お仕事クエスト 管理職の俺は超絶スキルで出世サバイバルを生き残る
仕事をテーマに短編小説を作ってみました。
良かったら読んでみて下さい。
俺の名前は司呉敏郎ぴっちぴちの38歳!
年収〇百万円後半くらい稼ぐ、THE独身貴族だ。
役職は係長。
主に商品開発を仕事にしている。
俺の職場はホワイト寄りのド・ブラックだ。
ブラックとは言っても別に残業代もでるし、福利厚生もしっかりしているので、世間一般的に言えばむしろホワイトだろう。
では何がブラックなのか…
それは…
AM6:50
俺の朝は出勤途中で買う、一杯の缶コーヒーからスタートする。
職場で頭をフル回転させるにはブラックが欠かせない。砂糖やミルクなんて甘ったれたモノは俺には不要なのだ。
朝の7時丁度に職場に到着する。
これはもはや習慣みたいなものだ。
社畜と笑うなら笑え!
そして今日もセキュリティカードを差し込んでオフィスに入る。
建屋が古いせいか、朝方のオフィスはかび臭い。
俺が気を利かせて窓を空けていたその時だった。
まだ朝の7:05だと言うのにオフィスの電話が鳴り響いた。
ここで俺の特殊スキルが早速発動した。
〈嫌な予感、ものすごーく嫌な予感〉発動!!
「まさか…奴なのか…」
俺は恐る恐る受話器をとって耳に当てる。
そして営業トーンで第一声を放った。
「はぃ!まごころ商事です」
するとわざとらしい咳払いが電話口に響いてきた。
「ゴホっゴホっ!す…すみません…」
間違いない奴だ。沢村だ。
沢村の特殊スキル〈仮病っぽいけど本当かもよ?〉がすでに発動しているだと!?
俺はノーマルスキル〈冷静沈着〉を即座に発動して対応する。
「あー沢村くんか、どうしたの?」
「あ、司呉係長。なんだか朝から…ゴホっゴホっ。咳が酷くって…」
ここまで話せば次の言葉は想像がつく。
俺の特殊スキル
〈サキヨミ〉が発動した。
次のセリフは…
『今日はお休みします』
ピンポンピンポン大正解!!
はーい、当たってました!
ちくしょうめ!!
俺はその時、ある事実に気づいてしまった。
そして沢村くんにこう聞いた。
「えっと…確か今日の夕方のプレゼン沢村くんだったよね?あれどうする?」
「…」
おや?咳払いがピタっと止まっている。
俺の自然発生スキル〈アナタの喉に狙いを決めて!ベンジョブロック!!〉でも発動したのだろうか?
「もしもし…沢村くん?大丈夫?」
「ゴホっゴホっ…だダメみたいです」
クソ!俺の自然発生スキルの効果が切れたか!!
ってか明らか嘘だよねー
さっき全く咳してなかったよねー
おかしーよね。
「…あ。沢村くん、ダメそうなのね」
「はい…」
「じゃ代わりにプレゼンするから、資料の保存先教えてもらえる?」
「…」
おや?まだ俺のスキル効果残ってるのか?
「…無いです」
は?無い?
無いとは何がだ?
「えっと…無いって言うのは…」
「資料…昨日、帰る前に作り終えたんです」
うんうん。そーだね。昨日一生懸命、黙々と作ってたの俺も観てるから知ってるよ。
「うん。それで?」
またここで俺の特殊スキルが発動する。
〈嫌な予感、ものすごーく嫌な予感〉発動した。
〈サキヨミ〉が発動した。
『保存し忘れてPC閉じちゃったかもしれません…』
ピンポンピンポン大正解!
大正解だよ!ちくしょうめ!
泣きてぇー。
〈冷静沈着〉発動。
「わかった。なら昨日の出来てるところまでの資料の、保存先教えてくれるかな?」
「それなら…〇〇」
俺は沢村の電話を切ると、早速そのフォルダーから資料を引っ張り出した。
俺は心底焦っている。
なぜならそのプレゼンの成功=会社の売上急増!!に直結するビッグプロジェクトだったからだ。
当然失敗すればゲームオーバーだ。
これまでのキャリアが一気に吹っ飛ぶ。
(かもしれない)
とにかく今は、沢村くんのパワポを探して、開いて内容を確認…と。
さてパワポを開いたぞ。
で、中身は…
うわ、綺麗な背景…トンネル抜けると雪景色!
って真っ白じゃねーか。
内容が無いよう!!
これは大ピンチだ!非常にマズイ!
ここで俺の特殊スキルが発動した。
〈ピンチはチャンスだ!〉発動。
〈こんな時…どんな顔したら良いか判らないの…笑えば良いと思うよ…〉発動。
俺は天を仰いで一人フハハハ…と笑ってしまった。
言い忘れたがこの会社の始業時間は8:00〜17:00だ。
7:30過ぎになると他の仲間が続々と出勤してくる。
「おはようございます」と硬い挨拶をしたのは、黙々と仕事をこなすミスターパーフェクト鳥飼くんだ。
「ちーす!」と軽い挨拶でオフィスに飛び込んできたのは、お調子者の椎名くんだ。
そして我らオフィスの紅一点、唯一の女性社員、黒山さんは…今日も遅いようだ。
8:00になった仕事の時間だ。
「皆さんおはよう!」とギリギリアウトで黒山さんが席に滑り込む。
こうして我われの仕事が始まった。
俺は早速、ミスターパーフェクト鳥飼くんに声をかける。
「おはよう。鳥飼くん」
「あ、はい…」
早速鳥飼くんの特殊スキル発動
〈引っ込み思案〉発動。
〈ATフィールド〉発動。
ならば!と俺もすかさず特殊スキル発動
〈ATフィールド〉発動。
俺の脳内にかの有名なBGMが響き、使徒のATフィールドを中和しながら…
「お、そのネクタイ新しいの買ったの?」
どうだ!いきなり仕事の話をする前のワンクッション・THE・コミュニケーション!
すると鳥飼くんがニタリと笑顔を見せた。
「あの。これ、この前も着けてます…」
失敗したぁぁぁ!!!
ここで俺の特殊スキル発動
〈リカバリー、そして…とにかくリカバリー〉発動。
「あ…ほら鳥飼くんっておしゃれ番長だからさ、いったい何本もってるのさ!
俺なんてコレと他1本しかないんだよー」
どうだ!鳥飼くん!今度はどうだ!
すると鳥飼くんがまたニタリと笑顔を見せた。
「実は…
やろうと思えば毎日だって変えられる程あったりします」
よっしゃ!!やったぜ俺!!
「えぇ?!そんなに持ってるなら、今度また違うの見せてよ!」
「はい!」
「あ、で、今日の仕事なんだけどさぁ…」
俺の特殊スキルがまた発動する。
〈話題変更〉発動。
そこまで言いかけてふと俺の頭に稲妻が走った。
ヤバい…今、鳥飼くんに別のプロジェクト任せてたんだった…
もう一人の俺が叫ぶ。
「もう鳥飼くんのHPはゼロよ!!」
すると鳥飼くんが俺に聞き返す。
「はい、今日の仕事ですか?」
鳥飼くんは立派だ。
もしかしたら立場が上の俺より立派かもしれない。
だって別のプロジェクトもそれなりにボリュームがあるのだ。
それなのに嫌な顔一つせずに応対するなんて…
あー俺は自分が恥ずかしい!
「あ、いや、確か今、△△のプロジェクト任せてたよね?」
「あ、はい。」
「進捗ってどうなってたかな…って」
すると鳥飼くんは申し訳なさそうに答える。
「すみません、まだまとめ切れて無くて、明日のプレゼンには間に合わせます」
しまったぁぁぁ!!鳥飼くんに謝らせてしまったぁぁぁ!!
プレッシャーかけたつもり無かったんだよー
は!これは…特殊スキル発動
〈上下関係による偶発的な威圧〉発動。
ごめんよーごめんな鳥飼くん。
こんな彼に突発の仕事は頼めないよなぁ。
「いや、なに…順調なら良いんだ。もし判らない事あったらいつでも聞いてくれ!」
俺はそう言うと鳥飼くんの席を離れた。
マズイ…俺がやるという手もあるが、午後はミーティングで完全に潰れる。
リードタイムが足りない。さて…どうしたものやら。
すると俺の視線の先に、鼻くそを今まさに穿ったばかりの椎名くんが写り込んだ。
椎名くんは恍惚な顔をしている。
よし!彼しかいない!!
俺はノーマルスキルを発動する。
〈即行動〉発動
スススっと俺は静かに近づくと、椎名くんに声をかけた。
「おはよう!」
「うお!」
突然声をかけたため、椎名くんの指先がズボっと鼻の奥に突き刺さった。
「ってぇ…」悶絶する椎名くん。
俺は半ば強引に話をする。
特殊スキル発動
〈強引だけど…半分は優しさでできている〉発動。
俺は自分のポケットティッシュを素早く取り出すと椎名くんに差し出して言う。
「あ、悪い。ティッシュ使う?」
「あ、貰います…あんがと。」
「ところで、椎名くんに一つ頼みたい事あるんだけど良いかな?」
「イイっすよ…なんすか?」
よっしゃ!偉い!偉いぞ椎名くん!
「今日の夕方に〇〇のプレゼンあるんだけどさ、その資料作り手伝って貰えないかな?」
ど…どうだ…
すると椎名くんが少し顔をしめながらこう言った。
「あー…沢村さんのアレか…まだ終わってなかったんだ」
「そうなんだ、それで資料作りを…」
俺が言いかけた時だった椎名くんの特殊スキルが発動した!
〈竹を割ったような性格してるんで〉発動。
〈気まぐれ〉発動。
〈好き嫌いははっきりしてます〉発動。
〈肩透かし〉発動。
「ごめん!それ俺っちにはムリあるわ!」
エエェェェ!!そりゃないぜぇ…切ないぜぇ…
俺の特殊スキル発動
〈冷静沈着〉
「難しいのか。今もってる仕事で手一杯って感じなのかな?」
「ま、そーすね」
しまった!椎名くんの性格を俺は知っていたではないか!
彼は自分に厳しいが他人にも厳しいタイプなのだ。
だから日頃からルーズな沢村さんの事を余り良く思っていなかったのだ!!
失敗だ。判断ミスだ。ヤバいどうしよう。もう後がない…
俺は意を決して黒山さんが座る席に近づく。
黒山さんは忙しいようだ。
こちらに背を向けて何やら手を動かしている。
近づくにつれ、何やらシンナーのような匂いが漂ってきた。
俺はワザと黒山さんの視界に入る位置に回り込むと声をかけた。
「黒山さん、おはよう!」
「あ!係長!おハロー」
黒山さんはネイリストでも目指しているかのように、机にネイルセットを並べて、爪にデコをしていた。
ここで俺の特殊スキル発動
〈ほめ殺し〉発動。
〈誘導〉発動。
「お?そのネイルかわいいね!」
「あ!判る?これ最近流行りのデザインなんだよ」
「そのネイル完成したら見せてよ!」
「良いよ!後で見せてあげる」
「で、その後で良いからさ、仕事一つ頼んで良いかな?後でメールで仕事内容は指示するからさ」
すると黒山さんのノーマルスキルが発動する。
〈深く考えない、つか考えるってなに?〉発動。
〈やってやれない事はない!大体はできる〉発動。
「良いよ!」
よっしゃ!黒山さんナイス返事!マジで神!
「よろしく!」
俺はやっと今日一番のピンチをくぐり抜けたのだった!!
…と思ったのだが…
17:00丁度 俺は別室でWEBミーティングをしてオフィスに戻ってきた。
席を見回すと黒山さんの姿が消えていた!!
まさか…
「あれ?黒山さんは?」
すると椎名くんが言った。
「あ、さっき帰りましたよ」
黒山さんの特殊スキル発動
〈定時ダッシュ〉発動。
〈無言帰宅〉発動。
しまったぁぁぁ!!
そうだった!彼女はそういうスキルの持ち主だった!
しかしもうこうなっては時お寿司、否!時遅しだ。
俺は恐る恐る、彼女が保存したフォルダーを開く。
黒山さんは直接声かけはして来ないが、メールはちゃんと打って報告してくれる。そこは信用して良いところだ。
んで…問題の内容だが…ふむ。
黒山さんの時限スキル発動
〈時を駆けるギャル〉発動。
〈自由気まま〉発動。
〈漢字?それっておいしいの?〉発動。
言葉が砕けすぎ!!絵文字要らない!!漢字間違えすぎ!!テヘペロって死語すぎ!!
俺は絶句した。あんニャロメの笑顔が文章から伝わる程の表現力だった。
コレではプレゼンどころではない…
いやまて…しかし…この内容…
黒山さんの特殊スキル発動
〈実は真面目ちゃん?〉発動。
〈地頭いいんです〉発動。
〈考えが鋭い〉発動。
〈多角的視点〉発動。
趣旨自体は間違ってはいない。
むしろ要点は書き出せている!
問題はその要点が取っ散らかっていて、ウルトラCの着地地点から大幅にズレている事だろうか…
俺は時計をチラりと見る。
今は17:21 プレゼンは18:00〜
移動時間を考慮すると後15分しかない。
ここで俺の特殊スキルが発動した。
〈高速タイピング〉発動。
〈論点、ターゲットの絞り込み〉発動。
〈最短ルートの割り出し〉発動。
〈最適化〉発動。
〈集中〉発動。
〈超集中〉発動。
資料は全部で12ページ。
掲載しているイラストは…許容範囲。
文章は、ニュアンスを変更。
要点は冒頭に列挙。
そして15分後…
終わった…
いや、悪い意味じゃなくて!
本当に資料を作り切った。
そして俺はプレゼンに挑んだ。
その結果は…
がっちりマンデー!!
契約取れました!
ありがとう!ありがとう皆!!
いやーホント朝はヒヤヒヤしたぜぇ!
と、安心したら急に腹が減ったな…
夜の目抜き通りにはネオンが輝き、俺を誘ってくる。
あ、そういや、沢村くん明日ちゃんと出勤するんかな?
俺のノーマルスキル発動
〈明日は明日の風がふく〉発動。
〈ケセラセラ〉発動。




