お母様・・・
「お嬢様が香水をしてらしたのでそれを落としました。」
「なんでよ。」
新しい服に着替え終わってさっきの事についてメイドに問いただしたら何事もなかったかのような顔でこう返された。
いや、確かに私の体はまだ六歳だから裸をはずかしがるような歳でもないし、
見られて困るような体にもなってない。
それにまだ私の体だっていう実感は薄いけどそれでも恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ。
それに香水ぐらいつけてたっていいじゃん。
獣人の人は鼻がいいから体臭は気にしといたほうがいいって家庭教師の先生に習ったし。
「何がなんでなんですか?」
習ったんだけどこうも覚え違いだったかと不安になってくる。
「だから家庭教師の先生が獣人と会うときは体臭に気をつけなさいって。」
と言ったらメイドは勝手に納得したようだ。
「ああ、なるほど。」
「何がなるほどなのよ?」
「ええ、その先生の言っていたことは間違ってます。
確かに獣人は鼻がいいので体臭を気にした方がいいです。
ですが鼻がいいのでけど獣人は香水のにおいが苦手だそうですよ。
ですから香水のにおいを落としたのです。」
そういう事。それでお風呂に入れたのか。
水の塊につっこまれて全身丸洗いされたのがお風呂っていうのか疑問だけど。
「でも今も石鹸のにおいがついてるんだけど。」
結構良い匂いが体から漂ってる。
草木の良い匂い。
「それは植物由来の石鹸もどきなので大丈夫です。」
いや石鹸もどきって何よ。
植物由来は大丈夫ってことは日本で言う化学薬品系はだめってことね。
こっちではそんな感じの奴をなんていうんだろう?錬金薬品系?
というか植物由来は大丈夫ってことはあの薔薇のにおいの香水って薔薇から作ったんじゃなかったんだ。
なんかショック。
「それにしても殴るのはひどいんじゃない?」
息が急にできなくなってほんとに苦しかったんだから。
「お客様が来るのに間に合わせなければいけなかったので。」
うわ、言い訳すらしない。
私が雇い主の娘で私の一言で首にできるっていう立場を分かってないのか・・・・
いや、分かっててやってるかも。
客を出迎えるのに遅れるなんて公爵家がそんなことしたらこの国の恥だもんね。
そのためにしたことだったら許されるかも。
・・・・私は許さないけど。
まあいいや、明日の計画で思いっきり楽しもう。
それでチャラにしてあげる。
「納得いただけたなら早いところ客間に行きましょう。」
ふふふ、明日が楽しみ。
応接間に行くとお母様がお香をたいてた。このお香は植物由来の物なんだろう。
さすがお母様、分かってらっしゃる。
「奥様、何をなさってるんですか?」
「ああ、ちょうどいいところに。
もっと匂いを強くしたいんだけどどうしたらいいか知ってる?」
「一応聞きますけど獣人は強い匂いが好きじゃないって知ってます?」
「大丈夫よ。これ王都で流行ってるいいやつだから。」
・・・・・・私はメイドがあわてて換気をしようとしてるのを見ながら思った。
これ、私があんな思いまでして香水を落とした意味あるんだろうか?




