彼女の世界
「ん~ふ♥おいひぃ」
モグモグ。ぱくっ。モグモグ。ゴクン。
「あんた、相変わらずよく食べるわね。」
「うまいもんは別腹~。なんちって!
ねぇねぇ、えりのん もう一個頼んじゃダメ?」
「はぁ!?良い訳ないじゃない!なんだかんだでもう7個目よ!?」
そうです。いまは前回のテストのごほうびのドーナッツをおごってもらってる真っ最中です。
うん。おいひぃ♥
「そーいえば、あんたさ4年前に転校してきたときにはじめてドーナッツ食べたのよね?
驚いたわ私。今どき高校生にもなってドーナッツ食べたことない人なんて始めてみたわ」
「しょうがないじゃん?」
口の周りのシュガーパウダを舐めながら私は言った
「食べる機会がなかったのよ。」
すると、絵梨乃は言いにくそうだけど、興味深そうに聞いてきた。
「あのさぁ、前から聞きたかったことがあるんだけど…もう結構な付き合いになるから別に聞いても大丈夫?」
「んーふ。どうぞ?」
私はキョトンと首をかしげながら聞く。
まぁ、聞きたい内容なんて何となくわかるけど
「あんた、別に育ちが悪かった訳じゃないよね?なのに出会いたての頃、世間を知らなさすぎた。
けどさ、テーブルマナーとか完璧じゃん?
あんた、両親も家族もいなくていきなり一人できたけど どうして? 」
あーあ。やっぱりか、まぁいつか聞かれるとは思ってたけどさ
少しだけためてから口を開いた。
「えー?やっぱり な・い・しょ♥」
ガクッ!かんぜんに絵梨乃が落胆したのがわかる。
可愛いなぁ、その反応。
「ぁあ!?もういいわよ!あんなに聞いた私がバカだったわ」
「そうだねー。ばかだねー。」
「挙げ句 棒読みかよ!!」
ごめんね、えりのん。これだけは言えない
忘れたい過去っていうやつかな?
胸が裂けても言えない
「まぁ、いいわよ。無理には聞かないわ」
やっぱり えりのんは優しいなぁ。私の気持ちを優先してくれる。
彼たちもそうだった。