転移石
どれぐらい寝ただろうか。
気が付くとなにやらかすかに声が聞こえる。
「………駅前……ベンチ……転移石…」
その声を聞くと同時に目覚まし時計がけたたましく鳴り叩き起こされた。
最近変な夢ばっかり見てるな……そんな事を考え寝ぼけた頭でボーっとテレビを眺めてると時刻は夕方で出社時刻に近づいていた。
時間が無いので手早くシャワーを浴びそして着替え家を出る。
家路を急ぐ学生や駅前スーパーで買い物して家路につく主婦と全く正反対の方向に向かう。
駅前のロータリーをふと見ると少し陰になったとこにベンチがあり、その横に白い小さな紙袋が落ちていた。
中身を見ようとしたが電車の時刻が迫っていたのでとりあえず拾うだけ拾ってカバンの中に放り込み電車に駆け込む。
電車に乗ると運よく席が空いていて座れた安堵感で紙袋の存在をすっかり忘れていた。
紙袋の存在を思い出したのは深夜2時の休憩のとき。
会社の最寄り駅のコンビニで買ってカバンの中に入れておいた夜食のパンと飲み物を取り出すときに思い出した。
「そういえばこんなもの拾ったんだっけな」
白い紙袋を空けてみると透明なキラキラ光る石が入っていた。
まるでダイヤだな。
夢の中で転移石って言ってたけどこれどうやって使うんだ?
その石をこすってみたり握ってみたりしたが、光ったり震えたり魔法陣が出るようなことは全くなかった。
なんなんだろうな……これ。
休憩中の同僚に見せてみるが、「なにこれ?ガラス玉?」と言われる始末。