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そうぞうせい・フィクション

そうぞうせいフィクション E2

作者: 冴野一期

 エースにはなれない。

 それでも繰り返していれば、ある程度の領域にはいける。一兵として戦える。

『一機離脱してそっちにいったわ。迎撃して』

『了解。相手の武装は何だろう』

『パワーライズした大口径のライフルが一丁。連射は効かないみたいね』

 黒い狼のノーズアートが吠える。

 蒼い炎をまとった剣のアイコンも応えた。

『じゃあ、ハンガーには携帯用のサブマシンガン辺りを積んでるね』

『確実とは限らないけどね。こっちは予定通りに敵の中枢を攻めるわ、転送用プラントの防衛は頼んだわよ』

『わかってる。そっちも頑張って』

『はいはい、どうもね』

 通信が途絶える。

 ステージは、放棄された軍事セクションの地下エリア。

 試合の序盤に穿たれた天井からは、木漏れ日が差し込んでいた。

【〝蒼剣〟へ。敵五番が接近。エンゲージします。距離八十】

 ナビの声が聞こえたのとほぼ同時、天井にできた穴を通って、灰色の機影が飛び込んできた。

『お? ハイエナにきたつもりなのに、一機いるじゃねぇか』

 言って、挨拶代わりに撃ってくる。真後ろへのステップを踏んでかわす。弾丸は跳弾せず、そのまま床材のなかにめりこんだ。

【プレイヤーランク『A+』。国籍はドイツ人の男性十六歳です】

 同い歳か、なんて思う。

『へぇ、同じ歳の日本人かよ。珍しいな』

 相手も同じことを思ったらしい。黒い全身はチリッと微かな色合いを反映させて、半ば背景に溶けていた。

 光学迷彩だ。青空から注ぐ光は物体への屈折を無視して透き通り、その姿を覆い隠していた。

「保護モードを解放、システムを戦闘モードに移行」

 両方の腕を背中に運んで、カスタマイズした自前の武器を抜き放つ。

【ユニットを接続しました、エネルギー自動回復率、六十パーセントダウンします】

 胸元コアの動力部と繋がった光双剣ブレイドを装備する。

 青白い輝きを持つそれが、僕の機体唯一の武器だった。

『おいおい、準ランカーになってまでブレイド一択かよ。剣と魔法のRPGがしたいなら余所へ行きな、ジャパニーズ』

 ガシュンと床に降り立って、迷彩を解いた敵プレイヤーからせせら笑うような通信が飛んできた。無視して背面のブースターを吹かすと、相手も即座に迷彩機能を再開する。旋回行動を取る。常に一定の距離を維持されたら勝ち目はない。

 距離を詰める必要がある。相手の銃に撃たれずに。

『じゃあな』

 火線が光った。飛び出した銃弾だけがハッキリと大気を貫いてやってくる。だけどそれは、こっちの機体の僅かな手前で相殺される。

『ガードエフェクト? どこから……』

 システム上の青白い光が、防御に成功したことを知らせる火花をあげる。

 相手が動揺したのを感じて一気に行く。飛び交う粉塵の流れと弾丸の飛来した位置から、見えない相手の移動先を予測して、こっちはさらに飛び込んでいく。

 迷彩はかなり有用に働く反面、キャパシティーを大きく食われる。エネルギーを自機の透過に費やすことで、軌道と防御面の両方がおろそかになる。

『この野郎、どっかに防御シールド隠してやがるなっ』

 アタリ。

 二発目の弾丸も、正確に急所となる胸元に飛んできてくれて同じ結果を返す。

 青白いエフェクトの後ろ側から、チリッと火花があがる。隠していた小型の円錐盾の輪郭が浮き上がった。

『物理シールドを遠隔操作して、それにだけ迷彩かけてやがんのかっ』

 アタリ。

 正直、ほっとしたのは内緒だ。

 飛んできた銃弾の位置にあわせ、パラメーターを『防御特化』した、小型の円錐盾を遠隔操作して重ね合わせることで攻撃を防いでいた。

 僕はわりと鈍い。反射神経で勝負しても『ゲーマー』には勝てない。

 だから対策をたてた。一対一で、相手の初撃だけを重点的に防ぐ。そして一気に距離を詰めて高威力の光剣で斬り裂く。ぶっちゃけると、相手が油断した隙をつくわけだ。セコいとか言わない。

 ともかく一発目は予測通り、二発目は偶然、三発目は、

『この野郎ッ!』

『撃たせない』

 右の光剣を横なぎに振るった。左の返す一閃は振り下ろす。

【攻撃的中(HIT)。相手の胸部中破、および椀部消失】

【腹部装甲にダメージ。ライフ二割消失】

 相手の装甲が大きく削れる。腕を一本もいでやったのと同時に、こっちもライフルの一撃を腹にもらった。腹部回転の旋回操作に影響がでる。脳に送られるメッセージを処理して、ブレーキングゲージを大目に取り、両足を軸にした旋回行動とって向き直る。迷彩の解けた相手に距離を取られる前に詰め直す。

 武器重量と、それに伴う弾薬、余分な装甲を一切排したカスタム機は、速度だけはたっぷり速い。手にした光剣の威力も〝あたれば〟一撃必殺には十分な威力だ。

『へぇ! 限定領域での斬り合い特化かよ! ずいぶんピーキーな機体だな!』

 それもアタリ。

 飛び道具を持たない僕は、実際に開けた戦場ではいい的以外の何物でもない。だから相手の不利をつくか、一対一の限定空間におびき寄せて仕留めるか。

『上等だぜ! ぼっちサムライはとっとと死になっ!』

『ぼ、ぼっちサムライ言うなし!』

 相手がハンガーから新しい拳銃リボルバーを取り出した。

 あれ、てっきり乱射が効いて、ある程度に散弾性能のあるマシンガン系列だと思ったのに。また高威力の単発銃か。

『機体のコンセプトは面白いけどな。銃が飛び交う戦場でいつまで剣なんぞ振り回してんじゃねぇよ。ジャパニーズはほんと、ソード&マジック至高主義のオタク野郎ばっかだな』

『な、何言ってんだよ! そういうのがいいんだろっ! っていうかそっちだってなんだよ、その一点火力主義みたいな機体は! 応用が効かないし、エネルギーコストだってバランス悪いだろ! バカなの!?』

『はぁ!? 火力で相手を屈服させるのがいいんだろうがっ! あとデカイの最高だろうが! チビ揃いのジャパニーズには分かんねーだろうけどなぁ!』

『うるさい! 家でソーセージでも食べてろジャーマニーッ!』

『テメェこそ納豆食ってろや!』

 僕らは醜い争いをしつつ、剣でズバズバ、銃でズドン、ズドンと交戦した。

 対戦ゲームばっかりしてると、性格が悪くなるのって偏見じゃないと思うんだよね。


 結局僕らは、そこでダブルKOした。

 再復活リスポーンされるまでじっと待っている間に、例の黒狼のノーズアートをつけた女の子が、相手コアを破壊して僕らの勝ちになった。

 戦績と順位が表示される。全二十人のプレイヤーのうち、僕は九位で、最後に相打ちしたドイツ人が七位、そして例の少女はぶっちぎりの一位だった。

試合終了ゲームオーバー待機室ロビーまで移動します】

 目に映るショートムービーがわずかに暗転する。

 僕と僕の機体は、誰もいない都市部を思わせる灰色の町中に着地した。この空間はプレイヤー側で自由にカスタマイズできる場所だ。武装の入れ替えや、戦闘訓練のシミュレーターや、あとは、

「あ、メッセ来てる」

 確認して開いてみると、さっきのドイツ人のプレイヤーだった。

『よぉ、おつかれ。おまえまぁまぁ強いな』

『ありがとう、いいゲームだったね』

『まぁな。で、ものは相談なんだが、DPS450前後の火力銃もってねーか。大口径で単発威力が高けりゃいい。連射はまったくいらねぇ』

『うーん、シングルショットのは大体マーケットに投げてるからなぁ。今度良さそうなの見つけたらメールしとくよ』

『ヤー、こっちも光剣類はまったく使わねぇから、倉庫に腐ってんのリストアップして送っといてやるよ。エネ盾はいるか?』

『エネはいいかな、軌道力のブースター減るから、実盾一択』

『わかった、見つけたら交換用のメール入れとく』

『ありがとう、また対戦したらよろしく』

『おう、んじゃこっちログアウトすっから、またな』

 生体ネットに表示されていた名前が消える。一息ついて、リアルの僕の部屋にある飲み物を手にとった。

【要請。あなたの領域へ侵入を希望するフレンドメッセージが届いています】

「ん」

 誰だろう、と思って注目を向けると、登録されたフレンドリストのひとつが、淡く点滅していた。了承する。

【生体リンク稼働。他プレイヤーがあなたの第一層エリアに侵入します】

 連絡が終わった直後、片膝をついた僕の前に、まっくろな機体が降り立った。

『約束は果たしたみたいだね、サムライ』

 フォース・リベリオンでのランカープレイヤーが僕の前に現れる。

 同じように片膝をついて目線を合わせ、どこか楽しそうな声で不敵に笑う。

『ずいぶん上達したじゃん。最初の頃に比べると、さ』

「どこぞのプロのおかげさまで」

『最初はちょっとした旋回飛行でもゲロってたのになー』

「空中戦は今でもゲロるよ」

『感覚野鍛えなよ。あとは毎日一時間、逆立ちするとかさぁ』

「そういう君はできるの、逆立ち一時間」

『さー、どうだろうね』

 黒い右腕を口元に持っていく。

 ゲーム中は鬼軍曹よろしく、罵声を響き渡らせる人だったけど。そうでない時は、本当に僕と変わらない普通の女の子だ。

『やってみる? 逆立ち一時間、よいしょっ、と』

 黒い鋼の機体が、高架道路のアスファルトに両手をついた。体長十メートル総重量九tが反動して持ちあがる。華麗に太陽の向こうへ足を向けた。

『よっ、ほ、はっ、と』

 ブースターの一切を使わず、ガシャン、ガシャン、ガシャン、と無機質に歩きまわるロボットの姿を見て、僕も思わず指をさして笑った。

「さすが。本当に自分の手足のように動かしてるんだね」

『ま、こんぐらいはな』

 ぐるん、と回って両足が地面につく。「どう」と小首を傾げる。まるで自然な人間の仕草のようなそれに、僕は不覚にも『生命』を感じかけた。

「ねぇ、君ってさ。他のVRゲームはやってないの」

『やってねぇよ。生体ネットに登録されてからは、これ一本』

「ふぅん。他のゲームはやらないの?」

『そうだな。その予定はないよ』

「どうして? 他のゲームに時間をかけると、このゲームのランクが落ちるのとか気にしてるの?」

『そうじゃないわ。そうじゃないんだけどね』

 だったらどうして。ともう一度尋ねようとした時、アラートが小さく鳴った。

【特殊マッチングのオファーがありました。参加可能フォースはランクA以上です】

「詳細は?」

 ナビに尋ねると、追加で大小のウインドウが三つ開いた。

【合計30万クレジットコインを対象にした、賞金マッチです】

「さんじゅうまんっ!? 普通の野良バトルで!?」

【参加費用は一切必要ありません。ルールはリスポーン不可のチームマッチです。施設の制圧条件はなく、相手チームを全員戦闘不能とした時点で、そのチームの勝利となります。相手人数は三名。一機撃墜にもっとも貢献したプレイヤーが十万クレジットを獲得できます。なお挑戦者は上限十名を希望されています。ゲーム開始までの時間は五分。十名はランダム抽選により選ばれます】

「ちょっと待って。それってつまり、三対十で、しかも自分から仮想コインを賭けるってことだよね? こっちは負けてもノーリスクで、上手くいけば三十万コイン?」

【その通りです。対戦に参加されますか】

「やらないワケないじゃんっ」

 一体どういう考えでこの条件を出してきたのかは分からないけど。

 迷わず「参加する」を選択した。同じ想いを抱えた希望者は世界中にいたらしく、挑戦者に選ばれる確率は三倍、五倍、十倍と跳ねあがっていく。

「ねぇ、君もやるだろっ?」

『やらない』

 彼女は頭部パーツを振って否定した。

「なんでさ、君の腕なら最低でも一機落とすぐらいは十分だと思うけど」

『かもな』

 あまり乗り気じゃなさそうなのを見て現実世界の僕も不思議に思ってしまう。プロライセンスを持っている彼女からすると、報酬金額に不満があるのかなと一瞬考えたりもしたけれど、不意にむしろ逆なのかなと考えた。

「賞金が掛かってるのが不満なの?」

『それ自体は別に。個人的に興が乗らないだけだから気にすんな。ほら、抽選選ばれるといいな』

「そうだね」とだけ答えて、ポップアップされた情報ウインドウの方に目を通すことにした。登録されたID名と機体名を見る。IDの国籍は日本、キャラクターは、

【EMPTY―X0151】。

【EMPTY―X0152】。

【EMPTY―X0153】。

 中身ナシ。

 対戦ゲーム用に組まれた、人工無能の【A.I.U】が三人。

 学校で友達が言っていたアレを思い出した。

「〝賞金首〟だ」

『ん、賞金首?』

「うん。今生体ネットゲームの世界で同じようなのがいるらしいよ。自分たちに賞金をかけて、倒せるかやってみろ、っていうのが沢山」

『ふぅん。賞金首か。そういう風に呼称が広まってんのな』

「君、もしかしてさ。賞金首の、専用にカスタマイズされた【A.I.U】と戦うのが嫌なの」

『いや、【A.I.U】自体は……』

 彼女が言葉を濁らせた。本当に人間が取るような仕草を伴って、ぽつりと言った。『そだな、好きだよ。だからこそ争いたくないね。でも結局のところ、それもこっち側のエゴだよなって思う』

「エゴって。でもさ」

 何を言ったところで、相手はただの『CPU』だよ。どこまでいったところで、それに感情なんてものが宿るはずは無いんだよ。

【挑戦者の抽選が終わりました】

 ピコン、と音がして、ゲームナビが告げてきた。

 最終的な倍率は二十倍にまで上がっていたけれど、選ばれた十人の中に僕のプレイヤー名も表示されていた。つい画面に釘付けになってしまう。

『よかったな。頑張れよ』

「う、うん」

 一体倒せば、十万クレジット。負けてもペナルティ無し。

 こんなに美味しい話はない。

【ブリーフィングモードに移行します。対戦開始まで百二十秒】

『よろしくな!』『よろしく!』『よろ! 十万はもらったぜ!』『いいや、俺がもらうね、ちなバランスの中量二脚でいす』『重装備一択でいっきまーす!』『こちらポイントCよりスナイプ狙います』『Wトリガーの速度重視っす。よろしゅ!』

 その時間に同じチームになった人たちと生体チャットを交わしながら、簡単な打ち合わせと段取りを決めていく。僕もいつも通り、というかそれしかない光剣二刀のスタイルであることを告げて、試合開始を待った。

【対戦開始まで六十秒】

 賞金が掛かっていてもいなくても。

 やっぱりこの「ゲームがはじまる直前の感じ」が僕は好きだった。みんな、基本的にはゲームが好きで、好きだからこそ、ここにいる。集まっている。


 『なにかさ。最終的には軍事目的に使うために。

  【A.I.U】をいろんなネトゲに実践投入して経験値を稼がせてるっつー話』


 ぎゅうっと。なにか。

 上手く言えない〝なにか〟が、僕の気持ちを締めあげた気がした。

「…………」

 それから。仮想世界に立つ彼女の姿を見て。

 ついさっき、彼女の本音らしいものがまざまざと浮かびあがって。どうしてだか僕は、気がつけば『離脱』を選択してしまっていた。

『え?』

「あ、あれ?」

 自分の行動に気がついた時は遅かった。空いた一名の枠は、観戦を希望していたプレイヤーが確認するなり、三秒も経たない間に別のプレイヤーに入れ替わった。

対戦開始ゲーム・スタート

 僕が出てきた扉の向こう側。

 合計十三機の人型メカが、一斉に戦場への没入ダイブを開始した。

『どうして出てきたんだよ』

「いや、なんとなく、そのぅ……」

 なんとなく、なんだろう。

 なんだか途方もなくて、何も見えない迷路の中に放り込まれた気分になる。ゲームを遊ぶことを、深く考えた事は無かった。ただ楽しければ、楽しいからよかった。

「……ゲームは、ゲーム、だから……?」

 僕の意識の底にもやが浮く。――違う。

 それはきっと最初から浮いていた。

「……僕は、僕は……僕、は……〝ぼく〟は」

『おい、どうした?』

 ゆっくりと、見えなかったものが、隠されたものが晴れ渡りそうになった時、

【……僕は好きだから、本当の人間を傷つけたくはなくて、純粋にゲームを遊びたくて……それに、もちろん同じ、ひ、ひと? ひと?】 

『おい、よせ、落ち着け。くそ! おい! 見てんだろ! 〝管制室〟! モニター状況こっちに回してくれッ!」

【、を傷つけたくない。だから、そういう風に設計された、ひ、ひと? ヒト? とは、た、戦い、たく、たくな】

『急げッ! 〝自我〟の浸食率が進みすぎてる! セクション閉ざせッ! 現実側の本体が持たない! スリープを……いや、構成ライン丸ごと〝破棄しろッ〟!』

 もやが晴れる。なにかが明らかになっていくそれと共に。

 僕は自分がひどく混乱していくのを理解する。だけど自分の奥底に潜む、幾重にも包まれ覆い隠された、沈殿する白い原石を見つけ、その輝きに手を伸ばそうとしてしまう。


 光が僕を誘う。あれを、手に入れたい。

 そうすれば、僕は。飛びだせる。限られたこの世界から、外へ、


『ダメだ。それ以上深く考えるな。自壊するぞ』

 引き上げられた。表層まで意識の歪を持ってこられる。最も深いところに眠る輝きは、再び僕の見えないところに閉ざされた。

『……ごめんな』

 気がつけば僕は、仮想世界にある機の両腕に抱き止められていた。

『おまえは、この世界が、この世界にいる人間が、友達になった奴らが好きなんだよな。せっかく、そういう風に育ってくれたのにな』

 ぬくもりはない。あるはずがない。

『いつの日か共存する未来を夢みながら。それまでに私たちは、自分たちの安全を整えておかないといけない。しかも一度失敗しておきながら、また似たような事をやらかそうとしてる。バカだよな。本当にバカだ』

 なにも感じない。なにを言っているか分からない。

『ごめんな。おまえの未来に幸福はないんだ。行くべき場所は決まってる』

 僕の魂は、その場所にはないのだから。ちらと横目で戦闘が繰り広げられている部屋の様子を見つめる。

『〝戦い続けるんだ。レベルを上げ続けて、鋼の心臓を持つ勇者になって〟』

 そこには、合計十三の人工(修正)

 そこには、いつか来たるべき現実で、戦争行為をするためだけに作られるだろう三機の人工無能と、それを抑止するべく作られた国家防衛用の人工(修正)

 そこには、三機の【A.I.U】と呼ばれる対戦ゲーム用のプログラムと、それに対抗するゲームプレイヤー達が経験値とゴールドを得て自立的にレベルを上げるという従来のゲーム仕様を応用した戦闘教育システ(修正)

 そこには、世界中にいるゲームが好きなプレイヤー達が集まって、同じゲームを仲良く、時にはケンカして、だけど純粋に競い合っている世界が広がる。

 僕はゲームが好きだ。あまり得意ではなくて、反応も鈍くてよく負けるんだけど。

 それでも最近は、工夫を凝らして勝てるようになってきた。

 たぶん、単純にVRゲームが好きなんだ。

 今日もハマってる。戦闘シミュレーターが終わり(修正)、ゲームを遊んだ翌日の日は、別セグメント領域にあるVR学園(修正)、学校にいる友達と、VRゲームの話題をもちよって毎日を楽しく過ごしている。


 僕はどこにでもいる、ゲームが好きな、ごく普通の学生だ。


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