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紅い紅い景色

網膜に焼きついたあの紅い紅い色。

洞窟の奥の方で縮こまってっていた私にの耳に聞こえた大人の狼の悲痛な鳴き声。

今でも忘れない。忘れられない。



当時まだだいたい七才ぐらいだった私は必死に子供の狼たちを洞窟の奥から出ないように抑えてた。

今出ていけばきっと死ぬから。大人と子供の力の差はいやというほど知っていた。

大人の狼達が負けるような相手がいるのに私たちが出て行っても何もできずに死ぬだけだから。

それが正しかったのかは今を持ってもわからない。

私と子供たちが出て行って的が増えればその間に大人の狼たちが敵をしとめてたかもしれない。

その場合私たちの大半は死んでたかもしれないけど。

・・・・・・仮定の話をしてもしょうがないか。

戦闘音が収まり、(あか)がほとんど消えた森だった場所に出て行った私が見た、

血を流して横たわっていた大人の狼の死体。私を育ててくれた。それが死んでいた。

それだけが事実なのだから。


それを見た時私の視界は紅く染まった。まるで燃えていた森のように。

私の心は復讐心に染まっていた。

私の頭はどうすれば憎い人間を殺せるのかというのだけを考えていた、

私の体は復讐を果たすために動き始めていた。

私はもう止まらなかった。



正直そこからの記憶はあんまりない。

私の記憶は激情のあまり飛んでしまったのだ。

だけど断片的に思い出せる事から推測したことを話しておこう。


私はまず森にいた狼たちを集めた。これはチビたちに遠吠えして呼んでもらった。

それで集まってきた狼たちに私は作戦を説明した。

全ての狼たちは人間に怒っていたから作戦はあっさり了承された。

それから夜になるのを待った。

狼は夜目が効くのでその方が有利だから。

私は狼たちを三部隊に分けた。

一つは山で遠吠えをして人間の気を引いてもらう。

一つは山から人間の街にまっしぐらに降りていき攻める。

一つは山と反対側の森の方まで夜までに移動してもらって挟み撃ちにする。



手順も簡単。

遠吠えをして山の方に人間の気を引き付けてるうちに反対側の森から人間の街を強襲。

奇襲できるだけ奇襲して人間が対応しだしたら森に逃げ込む。

それで追ってこればよし。森の中で分断して各個撃破。

追ってこなくても引き上げて山とは反対側の森に注意を寄せる。

そして山の注意がそれてるうちに山の方から狼達がまっしぐらに人間の街を襲う。

そうして山に注意がいったら反対側の森から、反対側の森に注意がいったら山から、

というように人間を殺すというものだった。


私は遠吠えする狼たちのところで待機。

人間の様子を見て攻めるか引くかを狼の遠吠えを通して他の部隊に伝えさせる役目。

計画は完璧だった。


人間はロクに反応もできずに町を蹂躙されていった。

この事は【六時間の悪夢】としてこの町の人間の記憶に深く残ることになる。

それ以降ギルドによりこの山は不可侵と決まった。

結果的にうまく言ったけど私はこの事を反省している。

あの【六時間の悪夢】が成功したからよかったもののどこか失敗していたら、

山にいる狼たちは危険だという認識になり日本の様に狼を狩りつくすといったこともあったかもしれないのだ。

でも私は後悔していない。あれは私の両親の弔い合戦だったのだから。


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