召喚者とクラスチェンジ
大声でわめき散らしていると、そこに背後から何やら人の気配が……。
「キミキミ!こんなとこで大声出して何やってるの?」
目の前には俺より若い警察官。一瞬で我に返る。スゲー恥ずかしい。
やべ、俺が召喚されないで警察官召喚しちゃったよ。
そりゃ駅前に交番あるのに大声出してたら普通来るわな。
誰かが交番に通報したのかもしれないし、警官自身が気が付いて見に来たのかもしれない。
「ごめんなさい、ごめんなさい」と平謝りしてその場を立ち去ろうとしたところ、
「ちょっといいかな。そのキミの持っているそれについて話を聞きたい。」
警官は俺の持っている役立たずなガラス玉を指さし、俺は交番に連行された。
「で、キミは落ちていた物を持ち去ったんだね」
俺は、警察官にガラス玉を拾ってネコババしたという罪で警察に尋問されていた。
いつもやっているGMの立場とは全く逆であった。
下手に弁解しても仕方ないのであったことをありのままに話した。
「昨日の夕方ベンチ横で紙袋を見つけたこと」
「電車が来ていたんで慌ててのって紙袋の存在を忘れていた」
「この駅に戻って来たら交番に届けようと思ってた」
最後のとこはいいわけで嘘だ。
この言い訳のせいで事態はさらに悪化した。
警官がこう切り出す。
「この駅に戻って来たらキミはなにしてたの?」
「えーと、公園のベンチ辺りでこの石を太陽に掲げて~」
「駅前に交番無かった?」
「えーと、有ったと思いましたけど忘れてて……」
「交番に届ける気無かったんだよね?」
「いや、えっと……」
「じゃ、故意に拾得物を横領したという事でいいね?」
「は、はい」
俺は遺失物等横領罪と言う罪に問われた。
普通の警官ならキツイ説教で済むところが、俺が運が悪かったのは「刑事志望で点数稼ぎたい盛りの新人警官」に当たってしまった事だ。
少しでも点数になりそうなら検挙する。そんな警官であった。
しばらくするとパトカーで警察署の方に移送されることになった。
パトカーは後部座席からはドアが開かず外に出られない作りで、マジ犯罪じゃ扱い。
警察署の取調室で交番で有ったやり取りとほぼ同じことをねちっこく聞かれた。
更に悪かったのはこのダイヤみたいな石は前日に詐欺に遭って被害届が出ていた2000万円の価値のある本当のダイヤであって、俺が拾ったのではなく詐欺して奪ったのでは?と拾った事自体怪しまれることになった。
取り調べは同じ質問を何度も何度もアリバイの証言を繰り返えさせて矛盾がないか調べるような感じで俺の弁明の場ではなく明らかに刑事告訴に向けた下準備をしているように思えた。
結局その日以降家には帰れずにそのまま拘置所に収監されることになった。
そんなこんなで一か月後、俺は刑事裁判に掛けられた。
無駄な出費を嫌い弁護士を付かなかったことと罪をすべて認めたこともあってスピード判決が出て、普通は有罪判決となっても執行猶予付くような微罪のはずがあの新人警官の頑張りで執行猶予無しの懲役3か月の有罪判決がでた。
逮捕から3か月後、俺はめでたく会社員から犯罪者へとクラスチェンジした。