第7話:青髪ヒロイン、テスト返却で異次元の点数、俺の凡人魂が震える
テスト期間が終わって、月曜の朝、教室はざわついていた。俺、臼木崚雅、普通の高校二年生、窓際でボーッとしながら結果を待ってる。隣の辛康太は、ラノベを読みつつブツブツ言ってる。
「なあ、崚雅。ラノベならさ、テスト返却ってキャラの隠しステータスがバレるイベントだろ。俺のシナリオ予測だと、納戸さんが何かやらかすぜ」
康太が眼鏡をクイッと上げて言う。こいつのアニメ脳、ほんと休まないな。
「お前、シナリオ予測ってほんと何だよ。普通に点数見るだけだろ」
「普通? 納戸さんが普通なわけない。図書室のあの勉強っぷり、絶対ヤバい点数だろ」
康太がニヤニヤ。ほっとけよ。
1時間目の英語、佐藤先生がテストの束を持って入ってきた。厳しそうな顔で、プリントを配り始める。
「今回は平均低め。ちゃんと復習しろよ」
俺の答案、75点。まあ、普通だ。康太が「68点、賢者ポジの危機」とか呟いてる。バカだな。ふと、納戸瑠璃の席を見ると、彼女は答案をサラッと見て、メモ帳に何か書いてる。青髪が朝日でキラキラ。いつものミステリアスな雰囲気だ。
昼休み、康太と弁当食ってると、田中彩花が興奮気味に話しかけてきた。クラスの秀才、メガネの真面目なやつ。
「ねえ、臼木君、辛君、聞いた? 納戸さん、英語98点だって。ほぼ満点!」
「マジ? 納戸さん、頭良すぎだろ」
俺が驚くと、納戸さんがこっちをチラッと見て、ニコッと笑った。
「まぐれだよ。臼木君、辛君は?」
「俺、75。普通。康太は68、賢者ポジらしいよ」
「賢者ポジ、ピンチだね。辛君、復習する?」
納戸さんがクスクス笑う。
康太が「ラノベなら、ここで勉強会イベント…」とか言い出す。
「納戸さん、俺のシナリオ予測だと、君は隠れ天才キャラだろ。次は数学でトップ取るぜ、な?」
「ふーん、期待しないでよ、賢者さん」
納戸さんの笑顔、なんか余裕たっぷり。彼女の答案、チラッと見えたけど、英語以外もやたら高得点っぽい。前の学校でもこんな感じだったのか?
2時間目の数学、山田先生がニヤニヤしながら答案を配る。
「ほほう、今回は面白い結果だな。納戸が95点 、クラス1位だ」
教室がざわつく。納戸さんが「やった」と小さく呟いて、メモ帳にまた何か書き込む。康太が「ほら、来た! 天才ヒロインの覚醒!」と囁いてくる。黙れよ。
「納戸さん、すげえな。数学もほぼ満点じゃん」
俺が言うと、彼女は照れたように笑った。
「数学好きだから。まあ、ちょっと頑張っただけ」
昼休みの続き、田中が納戸さんに絡んできた。
「納戸さん、勉強法教えてよ。どうやったらそんな点数取れるの?」
「ん、普通にノートまとめて、問題解いただけ。田中さんも頭いいよね?」
「いやいや、私なんか普通だよ。納戸さん、なんか…別次元って感じ」
田中が感心してる。納戸さんは笑って誤魔化すけど、彼女のメモ帳が目に入った。いつもの円形の模様、今度は小さな花のマークが追加されてる。
納戸さん、そのメモ帳、いつも何か書いてるよな」
つい口走ると、彼女はメモ帳をパタンと閉じた。
「ただの落書きだよ。臼木君、テストどうだった?」
「まあ、普通。75点。納戸さんみたいに95とか夢だな」
「ふーん、普通、ね。臼木君、意外と謙虚だね」
納戸さんがニヤッと笑う。なんだ、その「意外」は。俺、普通だぞ。
放課後、康太と図書室で復習しようとしたけど、納戸さんが先に来てた。例の『古の封印』を広げてる。表紙のマーク、メモ帳とそっくり。彼女がページをめくると、なんか古い紙の匂いが漂う。
その時、高橋遼先輩が図書室に入ってきた。サッカー部の爽やか先輩、ボールぶつけたやつだ。
「あ、あのときはごめん。臼木君。あとテストお疲れ。あの納戸さん、英語と数学トップだって? すげえな」
どこまで知れ渡ってるのかと思いつつ高橋先輩が気さくに話しかけてくる。納戸さんはニコッと笑って、
ありがとうと言った。
高橋先輩が「じゃ、練習行くわ」と出てくと、納戸さんが本に戻った。彼女のメモ帳、チラッと見えたページに「4回目、ダメだった」と走り書き。4回目? 前の学校の3回に加えて、何かまた失敗した? いや、まさか。俺が詮索する話じゃない。
でも、納戸さんの笑顔、なんか引っかかる。彼女の謎、ちょっと気になるけど、俺の凡人魂、こんなので揺らいじゃダメだろ。