5.
二〇一三年十二月三十一日火曜日。本日の空模様は快晴。
いつものお決まりメンバーで集まる年末。年越しパーティを現在進行形で決行している。
静かな優と騒がしい俺、ひたすら酒を浴びる⬛︎⬛︎とテンションの高いヒゲオネェ。優の彼女も加わってバンドでも組もうかと盛り上がっている。
こぢんまりとしたライブハウスで歌おうぜ、と龍人がはしゃぐ。
別にいいけどメンバー内にヒゲオネェがいると恥ずかしいからせめてヒゲを剃るか、喋り方をスマートにしてほしい。
年越し直前はカウントダウンすることなくひたすらに喋り続けた。ジャンプをしていないと喚いたり、年越しそばを作りたかったのに間に合わなかったと嘆く人もいた。
二〇一四年一月一日水曜日。本日の空模様は晴れ。
「あのさ、寝正月って知ってる?」
不機嫌丸出しで貧乏ゆすりをする優はつまり、寝ていたかったらしい。初日の出を見に外へ行きたい人と優とで意見が割れている。
「優って本当、寝起き悪いよな。ちゃんと感情が乗ってて感動かも」
「元旦に初日の出を見ないっていう選択肢があることが信じられないけどね」
龍人や村尾に文句を言われ、渋々コートを羽織った。
「わざわざこんな寒い日に行かなくても」
「風情が無いね〜」
「⬛︎⬛︎そう思わない?ジャージ三枚履きしてるってことは相当寒いよね」
「寒いけどたまにはこういう日もあり」
「へっへー!優の負けー!」
ブスくれて口を閉ざした優は黙って後ろを歩く。
「この後は初詣行って、屋台でドカ食いじゃん?」
「みんなでお揃いのお守り買う?」
「いいね、最高」
盛り上がる男たちに混ざって優の彼女、陽菜が会話に参加する。
お嬢様学校を卒業して、大学こそ違うもののすっかりお決まりメンバーだ。世間一般的に陽菜の顔は可愛いらしい。スタイルもいいから、何故、根暗ド陰キャの優と付き合っているのか分からない。かれこれ二年ほど続いている。
「おい、見てみろよ!優!超綺麗だろ」
「綺麗だけど夏でいい」
「はーっ、本当風情が無い」
感動の日の出を前に不機嫌な優。こんなに感情を露わにするのは逆に珍しい。気を遣わずに自然体でいるということかも。
「バンド名決めた!」
眩しい光を真っ直ぐに見据えた龍人が大きな声を上げた。
バンドを組むことすら正式に決まったわけではないのにはしゃいでいる。
「なになに?」
「俺たちの未来が明るいものでありますようにって意味を込めて、Pegasusにしよう!」
「ペガサス…?なんか、厨二病じゃね?」
「自由に羽ばたいていこうぜ!!めっちゃ良いだろ!」
「いや、だから厨二…」
「今日から俺らPegasusな!!」
龍人と村尾の掛け合いも虚しく、どうやら本日付で俺たちはPegasusになってしまったらしい。
「俺と優がギターで、陽菜はキーボードだろ!広太はドラム一択、村尾はカメラマン」
「は!?俺、メンバーですらないの!?」
「カメラマンだって言ってるだろ」
「メンバーじゃねぇじゃん!」
「そんで、」
「聞けよ!?!?」
「⬛︎⬛︎がボーカルな。あ、ベース兼任で」
「俺がベースでも良いじゃん!?なんでカメラマンなの!?意味分かんないんですけど!!つーか勝手に決めるな!」
「リーダーは…」
「はいはいはいはい!俺がやらせていただこうか!カメラマンじゃ味気ないしさ!!」
「ジャンケンな」
「聞けよ!!!」
音楽センスのない村尾をカメラマンに当てたのは正解だと思う。ただ、リーダーは間違いなく俺だろ。
「ジャーンケーン…」
全員強制参加のジャンケンで負けた優は、めでたくPegasusのリーダーとなった。
「二〇一四年初日からツイてなさすぎる」
ゲラゲラと大声で笑い、楽しい年明けを過ごした。




