バトルジャンキーではないんよ
手合わせを受けたのには理由がある。
この頃疑問に思ってたことがあるのだ。私の体はほんとに低スペックなのかと。
他の狼たちの身体能力を見て私の体は低スペックだと思っていたけど、
この頃他のメイドの動きを見てると私の方が圧倒的に強いと分かったのだ。
もちろん一応お嬢様のメイド兼護衛というよりかは護衛兼メイドということで雇われたからには私は一般人よりかは強いと思ってたけど一般人であるメイドと比べたら隔絶に差があるのだ。
つまりこういう事だ。
もしかすると私はすごく強いのじゃないかと。
こっちの世界に連れてきた神が私に何にも加護もチートも与えてないっていうから私は一般人に毛が生えた程度だと思い込んでたんだ。
それに狼たちのスペックが半端なかったし。
ああ、けど狼達と一緒にいたのは幼い時の事だし大きくなってからはチビたちとも狩りに行ったりとかしなくなったからなあ。
昔と比べて強くなってるしもしかしたら今なら育ったチビたちに追いつけるかも。
まあ、さすがにそれはないか。狼と人間だったら狼の方が断然早いに決まってるし。
閑話休題
というわけで騎士団長さんには私の強さを図るために相手になってもらおうっていう事。
私がもし強かっても公爵家の娘つきのメイドだから騎士団に入れとかめんどくさいことにはならないし、
弱くても相手が言い出したことだし別に何のデメリットもない。
相手は騎士団長だから負けても護衛を首になるわけでもないし。
ちなみに組み手というのは体の単純なスペックを図りたかったのと、
前世で私が古武術をやっててそれがこっちでも通じるのか試してみたかったっていうのも。
ああ、ちなみに大きなけがをさせないっていうのはちょっとした骨折程度までってことだよ。
それぐらいならこっちでは治癒魔法をかけまくったら結構すぐに治るらしいし。
幸い私はまだこっちに来てから大きなけがを負ったことないから使ったことはないけど。
試合の時間は夕食の前に決まった。
騎士団長さんは旅してきたんだから少しでも休息を取ってもらうためだ。
騎士団長と戦って自分のスペックを図りたいのにその騎士団長が本来の力を出せない状況では意味がないから。
やるからには勝ちたいんだけどさてどうなるかな?
少しわくわくしてる。
道場でひたすら技を磨いて強者に挑み、それに打ち勝つ、もしくはそれに打ち勝とうとさらに努力する。
そんな時には体の芯から熱が湧き上がってきたものだ。
けどどこかそれに乗りきれないでいる私がいる。
騎士団長が強者であるのは間違いない。
だけど騎士団長を見てると何か心にひっかかるものがある。
その違和感がこれから起こる試合への集中を妨げてる。
だめだ、集中しよう。
今は戦いの事のみを考えて違和感の事は試合が終わってから考えよう。