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14:貴族って怖い気がする

休憩の後、私は部屋に戻って来た。

祖父が用意してくれた服を見る事になったのだ。


「どんなお洋服でしょう、楽しみでございますね」


私よりもアイダとばあやがワクワクしているみたい。

2人が言うには私があの家で着ていた服は子供らしくなかったのだそうだ。

そう言われても私にはよく解らない。

ずっとああいった感じの服だったから。


ばあやが服が入っている場所の扉を開けてくれる。

そこには…

明るい色の服が沢山並んでいた。

1,2,3,4,5,6,7,… うん、沢山すぎて数えるのを止めた。


「こんなにいっぱいあると着るのも洗うのも大変そう」

「大丈夫でございますよ。

 今まで着飾る事も出来なかったのですから色々と着てみて楽しみましょうね」

「うーん、でも1週間は7日しかないでしょ?

 服も7個あればいいと思うの」

「お嬢様…」


あの家では曜日毎に着る服は決まっていた。

靴は1つしか無くて壊れたり小さくなったら新しいのを貰えた。

髪飾りは2つあったけど、あのお茶会の時にしかつけた事は無かった。


「さぁさぁ、まずはどれか1つを着て見て大きさを確認いたしましょう」


そう言われたので来ている服を脱ごうとしたらアイダに止められた。


「もしかしてお嬢様、あの家ではご自分で脱ぎ着をしてらしたのですか?」

「ううん、火曜日と金曜日は背中にボタンやリボンがあるから

 メイドさんにやって貰ってたよ?」

「 … 」


そしてアイダに教えて貰った。

貴族の令嬢はメイドや侍女などの使用人に着替えさせて貰うのだと言う事を。

そうなんだ…

礼儀作法の先生はそんな事教えてくれなかったと言ったら、普通は小さな頃からそうやっているから自然と身に着くのだと教えてくれた。

やっぱりあの家は普通ではなかったらしい…

こうなってくると何が貴族としての普通で、何が普通ではないのかが私には解らなくなってくる。

あ、使用人に「さん」は使ったら駄目なのはさっき教えて貰った。


「あのね、アイダとばあやにお願いがあるの。

 きっと私は皆にとっての普通の事も貴族としての普通の事も

 解らない事や間違ってる事が沢山あると思うの。

 だから気が付いた時には教えて欲しいの。お願い出来るかな?」


あ、お願いは駄目なんだっけ。

でもこれは命令する事じゃないと思うから許して欲しいな。


「解りました、お嬢様。一緒に色々な事を知ってまいりましょう」

「ええ、ええ。お嬢様の可愛らしいお願いですからね。

 ばあやとも一緒に知ってまいりましょうね」

「ありがとう。2人共大好き!」


私がそう笑うと2人も笑ってくれた。

その後はばあやに着替えさせて貰って色々な服を着て見たのだけど、どれも大きかった。

お直しをすれば大丈夫だと言っていたけど、お直しってなんだろうと思ったら裁縫が上手なメイドが居て私に合う大きさにしてくれるのだと教えてくれた。

そんな事が出来るの?

私はどうやるのか見てみたくなった。

でもお仕事の邪魔になるから駄目かな…


「やり方をお知りになりたいのですか…

 そうですね、ではばあやがクマさんの服でおみせましょうか」

「いいの?」

「ええ、でも今すぐには無理なので用意が出来たらにいたしましょうね」

「うん、じゃなかった。はい!ありがとう」


小さい内は「うん」でもいいけど、そろそろお返事は「はい」にしましょうねと言われたのだった。

確かに「うん」だと幼い感じがするから気をつけようと思う。


それから靴も沢山あった。

今履いてるのと似ているのやちょっと涼しそうな靴、雨が降った時の靴や雪の降った時の靴もあった。

なんて贅沢な…

もしかしてこれも貴族の贅沢というやつなのでは…

沢山の服や沢山の靴、これまでから考えれば何年分あるのだろう。

貴族って少し怖い…

靴の大きさはちょうどよかったのだけど、こんなにあって全部履かない内に足が大きくなったらどうしよう…

やっぱり貴族って、贅沢って怖い気がする。

お祖父さまに後で相談しよう。

新しい服や靴は嬉しいけど多すぎるって。

もっと少なくていいですって言わないと。


靴を見終わった頃にメイドがやって来た。

このメイドがお直しをやってくれるらしい。

数字の付いた平べったい紐を使って私の体の大きさを測るのだと教えてくれた。


「お嬢様、明日はどれをお召しになりますか?」


そう聞かれたけど「お召しになる」が解らない。

困っていたらアイダが教えてくれた。


「明日はどれを着て見たいですか?」


なるほど、着る事をお召しになると言うのね。

私は少し考えてから、薄い青色のワンピースを選んだ。

お兄さまやお爺さまの眼の色だ。


「こちらでございますね。

 ではこちらは明日の朝までには仕上げておきますね」


そんなに早く出来るの?

 もしかしてこのメイドも魔法使いだったり……?


「魔法ではございませんよ?」


うっ、なんで考えてた事が判ったのだろう。


「お願いしま・・・お願いね」

「はい、承りました」


ニッコリと笑ってくれたので私もニッコリと笑った。


そうしている間に夕飯の時間になってしまった。

早い、もうそんな時間なの?

ベッドの上に居る時は1日が長く感じていたのに、今日はあっという間だった。

さっきケーキ食べたけど、夕飯はちゃんと食べれるだろうか…


アイダは部屋の片付けをすると言って残る事になったので私はばあやと夕飯を食べる部屋にやってきた。

兄は先に来ていて座っていた。

私は侍従に案内されて兄の正面へと座る。

すぐに祖父も来て上座と呼ばれる当主席に座った。

ここら辺の事は礼儀作法の家庭教師に習っているので知っていた。


3人が揃ったので料理が運ばれ始める。

私の分は兄や祖父の半分くらいになっていたのでありがたい。

あんなに食べれないもの…


料理はどれも美味しかった。

特にお肉が私でも食べやすいように柔らかくしてあったのだ。

しかも脂ぎってなくて美味しかった。

何のお肉だったのだろうか、私はこのお肉が大好きになってしまった。

そして夕飯は量が少なくしてあったお陰もあって残さずに食べる事が出来た。

きっと美味しかったというのもあると思う。

やっぱり料理長は大魔法使いなんじゃないだろうか…


祖父に料理長にお礼を言っても良いか聞いたら、料理長を呼んでくれた。

お仕事中なのにごめんなさい…


「見て!私全部食べる事が出来たの。

 料理長のお陰ね、凄く美味しかったの。

 料理長、美味しいご飯と魔法のケーキをありがとう」


そう言って料理長を見れば料理長は目がウルウルしていた。

どうしたのだろう。


「お嬢様が美味しいと食べて下さり、私も嬉しゅうございます。

 明日のご飯も楽しみにしていて下さいませ」

「はい、楽しみにしておきますね」


会話の後料理長は戻って行った。

このやり取りを祖父と兄もニコニコして見ていた。

やっぱり貴族でも使用人にお礼は言ってもいいと思うんだけどな。

そう思うけどこれも貴族の決まり事みたいなので仕方がない。

祖父はこの離宮のだけなら良いと言ってくれたのだから、ここの皆にはちゃんとありがとうは伝えたいなと思った。

勿論他の場所では気を付けるつもりだ。

 

読んで下さりありがとうございます。

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