1:母の言葉の違和感
短編【子供の悪戯で済ませようとする大人と殺されかけた私】では多くの方々に評価やアクション・ブックマークを頂きありがとうございました。
感謝の意を込めて拙い文章ながらも連載版を始めて見ました。
何分語彙力がないので皆様に満足して頂ける内容になるか不安はありますが、お暇潰しにでもなれば幸いです。
なお細かい設定は作者の頭が煙を吐くのでしておらず、ざっくり設定です。
ではでは、宜しくお願いします(*'ω'*)
「ゴフッ」
喉が焼け付くように熱くなり苦しくて息が出来ない。
私の名を叫ぶ母の声が聞こえるけれど、その姿を見つける事は出来なかった。
母の声がする方へ伸ばそうとした手もピクリとも動かず、体全体に力が入らない為椅子に座り続ける事もままならずそのままドサリと崩れ落ちた。
どうしてこんな事になっているのだろう、折角楽しみにしていた初めてのお茶会だったのに。
そう思いながらも私は意識は闇に沈んで行った。
ファレグ・サントリス。この国の公爵令嬢で12歳。それが私だ。
私が倒れたのは、母の親友である王妃殿下に招かれた私的お茶会での出来事だった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「さぁ座ってちょうだい」
「王妃殿下にはご機嫌麗しく…」
「やめてちょうだい、堅苦しいのは無しよ。
今日は私的なお茶会なのだから、ね?」
そう促されてファレグは母親と共に席に着く。
私的なお茶会とは言えファレグには初めてのお茶会だった為とても緊張しているようだ。
「心配しなくても大丈夫よ。
ファレグは何か聞かれた時にだけ
『はい』か『いいえ』で答えるだけでいいのだから」
「はい、お母さま」
そう言われても緊張してしまうのは仕方がない事だろう。
母親と王妃は会話を楽しむ事に忙しく己が子供の様子を気に止めていない様だった。
第二王子は黙ったまま菓子を食べ、ファレグは母親に微笑みを絶やさぬよう言われていたのでそうしている。
母親がお茶を口にしたところでファレグもお茶に口を付ける。
一口飲んだところで違和感を感じたのだが、緊張し過ぎているせいなのかと思いもう一口飲んでみた。
そして次の瞬間に ゴフッ と吐血したのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
意識を取り戻した私は此処が何処なのかを確認しようと体を動かそうとした。
ピシッと肩や腕に痛みが走る。
「気が付いたのね、無理に体を動かしては駄目よ」
ベッドサイドに居たらしい母が私の両肩を掴みベッドに押し戻す。
うっ、痛みに顔が歪むが母は気にした様子も無い。
「おかあ・・・、な、に。この、こ、え」
喉に違和感が残っており、かすれた声しかでなかった。
自分の声ながら不快に思う様な声。
私は顔をしかめた。
すぐに医師が呼ばれ診察が行われた。
「喉が爛れて腫れているのが原因でしょう。
症状が収まれば声も元に戻ると思われますが…
使われた毒の特定が出来ていないので解毒剤も一般的な物しか使えません。
時間は掛かってしまいますが焦らずに治してまいりましょう」
私は頷くしかなかった。
ああ、そうか私あのお茶会で毒を盛られたみたい。
あのお茶会は王妃殿下の私的なお茶会だった。
あの場に居たのは私と母、それに王妃様と第二王子殿下の4人。
後は王妃様付きの侍女達。
いったい誰が何故私に毒を盛ったのだろう。
私の初めてのお茶会は残念な結果になってしまった。
「お母さま、いったい何が起こったのでしょうか」
そう尋ねる私に対して母はそっと目を伏せた。
言いにくい事なのだろうか。
「落ち着いて聞いてちょうだいね。
貴方はあのお茶会で毒が盛られたお茶を飲んでしまったの。
10日も目を覚まさなかったから心配で心配で」
どうやら10日も寝込んでいたらしい。
飲まず食わずの状態で、しかも毒に侵された体でよく生き延びた物だと思う。
後から聞かされて解かったのだけど、仮死状態に近い状態だったのではないかとの事だった。
なるほど。
仮死状態であれば飲まず食わずでも大丈夫だったのかもしれないと納得した。
「毒を盛った犯人は捕まったのですか?」
母に尋ねてみるも返事が返ってこない。
まだ捕まっていないのだろうか。
「お母さま?」
「毒を盛ったのは…
第二王子殿下だったわ」
「え?」
私の聞き間違えだろうか。
今第二王子殿下が毒を盛ったと聞こえたような気がするのだけれど。
毒の副作用で幻聴でも聞こえたのだろうか。
「ファレグ、心配しないで。
貴方が治るまで母様が傍にいるわ」
私と第二王子殿下は当然ながら初対面だったと思う。
なにせお茶会への参加自体が初めてだったのだから。
私は何か気に障るような粗相でもしてしまったのだろうか。
「何故殿下は毒を…
私は何か殿下に対して粗相をしたのでしょうか」
「気にしなくていいのよ、所詮子供のした事ですもの。
特に深い意味は無かったりするものよ」
私は母の言葉に違和感を覚えた。
所詮子供のした事…
私は死にかけたのに?
そう言い掛けた言葉を呑み込んだ。
言ったところでどうにかなるものでもなし、また会話が噛み合わないような気がしたからだ。
私と母の会話が噛み合わない事は幼い頃からあった。
公爵令嬢なのだから礼儀作法はしっかり身に着けなさいと厳しい家庭教師を宛がわれた。
それなのに学問や教養といったものに関しては本当に基礎しか教えて貰えない。
文字の読み書き、簡単な足し算引き算。
刺繍に関してはもっとお粗末で針と糸の種類、それに基本のクロスステッチしか教えて貰えなかった。
公爵令嬢としてこれで良いのだろうかと不安になり、一度だけお付きのメイドに聞いた事がある。
「私はクロスステッチしか教えて貰っていないのだけど
貴方はどれくらい出来るの?」
メイドは驚いた表情になり沈黙してしまった。
聞いては駄目な事だったのだろうか。
「ごめんなさい。答えにくい事ならいいの。忘れてちょうだい」
次の日からお付きのメイドは別の人になった。
何故だろうと思ったが理由はすぐに解かった。
「貴方は何も考えなくてよいの。
母様や父様の言われた通りにしていればよいのよ。
貴方に入れ知恵しようとしたあのメイドは追い出したから安心していいのよ」
ああ、あのメイドは私が疑問を投げかけてしまったばかりに仕事を失ってしまったのか。
何がいけなかったのだろう。
私が疑問を持つ事?
それともメイドに疑問を投げかけた事?
でもそれがどうして入れ知恵しようとした事になってしまうのだろう。
あのメイドは沈黙をしていたのに。
私は怖くなって、それ以降疑問を口にする事を辞めてしまった。
他にも母は「子供はしっかりと食べないと大きくなれないわよ」と言ったかと思えば次の日には「そんなに食べたら太ってしまうわ、この子の食事はもう少し減らしてちょうだい」と言ってみたり。
「お父さま、このお魚美味しいですね」と言えば「お母さまはお魚よりもお肉の方が好きよ」と返ってきたり。
一緒に庭をお散歩していても「お母さま、あの綺麗なお花はなぁに?」と聞けば「風が出て来たわね、お散歩は止めて部屋に戻りましょう」とお散歩を止めて見たり。
そんな事が続くとお散歩の時間自体が無くなってしまった。
私は段々と自分から話しかける事が減っていき、母とどう接するのが正解なのか解らなくなってしまったのだった。
そのまま数年過ごして来たので多少なりとも母との噛み合わない会話にも慣れたつもりでいた。
それでもさすがに今回の『所詮子供のした事ですもの』には違和感を覚えずにはいられなかった。
何故私は毒を盛られなければならなかったのだろう。
何故殿下が毒を盛る相手が私だったのだろう。
考えてみても判らなかった。
目に止めて読んで下さりありがとうございます。
1日1話、3000文字前後で進めていく予定なのでお付き合いいただけると嬉しいです。
なおファレグの家名を変更しました。フォアローゼス好きなお酒なので…(;´Д`)
気が向きましたら評価やアクションを1つポチッとして頂けると猫と一緒に小躍りして喜びます。
どの作品でもですが誤字報告、非常に助かってますしありがたいです。
今後ともお付き合い宜しくお願い申し上げます。
((8-(*’-‘*)ノ…Thanks…ヽ(*’-‘*)-8))