魔眼?
十一月三日、誤字修正
「なあサクラ、俺を一発殴ってみてくれないか?」
「なんですか?被虐趣味にでも目覚めましたか?
ドン引きですのでこれ以降は半径一メートル以内に近づかないでください。」
「いや、目覚めてないって。
その一メートルっていうところにそこはかとないリアリティーを感じるからやめて。」
「はあ、まあなんでそんなこと言ったのかはわかりますがさっきの事は夢ではありませんよ。
目の前で見たでしょうに。」
サクラが呆れたような目で見てくるけど・・・。
「でもなあ・・・・あれだぞ、あれ。」
「ええ、そうですね。確かに信じがたいことですが事実です。
思考放棄はまた今度にして今は現実的なことを考えましょう。」
何処までも冷静なサクラ、けどその声にも驚愕の色合いが混ざっているよね。
「・・・・・ところでさあ、あのメイドって人間?」
メイドが胸に手を突っ込んでから予想に反して悲鳴はなかった。
「カヒュ」というような空気がもれるような音だけだった。
それからメイドは何事もなかったかのように突っ込んだ手を体内でごそごそ、
いやにちゃにちゃと動かしていた。しかも表情も変えずに。
当然傷口からはどばどばと血が出ていた。
それからちょっとしてメイドは突っ込んでいた手を抜いた。
その手にはまだ動いてる心臓が握られていた。
そして俺たちに問うた。
「これどうします?」
もうその時には血はほぼ出ていなかった。
「なあ、俺たちにはこの国で起きたことすべてを報告する義務ってあったよな。」
「ええ、ありましたね。」
「あれってどう説明するよ。信じられないんじゃね?」
多分俺が言われても信じないだろうし。
心臓抜いた後普通に歩いて家の方に戻ってったし。
夏の怪談で話されそうな話だ。
「どうと言われてもありのまま説明するしかないでしょう。それとも隠しますか?
騎士団長であるあなたが殺されそうになったことを。」
「うっ、確かにまずいな。でもよくて幻術、悪くて頭を疑われるぞ。」
「でも言うしかないでしょう。」
「はあ、憂鬱だ。」
「そういえばなぜあのメイドが団長を殺そうとしたのかはなぞのままですね。」
あー、聞くの忘れてた。
「まあ、あとでいいだろ。今はもう何もする気にならん。もう俺を殺す気はなさそうだったし。」
「それはなにか判断の根拠があってのものですか?」
「根拠か、あるぞ。感だ。」
「・・・・・・団長の感はそれなりに当たりますよね。」
「ああ、かなりあたるな。」
「・・・・・」
「・・・・・」
「それにしてもあの眼は強烈だったなあ。」
「話そらしましたね、まあいいですけど。それで殺されそうになった時に見たメイドの眼ですか?
・・・・・・・・やはり被虐趣味に目覚めて。」
「いや、違うから。もう食われるって感じですごくてさ。あの赤く光った眼が。」
「・・・・・団長、それ魔眼の一種じゃないですか?」
「・・・・・可能性はあるな。」
「副長に見てもらいに行きましょう。」




