類友
「いいところでです。周りに自然がいっぱいあるし何よりきつい匂いがしない。
どう広まってるのかわからんが我々獣人を迎えるときは、
お香を焚くというルールとでも言うのかそういうものが人族の貴族の間に広まっててな。
迎えられている立場の物としてはそういう事は言いづらいからそのままってことに。
それに比べてこの家はそういう事がない。さすが公爵家です。持ってる情報量が違う。」
・・・・結局あの後あの応接室はメイドが結界で匂いが外に漏れないように封印して、
今使ってるのは別の応接室。
まあ公爵家だから別宅とはいえ応接室が一個だけってことはないからね。
それからお香を焚いて服や体に匂いが移ってしまっていたお母様はメイドの洗礼を受けました。
まあ私と違ってメイドも説明してたけど。
それにお母様は前世の記憶がある私と違って根っからの貴族だからね。
使用人に裸を見られてもあんまり恥ずかしくはないらしい。
なんか不公平。私だけあんな羞恥プレイを味わうなんて。
この年になって(体の年齢五歳)服を脱がされて体を洗われるなんて。
「・・・・ところでその人は誰ですか?」
おっといけないお客様の話を聞いてなかった。
話を聞いてなかったから誰の事かもわかんない。
「ああ、その侍女は娘つきのメイドですわ。
あの子がどうかしまして?家は恋愛相談所は設けておりませんよ。」
お母様が笑いながら答えてる。
お母様は冗談がほんとに好きだ。それに笑いのツボがたまに変だ。
普通にしゃべってるのに急に笑いだしたりしたときはびっくりする。
「ああ、いやそうじゃないです。
年頃の娘さんにこういうことを言うのもあれだけど後で手合わせできないかと。」
これはどう判断したらいいのかな?冗談と取るべきか、本気と取るべきか。
普通に考えたら冗談だと思うんだけどね。
だってこの人騎士団長だもん。
別に獣人連合とは仲が悪かったわけじゃないけど正式に国交を結んでなかったんだよね。
それで結ぶために騎士団長さんが来たんだけど獣人連合に帰る道のりに私の家があってね。
公爵家だから挨拶だけでもしていかないといけないと言う訳でうちに来たという経緯がある。
その騎士団長が一介のメイドに手合わせを願うななんて。
「そうね、あなたつきなのだからあなたが決めなさい。」
お母様、こっちに振らないでください。
冗談かホントか今迷ってるところなんですから。
しょうがない、奥の手だ。
「あなたはどうしたい?」
秘儀、たらいまわし。
メイドに丸投げだね。
さすがにこれはメイドも考え込んでるようだった。
いや、ていうか断る一択でしょ普通は。メイドのあんたが本職さんに勝てるわけないじゃない。
「お引き受けしましょう。」
えっ?
「おお、そうかそうか、それはありがたい。」
いや、あなたもそんな心底嬉しそうになんかしないの。
あなた本職でしょうに。メイドなんかに勝ってもうれしくないじゃない。
「ただし、体を動かすときの魔力の補助を含めるすべての魔力を使うことを禁止、武器も一切なしで、
それと大きなけがをさせない、という条件を飲んでいただけるのでしたら。」
いや、あんたもなんかガチで勝ちに行ってない?
勝っても何もないんだよ。
「うむむ、私から勝負を挑んでおいてなんだが一般の女性と組み手というのはどうかと思うのだが。」
「でしたらこの話はなかったことに。」
「いや、いや、受けさせていただく。いやあ、これは思わぬ楽しみが増えた。」
騎士団長はなんかすっごい喜んでる。
うちのメイドもおかしいけどこの客もおかしい。