動き始めるなにか
「あはは…覚えて…ないかな?」
少しだけ傷ついたように彼は聞く。
というかさぁ、考えてわからないかなぁ?まず絵梨乃が私を「舞華」と呼んだこと、あなたに「何かご用ですか?」と聞いたこと。
考えなしなのかな。あなたや私のことを絵梨乃に知られたくないって。
この世界で生きているってこと。
「舞華?今日、私はずそうか?」
絵梨乃が心配そうに聞く。やっぱり優しいなぁ、絵梨乃は。
「大丈夫。続きやろ?」
と言おうとして口を開いた瞬間、彼が
「お願いします。今日は外してください」
と彼がいった。
思わず本気で彼をにらんでしまったけど私は悪くないはず。
「いいよ、えりのん。続きやろ。」
「えっと…」
あはは、絵梨乃のこと困らせちゃった。
「いいから!」
ごめんね、絵梨乃。
強気に私がいうと彼がまた
「お願いです。今日一日だけでいいですから…」
「いやだ。まず第一、私この人知らない。」
あーもう!その本当に傷ついたみたいな顔やめてほしい。
「舞華ぁ。とりあえずさ、今日だけ話してみたら?本当に知らない人ではないでしょ?
もしも、不安ならすぐに連絡くれればいいから。
この人、全然引きそうにないよ」
それもそうかな。大きな声を出したせいで司書さんがこっちを見てる。
「もう4時だし、そんな時間もないから。ね?舞華」
「………わかった…」
「じゃあ、私ははずしますけど分かってますよね?舞華に変なことしたら、ただじゃすまないと思ってくださいね。」
絵梨乃に助けられてばっかりだ。
ただ、変なことをされる心配はないだろう。
彼も、それなりの身分だ。
「じゃあね、舞華。
何かあったらすぐに連絡ちょうだいね」
そういいながら絵梨乃は立ち去っていった。