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裏切り

「いやぁ、今回も大勝利でしたな!」

「浮かれるなよザイエン。明日からは拠点を変えてもう一つ上のランクでレイドするんだからな。」

 浮かれたことを言っているのがアタッカーのザイエンで帯を締め直そうといっているのは魔法師のレイブンだ。レイブンはこのチームのリーダーである。

「まぁたまにはいいじゃない!明日からは拠点を変えるわけだし今日はパーッとお酒でも飲まない?!」

「はしゃぐなリン。チームはやっとCランクから昇格し、明日からはBランクになるのだ。もう少し上級冒険者としての自覚を…」

「うるさいわねぇ!頭でっかち!」

 ヒーラーのリンとタンクのベルゼはいつもどおり喧嘩をしている。能天気なリンとまじめな性格のベルゼは何かと衝突することが多い。

 そして、僕はこのチームのサブリーダーフェイ。僕たちは同じ村の出身で幼馴染同士でチームを組んだ。僕の役職はバッファーという味方にバフをかける目立たない役職ではあるが自分ではこの役職を気に入っている。あまり目立つのが得意ではないという性格なのもあるが、みんなのためにバフをかけてあげるのが好きなんだ。

 次からはBランクになり、上位ダンジョンに挑むことができる。僕たちの冒険は始まったばかりだ。

 こうして、フェイたちはギルドへと胸を躍らせながら向かう。

リン「ねぇねぇ、みんなBランクに上がれるっていうことはチームに名前をつけれのよね?」

レイブン「そうだな、今日中に名前を考えて登録して、明日の朝には早速ダンジョンへ移動しよう。」

リンはレイブンに確認すると、声のボリュームを上げてこういった。

リン「実はもう私名前決めちゃってまーーす!」

全員が呆れた顔をするといちばん早くにベルゼが一言いう。

ベルゼ「いきなり大きな声を出して何かと思えばそんなことかよ。どうせキューティクルスプラッシュピンキーハートとかそんなもんだろ。」

リン「ねぇあんた私のこと夢見がちな少女かなんかだと思ってる?!」

リンはベルゼに対して怒りをあらわにすると、フェイに対して問う。

リン「ねー、フェイはそんな風に思ってないよね?」

フェイ「う、うん僕はそんなことは思ってないよ。」

リンに2択を迫られたはずだが、フェイの中では1択のようなものだった。

ザイエン「俺はスーパー最強チームみたいな名前がいいと思うけどなー。」

リン「なに?その主婦みたいな名前。そんなの周りのパーティから笑われるわよ!」

ベルゼ「このチームはバカしかいないのかよ…」

ザイエン「なんだと?!」 リン「なんですって?!」

フェイは先を歩きながら後ろの言い争いを苦笑いをしながら歩いた。でも不思議とこんな状況が楽しいと感じている自分がいた。こんな時間がずっと続けばいいと思っていた。

レイブン「ついにここまで来たな。フェイ。」

レイブンはフェイの肩をたたきそういった。

レイブン「ここまで来るのに時間がかかったが俺ら5人のAランク冒険者になるという夢まであと1歩のところまで来た。」

フェイ「そうだね…村でみんなで冒険者ごっこをしていたのも最近のように感じるけど確かにここまで来るのにずいぶん時間がかかった気もするよ。」

そうレイブンとフェイが感傷に浸っていると

リン「ちょっと前の二人もちゃんと聞きなさい!」

レイブンとフェイは振り返る。

リン「これから私が考えたチーム名を発表します。」

ベルゼ「はいはい、どうせしょうもない…」

ベルゼの言葉を遮るように発せられたチーム名は思いがけないチーム名であった。聞いた4人は目を丸くしてリンのほうを見ていた。しばらく時間がたつと、

レイブン「それだ!僕たちにぴったりの名前だ。」

レイブンが最初に褒めると、次々に称賛の声をかける。

褒められたリンは満足そうな顔でちいさくガッツポーズをした。

ギルドに到着するとさっそく登録申請を出した。チーム名のかぶりがないかも確認してもらい、問題なく登録することができた。レイブンが明日の集合場所と時間を伝えると各々宿舎の部屋へ散らばっていった。

フェイは自分の部屋のベッドに寝そべりながら決心を強くした。

フェイ「明日から僕たちは上位ダンジョンへ行く。厳しい戦いが続くだろう。でも僕がうまくやっていけば…」

フェイは確信していた。自分が失敗さえしなければチームが負けることはないと。この根拠は一人一人の能力が高いこともあるが、フェイはバッファーの重要性をよく理解していた。バフはすべてにつながっているからである。そう考えていると次第に瞼が重くなりフェイは眠った。


 翌日、チームメンバーたちは時間通り集合し以外にもフェイが一番最初に到着した。なぜかギルドの周りの人は僕へ同情するかのような目線を向けている。フェイは嫌な空気を感じながらみんながいる席に座った。

フェイ「みんな早いね。ごめんね、一番最後に来ちゃってザイエンもめずらしく早いね。」

そう重い空気を和ませようといった言葉だが全員うつむいて反応がない。フェイは何が起きているのかわからずレイブンのほうを見る。すると、

レイブン「フェイ。お前にはチームを脱退してもらう。」

思いがけないその一言はフェイの動きを奪った。フェイはレイブンが本気であることを目を見て分かった。そうか、この重い雰囲気は僕を脱退させるという話がギルドに伝わっていたのかと納得した。

フェイ「そ、そんな!突然なんで!」

フェイは状況は理解できたが理由がわからなかった。レイブンに理由を問うが返事は返ってこない。

すると、

ザイエン「いらねえんだよ」

フェイ「は?」

ザイエンの答えにフェイは唖然とした。

ザイエン「バフなんていらねえんだよ。ヒーラーがいれば十分だ。周りのチームを見てみろバッファーなんていねえ。チームの数が増えれば増えるほど連携は難しくなる。」

そのザイエンに対してフェイは、

フェイ「それはわかっている!でもその分僕が指示を出して連携はうまくいっていたはずだ!」

いたって理論的な反論だったが、ザイエンは声を荒げながら

「邪魔なんだよ!」

その一言にフェンは反論する気力を失った。その言葉は重くのしかかり正しいか正しくないかは別として、存在自体を否定されたかのように聞こえた。いや、実際にそういう意図だったのだろう。

フェイはくやしさよりも先に怒りが込みあがってきた。あれだけ、チームのために行動してきたのに、あんなに一緒に頑張ってきたのに今までのはすべて嘘だったのか。そんな思いがこみ上げた。気づくとフェイは席を立ちあがりギルドの出口へ向かった。チームメンバーから背を向けるとフェイは、

フェイ「お前らなんて、大嫌いだ。今まで僕がどんな気持ちでやってきたか、どこまでチームに貢献していたかお前らにはわからなかったんだろうな。僕が抜けたままレイドをやってせいぜい僕がどれだけ貢献していたか身を持って知ればいい。これからはお前らが死にかけようがどうなろうが俺には関係ない。仲良く4人で地獄へ落ちればいいさ。」

そう言い放つとフェイはギルドを出ていった。

レイブン「ありがとうベルゼ」

ベルゼ「ああいうことを言うのは俺のキャラだろ?そのほうが怪しまれないさ。」

リン「私たち、嫌われちゃったよね。」

ザイエン「仕方ないさ、あいつはチームで一番優秀だ。あいつがいなくてもボス部屋まではなんとか到達できるだろう。」

レイブン「いや、僕たちは絶対に行かなきゃいけない。ボス部屋までいかないと制覇を失敗したとしてダンジョンブレイクまでの時間がリセットされない。」

ベルゼ「まぁ瀕死の状態でもボス部屋に到達できればいいんだ。そこはなにも問題ないだろう。」

リン「はーあ、最後に嫌われちゃったな―。」

ベルゼ「フェイみたいな強くて優秀なやつがお前みたいなやつと恋人になるはずがないだろ。」

リン「失礼ね。わかんないでしょ!」

ベルゼとリンはいつもどおり喧嘩している。

レイブンは喧嘩を収めて、Aランクダンジョンへ向かった。なぜBランクのチームがAランクのダンジョンへ行けるのかというと、ダンジョンは通常3か月でブレイクし、中の魔獣がダンジョンの外へ出てくる。その事態を防ぐため、3か月たってもクリアの見込みがない場合、ボス部屋でチームを失敗させて、ダンジョンブレイクの時間をリセットする場合がある。ダンジョンの修復する時間が長いほどダンジョンブレイクまでの時間を稼げる。そのため、クリアできないパーティーが現れない場合、それなりのパーティーにクエストをギルドから依頼するのである。これを断れば町は崩壊して残酷な運命を迎えるだろう。

レイブン「まぁ、必ず負けなければいけないわけじゃない。このダンジョンを制覇してみんなでフェイに謝ろう。」

そうレイブンが鼓舞すると全員はその声に賛同し席から立ち上がりダンジョンへ向かった。

そのころ、フェイはできるだけ離れた場所で宿をとり泣きつかれて眠ってしまっていた。夢の中には自分が幼いころの村の情景が浮かびあがる。豊かな作物ときれいな水辺。おにごっこをして遊ぶフェイたち。すると夢の場面が変化して村に火が上がり家族がエンシェントドラゴンに焼かれている夢を見る。これは過去に起こったことでフェイはときどきこのような夢をフラッシュバックとして見る。

5人で逃げているところでフェイは目を覚ます。

フェイ「今はもう。一人になっちゃったな。」

そうフェイがつぶやくと宿舎のドアをたたく音が聞こえてフェイがドアを開けるとそこにいたのはギルドマスターだった。

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