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11:頭が追いつかない

夕食後、今後について相談し2日後に王都へ向かう事が決まった。

教授も一緒に来てくれると言うか本宅へ戻るらしい。

ここは別荘なのだそうだ。

もしかして私達の為にわざわざこの別荘まで来てくれていたのだろうか。

なんだか申し訳なくて、改めてお礼を言う。

すると教授は


「子供が変な気をつかうでない。

 大人が子を守り慈しむのは当たり前の事だよ」


その言葉が凄く温かくて嬉しくて私は泣いてしまった。

大人が子を守り慈しむのは当たり前の事だよ、教授はそう言ってくれたけど私にはなにか特別な事のように思えた。

あの両親や国王夫妻、子を守り慈しんでいるようには見えなかった。

ああ違う、第二王子は何をしても許されているようだった。

つまり私が守られてもいなかったし、慈しんでも貰えなかったのだろう。

そもそも慈しむってなんだろう。

わからないので兄に聞いてみた。


「お兄さま、慈しむとはどういう事なのでしょうか」

「うっ… それはね。

 可愛がり大切にする事、愛情を持って接する事だよ。

 ファレグには難しいか」

「大好きで愛しているよと言う事だな。

 私はお嬢さんの兄上がお嬢さんにしているような事だよ」

「じゃぁ私がお兄さまや教授に大好きって抱き着く事も?」

「そうだね、慈しむ行動の1つだよ」

「そうなのですね、なんとなく解りました。ありがとう」


解らない事はこれから覚えて行けばよいのだから遠慮せずに聞いておくれと教授は言ってくれた。

兄もこれからは自由に本も読めるし勉強だって出来るのだからねと言ってくれた。

そうか、本も自由に読めるようになるのか。

それは嬉しいしありがたい事だ。

その事を考えても私はあの両親に慈しまれては無かったのだと解った。


そして2日後、私達は王都へ向かった。

馬か馬車での移動になるのかと思ったら転移門と言う物での移動だった。

魔法って凄いね…


あっという間に教授の本宅へと着いたのだけど、ここってお城では?

驚いてキョロキョロとしている私を兄は抱えあげた。


「お兄さま、私小さな子供ではないのです。歩けますよ?」

「そうは言うがファレグ。

 毒の影響かあまり成長出来ていないようでまだ8…

 ゴホン、10歳くらいの大きさだよ?」


お兄さま、今8歳と言おうとしました?

まさかそんなに小さくは…

小さいかも。

そう言えば毒を盛られてからあまり食事は摂れて居なかったし。

あれ、私、第二王子と兄以外の子供と会った事がないかも…

他の同じ年くらいの子供ってどのくらいの大きさなのだろうか。

今まで気にした事は無かったのだけど、気になり始めたら凄く気になる。


「大丈夫だよ、巫毒の影響が無くなったのだからね。

 これからお嬢さんの背も伸びていくはずだからね」


教授はそう言って頭を撫でてくれた。

この大きな手に撫でられるととても安心する。


「さぁファレグ。考えるのは後にしよう。

 陛下と殿下がお待ちかねだ」

「え?」

「心配はいらないよ、私も一緒に行くからね」


教授も一緒なら少しは安心かな。

勿論兄が居るから安心はしているけど、それとは違う安心感があると言うか。


でもどうして王都で最初に会うのが皇帝陛下と皇太子殿下なのだろう。

そんな疑問を抱えていたのだけど…


違った。

皇后陛下や皇子殿下、皇女殿下まで勢揃いでいらっしゃった…

案内された先には皇族の皆さまが揃って座ってらっしゃった。

あの国の王妃や王子とはまったく威厳が違うというか、笑顔が眩しいというか。

比べる事自体が失礼なのだと思うのだけど。


兄に降ろしてもらいカーテシーの姿勢をとる。

教授と兄も腰を折り礼をとっている。

礼儀作法の教育を受けさせて貰っていた事だけはあの両親に感謝したい。


「よいよい、堅苦しいのは抜きだ。

 顔をあげて楽にしてくれないか。

 まったく、叔父上も止めてくれ」


叔父上?

今陛下は叔父上と言った? 誰に? まさか教授?…

その後ソファに座るよう勧められ、おずおずと腰掛ける。

そして陛下の傍に立っていた側近さんが説明をしてくれた。

側近さんの話を聞きながら兄から聞いた事を思い出す。


確か…

兄が公爵様の養子になっていて実は孫だった?

私も公爵様の養子になる訳で…

その公爵様が実は先帝の弟で…

その先帝の弟の公爵が教授?

つまり兄と私は教授の養子だけど孫?…


「簡単に言えば私とファレグは教授の孫という事だね。

 陛下や殿下方とは親族となるんだよ」

「兄上と呼んでくれると嬉しいかな」

「是非お姉様と呼んでちょうだい」

「私は君の大叔父となるけど、おじさまでいいし

 なんならお父さまと呼んでくれてもいいんだよ。

 そうだな、いっそ伯父上の養子では無く私の養子でも」

「何を言うか、養子では無く孫の復籍をすればよいだけであろうが。

 やっと見つかった愛する孫達を手放す訳はなかろう」


口々にそう言ってくれるけど悲しいかな私の頭は情報の波にのまれてしまいそのまま意識を失ってしまったらしい。

ああ、お返事出来ずに申し訳ない。



「知恵熱です! あれほど注意したのに

 皆で一斉にあれこれと言えばこうなるのも当たり前でしょう!」

「だがな、長年探し求めていた子等がやっと見つかったのだ」

「だがではありません!いいですか兄上!

 この子は成人前の子供で、しかも巫蠱の影響で体付きも幼いのですよ。

 一気にまくし立てては頭も心も追いつかないと散々申したでしょう!」


意識を取り戻した私の耳に届いた言い争う声に一瞬怯えた。

またあの両親が言い争っているのかと思ったのだ。

布団に潜り込もうとした私の頭を兄の優しい手が撫でてくれる。


「大丈夫だよファレグ。

 あの声は陛下と陛下の弟殿下で皇族の専属医でもある方だからね」


言われてみればお二人の顔は似ている。

私の事を考えてこうやって陛下に注意を促してくれるのはありがたい。

とてもありがたいのだけれども、別の部屋でお願いしたく…

その声が頭に響いて辛い…


「すみませんが陛下殿下、別室でお願いできますか。

 妹が困り果てております」


さすがお兄さまです。

兄の一声で陛下方は部屋を移動してくれたようだった。

立ち去る前にお二人が眉を下げてごめんねと言ってくれていた。

優しい人達なのだろうとは思うけど、今はまだ言い争う声は怖かった。


兄は難しく考えなくていい、家族が増えたと思えばいいのだと言ってくれた。

確かに広い意味で考えれば家族なのだろうけど、それが皇族ともなると恐れ多いような。

でも教授が実の祖父だったことは素直に嬉しかった。

あれ?

そう言えば私、あの両親の元に居た時は両親や使用人、時々やって来る家庭教師以外の大人にもあった事がないかも…

祖父と言う言葉がとても新鮮だ。

他の人も皆子供の時ってこういうものなのだろうか。

後で兄に聞いてみよう。

そう思いながら再び眠りに就いた。

読んで下さりありがとうございます。

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