【秋の空】
夕暮れ時、僕の親戚が石の前に集まっている。
僕は小さいから何の石か判らない。
ただ、ただ、立派な石だった。
しばらくしたら『さあ、帰りましょうか』と、おばさんが言った。
だけど家とは反対方向へ向かうし、お父さんやお母さん、妹がそこにいなかった。
『パパたちはどこ?』
僕が聞くたび気まずそうな顔をする。
聞いてはいけないんだと子供ながらに思った。
近所の子が『お前は絶対腹違い〜』と、言っていたのを、今なんとなく思い出した。
僕の家族は、僕以外みんな仲が良いんだ。それは薄々感じていた。
だけどなんで石の前に集まっていたのか、なんで僕は、僕の家に帰れないのか判らずにいた。
徐々に大きくなるにつれ、僕の家族は僕を留守番させて、でかけたとき事故をおこしみんな死んだらしいことを聞いた。
僕は家族に優しくされた思い出がないから、正直のところそうなのだろうと思った。
僕は遠く離れたところに引っ越すはめになるようだ。
荷物も友達から貰ったプレゼントも置いていかないといけないらしい。
失望したが、僕は生きていくために受け入れなければいけなかった。
引っ越しという名の名義写しのみ行われた。
僕は谷村家の一員になったのだ。
大きくなり、おばさんが死んだとき、本当の父さんと母さんと妹が迎えに来た。
ああ、僕も死んだのかな。やっと父さんや母さん、妹に会える。愛されたことはないが、ようやく家族に会えた。そう思った。
母さんは泣きながら『ごめんねぇごめんねぇ』と泣きながら謝ってきた。
僕はなんの事か判らなかったが、話を聞き本当の家族の一員に戻れた。
おばさんと思っていた人も親戚だと思っていた人も、闇に生きる人で、おばさんと呼ばれていた人が僕を育て、麻薬を運ばせたり犯罪をさせる予定だったらしい。
組織とおばさんは完全に独立していておばさんが死んだとき、僕は助けられた。
父さんや母さんが冷たかったのは、僕のかってな被害妄想で妹の世話に手がかかっていたからだっただけらしい。
僕はやっとまっとうな生活に戻れるようだ。
(ちなみに立派な石は組織に属していた幹部が眠っている場所、そこで誓いをたてるルールになっていた。)
それは少し肌寒い秋の夕暮れの出来事だった。end