愛される価値なんて、ないと思ってた
この作品は、実体験をもとにした、半分ノンフィクションのような物語です。
幼い頃から抱えてきた傷、愛されたいと願っても届かなかった日々、
そして「自分には価値がない」と思っていた私が、少しずつ変わっていく過程を綴りました。
登場人物や出来事は一部フェイクを混ぜつつも、根底にあるのは、私の本当の気持ちです。
重たいテーマを含みますが、どこかに同じように苦しんでいたり、迷っていたりする方の心に、
ほんの少しでも寄り添えたら――そう願って書いています。
どうか、優しい気持ちで読んでいただけたら幸いです。
私の幼少期を一言で言えば、「愛されたいと願いながら、傷つけられた日々」だった。
父も母も、それぞれに幼少期から深い傷を抱えていた人だった。精神的にとても未熟で、愛し方が分からないまま、大人になってしまったのだと思う。
確かに、私を愛そうとしてくれていた瞬間もあった。優しくしてくれた記憶も、ないわけじゃない。けれど、それ以上に記憶に残っているのは、機嫌が悪いときに向けられた暴言や暴力。
私だけじゃない。弟たちもまた、同じように怯えながら育っていた。
家は“過保護”という形で、外の世界を知らずに済むような場所だった。
でもそれは、子どもを守るためではなく、親の不安や未熟さから来る支配だったようにも思う。
「こうしてはいけない」「こんな時はこうするべき」――そんな当たり前のことを、誰からも教えてもらえなかった。
大人になってから、何度も恥をかいて、泣いて、自分の未熟さに打ちのめされた。
私は、幼稚園の頃からすでに、自分の価値が分からなかった。
「誰か、私を買ってくれないかな」
そんなことを思っていた。
私の値段=私の価値。
そう信じ込んでいた。
だから自己肯定感なんて、育つはずもなかった。
それでも――19歳になったとき、私はキャバクラで働き始めた。
その世界は、私にとってある意味で救いだった。
私を指名してくれる人がいた。
求めてくれる人がいた。
たとえそれが一時的で、うわべだけのものでも、「自分には意味がある」と思える瞬間だった。
当時の私は、金髪のロングヘアに、体のラインがはっきり分かる服を着ていた。
動けばすぐに下着が見えてしまいそうな短いスカート。
白や派手な色の服に、10センチ近い高いヒール。
身長は163センチ。夜の街では、少し目立つ存在だったかもしれない。
けれど――そんな私も、彼と出会って、少しずつ変わっていった。
彼と結婚が決まったとき、私は「彼の隣にいて恥ずかしくない人間になりたい」と思った。
だから金髪は黒髪に染め直し、服も清楚なものを選ぶようになった。
それまで料理も掃除もしたことがなかった私が、ネットや本を見ながら一つひとつ覚えた。
最初はカップラーメンさえうまく作れなかったのに、今では一通りの家庭料理が作れるようになった。
周囲には、「大学まで行ったのに、もったいない」と言われた。
でも私は、自分で決めて大学を辞めた。
親にこれ以上の負担をかけたくなかったし、年の離れた彼と早く家庭を築きたかった。
子どもを産んで、家族を作りたかった。
――けれど、そのあと、私は自分がいかに未熟だったかを思い知らされることになる。
常識のなさ、教養の足りなさ、感情のコントロールの難しさ。
母になってから、自分の足りなさに気づいて泣くこともあった。
それでも今、私は立ち止まらずに前を向いて生きている。
傷を抱えながら、それでも誰かを大切にしたいと願っている。
「愛される価値なんてない」と思っていた私が、少しずつでも「愛してもいいのかもしれない」と思えるようになってきた。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語を書こうと思ったのは、過去をただ告白するためではありません。
「それでも、今を生きている人がいる」ということを、誰かに届けたかったからです。
過去に傷があっても、今が苦しくても、未来は少しずつ変えていける。
私はまだ途中だけど、変わりたいと願いながら、日々を大切に生きています。
読んでくださったあなたの心にも、そっと光が差しますように。
もしよければ、感想やご意見をいただけたらとても励みになります。