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24:移動動物園

それからも私はいつもと変わらない日々を過ごして居る。

ただ、家庭教師も巻き込む事になってしまった。


毎日顔を合わせるし、絵も描いて貰うのだ。

些細な変化でも気付くかもしれない。

だったら最初から巻き込んでしまい、豊富な知識で相談に乗って貰ったほうがよいのではないかとアイダが提案してくれたのだ。

確かにそうかもしれない。

申し訳ないなと思うけど、私は祖父や兄の笑顔を守りたいし見続けたいのだ。


家庭教師に話をすれば、すぐに了承して貰えた。


「私の伝手を辿って遠い異国の書物なども取り寄せて見ましょう。

 もしかしたら何か良い情報を知る事が出来るかもしれません。

 それにお勉強の方もお嬢様が興味のある物を優先させましょう。

 どこかの国の本には笑顔が最高の薬だと載っていた記憶がございますから」


私が興味のある物…

そうなるとやはり植物や動物だろうか。

でも…

動物などは実際に見て見るには宮殿から出て、山や森に行かなければならないし。


「お嬢様、でしたらちょうど今町には移動動物園なる物が来ているそうですよ」


移動動物園とは何だろう。

中型から小型の動物を集めて色々な町を周りながら展示しているのだと家庭教師が教えてくれた。

それは見て見たいかも!


と、言う事で夕食時に祖父と兄へ伝えて見た。

兄がいつからいつまでの間開催しているのかを調べてくれると言ってくれた。


「ファレグの事だから、毎日でも通いたいと言いそうだからね」

「そ、そんな事は…」


あるかも?

きっと私ははしゃいでしまうし、ずっと見ていたいと思ってしまいそうだ。

なんならスケッチブックを抱えて行きそうな気もしてしまう。

などと考えていたら手が止まっていたらしい。

食事が冷めてしまうよと言われてしまった。

そうだった、まずは食べないと…


その後の兄の調べで、移動動物園は月末まで展示されているのだとか。

ただ雨の日は休みなのだそうだ。

確かに雨の日はお客さんも少ないだろうし、動物達だって雨に濡れたくはないだろう。

朝のお茶の時間から午後のお茶の時間までの展示らしい。

それならお昼はピクニックのようにランチボックスを持って行ってはどうかと料理長が提案してくれたのでそうしたいと思う。

初日は祖父も一緒に行ってくれるみたいだ。

祖父も初めてだからワクワクしているのだと教えてくれた。

どんな動物が居るのだろう。

私もワクワクしながらずっと図鑑を眺めていた。

勿論他の勉強もやってはいる。

相変わらず地図を見ながら色々な場所の特徴を教えて貰ったり、他の国の事を教えて貰ったり。

他の国の料理やお茶の事を知るのも楽しい。

ただ夢中になっていると休憩を忘れてしまうのでアイダやばあやには怒られてしまう。

家庭教師も一緒に夢中になっているから、家庭教師も一緒に怒られる事になってしまうので今後は気を付けようと思う。



そして今日は初めて移動動物園に行く日だ。

少しの気怠さと胸の痛みがあったけど叔父が処方してくれた痛み止めを飲めば大丈夫。

祖父はデートだと張り切っていたのだけど、兄が休みを取って来ていたので3人でのお出掛けだ。

と、思ったのだけど違った。

叔父と皇太子殿下まで来てしまっている。

視察だと仰っていたけど絶対違うと思うの。

子供の様に目がキラキラしているんだもの。


裏門から馬車で向かう。

移動動物園は町の外れにあるらしい。

少し離れた場所で降ろしてもらい、そこからは徒歩で向かう。


チラホラと人の流れも出来ているようだ。

沢山の人がいる様でドキドキしてしまう。

入口らしい場所で入場料を払って中へと入る。

順路と書かれた矢印の看板が立ててあったのでそれに沿って進む事にした。


最初に居たのは小さな馬でポニーと言うのだそうだ。

名前がポニーと言う仔馬なのかと思ったら違った。

ポニーと言う種類の馬で、大人でこの大きさなのだそうだ。

かっ、かわいい…


次の場所に居たのはリンカーンと言う羊。

図鑑で見た羊とは種類が違うのだそうで、なんだかお掃除に使うモップみたいだと思った。

穏やかな性格の子で、この子の毛からマフラーや手袋が作られるらしい。

凄いね、可愛くて役に立つ子なんだね。


次に居たのはヤギだったのだけど、黒とこげ茶色でミルク用の種類らしかった。

子ヤギも居て鳴き声まで凄く可愛い。


その後もいろいろな種類の犬が居たり、色々な種類のウサギやハリネズミというのも居た。

子豚の可愛さには祖父と皇太子殿下がメロメロになってしまっていた。


その他にもテントの中には爬虫類が居るのだとも聞いた。

女の人には爬虫類は不人気なのだそうだ。

爬虫類とは蛇や蜥蜴の事だから、確かに苦手な女の人は多いかもしれない。

でも私はとても興味がある。

普段ならきっと見る機会なんて無いと思うの、それならば折角機会があるのだし見ておきたい。

そう言えば祖父と兄は『確かにそうだね』と言ってくれて一緒にテントの中へ行く事になった。

皇太子殿下はと言うと『私は遠慮しておくよ』と引きつっていたから苦手なのだろう。

叔父は他の動物を見る事も無く一目散にテントへやって来ていたのだとか…


テントの中にはいろいろな蛇や蜥蜴がガラスのケースに入れられていた。

私は真っ白なボールパイソンと言う蛇に目を奪われた。

真っ白なのだけど光の加減で金色に見えて綺麗だと思ったのだ。

祖父や兄もそれぞれ違う蛇に見入っていた。

叔父はとても嬉しそうに蛇や蜥蜴の説明をしてくれた。

お世話係のお兄さんとも仲良くなったみたいで、終了時間ギリギリまでテントに居るつもりらしい。


しばらくして兄に一旦休憩にして昼食にしないかと声を掛けられた。

そう言えばお腹が空いた気もする…

皇太子殿下が少し呆れた顔をしているのは気のせいだと思いたい。


テントから離れた場所に休憩場所があり、ガーデンテーブルやチェアが置いてあったのでそこを利用させて貰う。

ランチボックスの中には食べやすいように一口サイズのサンドウィッチが詰められていた。

私が好きな卵と野菜のサンドウィッチもある。

きっと料理長が入れてくれたのだろう。

別のランチボックスにはカットフルーツが入っていた。

アイダが皆に温かいお茶を淹れてくれ、皆で美味しく食べた。


食後は少し休憩して、再び動物達を見て回る。

ピヨピヨと歩き回る黄色い雛はアヒルとニワトリの2種類が居るのだそうだ。

アヒルの雛の方が少し大きくて嘴が平たいのだと教えて貰った。

そう言われれば確かに嘴の形が違うけど、どちらもフリフリと動く尻尾が可愛くてアイダが気に入ったようだった。

確かに可愛いのだけど、私は気付いてしまった。

もしかして、私が食べている卵って…

衝撃を受けているとお世話係のお姉さんが説明してくれた。

私達が食べる卵からは雛は生まれないらしい。

卵用のニワトリは雄雌別々に別けて育てられているんだって。

そっか、それなら良かった。

こんな可愛い子を生まれる前に食べてたなんてと自己嫌悪するところだった。


他にもふれあいコーナーと言うのがあったのだけど、残念ながら時間切れになってしまった。

テントの中と黄色い雛で随分と時間を費やしてしまったみたい。


「ファレグはまた明日も来るのだろう?」

「勿論ですお兄さま!」

「私も仕事が無ければ来たかったな」


明日は祖父も来ないので家庭教師が一緒に来てくれるそうだ。

家庭教師はどんな動物が好きなのだろう、明日も楽しめるといいな。


読んで下さりありがとうございます。

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