回しても、それはビクとも動かない。まるで”体の一部”にでもなったかのように。
「取れねえ、何だ、手首に完全にくっついてる、びくとも動かねえ……!」
「卓人さん、何かいい仕事ありました?
卓人が喚いていると、ドアからエルが入って来た。
「あ、エルさん。なんか腕に青い輪っかみたいなのがついてるんだけどさ、全然取れなくて……」
「青っぽい輪っか……?」
「ほらこれだよ」
「何ですk……え!?」
卓人の左腕の瑠璃色の輪っかを見た瞬間、エルは驚愕する。
「た、卓人さん、これって」
「なんか知ってるのか?」
「ま、まさか、でも」
エルは目の前の出来事に信じられないといった顔になる。
「卓人さん、ちょっといいですか?」
「う、うん」
エルはタクトの手を引き、部屋を出た。
「エルさん、どこ行くんだよ」
「卓人さん、その輪っか、何をやっても取れないんですよね」
「うん、まるで体の一部にでもなったみたいに……」
「やっぱり……ちょっと試していいですか?」
エルは卓人の左手首の輪っかを外そうと引っ張るが、やはりビクとも動かない。
「やっぱり、取れないんですね…卓人さん、ちょっとこっち来てください」
エルは卓人の手を引きある場所へ向かう。そこは、
「エルさんの部屋?」
エルは、自らの部屋に卓人をいれた。
壁には「Nittaku」と書いてあるウェアが引っかかってあった。
「ニッタク……?なんか聞いた事あるような」
エルはタンスに手をかける。タンスは横1メートルくらいの大きさだろうか。タンスが置いている場所の床2メートルほど、高さが低くなっていた。
エルはタンスを横に押しずらすと、
「地下室!?」
「はい」
階段が現れた。
卓人とエルはその階段を下り、そして扉を開くと、そこに広がっていたのは、
「お、おい、これって」
青い、長方形のテーブル。その真ん中にはネットがついている。
周辺には、木の板のようなものに、表面に赤色、裏面に黒色のラバーが張ってあるもの。そして、「Nittaku」と書いてある箱があり、開けてみると、大量のピンポン玉が入っていた。ざっと50個くらいはありそうだ。
「卓人さん、私と卓球してください!」
ラケットを持ち、エルはそう宣言した。
異世界言語や文字などは、主人公に覚えさせると言った過程がめんどくさいんで全部日本語にしました。ご都合主義です。