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動き始めるなにか
---カリカリカリ---
---パサパサ---
絵梨乃も私も集中力がとてもすごくて
今はシャーペンを走らせる音と紙をめくる音しか聞こえてこない。
たぶん絵梨乃も気づいてなかった。
コツコツと私たちに近づく足音に。
---カツカツカツ---
---カツっ---
探してるところが全然見当たらないらしく新しい本をさがしにいこうとした絵梨乃が驚いて固まった。
「うわっ!焦った」
けど私はまだ集中してて気づかなかった。
「えっと…?舞華の知り合いですか?」
突然私の名前があげられて、私は驚いて顔をあげた。
人間って本当に驚いたときには関係ないことを考えるらしい。
さっきの足音の人かぁ。っというか足音から女性かと思ったんだけどなぁ。長年の勘というヤツもついに衰えたかぁ。
「…久しぶりだね」
半ば無理矢理に関係のないことを考えてた私を無理矢理呼び覚ますその声。
大好きだったあの声とは少し違って聞こえる。
まぁ、四年もたてば声も変わるものなのだろう…
「えっと、舞華?」
「えっ、あぁ」
絵梨乃の声でやっと彼の顔を見る。
「何か、私にご用でも?…」