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第5話:青髪ヒロイン、部活見学で謎の行動、俺はトラブル磁石か?

土曜日の昼、俺は校庭の片隅でサッカー部の練習を眺めていた。普通の高校二年生としては、部活見学なんて面倒なだけだ。隣では辛康太が、スマホでアニメのスクショを見ながらブツブツ言ってる。


「なあ、崚雅。ラノベならさ、部活見学は新キャラ登場か急接近イベントの鉄板だろ。俺のシナリオ予測だと、納戸さんが何かやらかすぜ」

康太が眼鏡をクイッと上げて言う。こいつは休日もフル稼働。


「お前、シナリオ予測って何だよ。普通に練習見るだけだろ」

俺が呆れると、康太は「いや、絶対何かあるって」とニヤニヤ。ほっとけよ。


実は納戸瑠璃が「部活見たい」と言い出したせいで、俺と康太はこうしてサッカー部に付き合わされてる。彼女は今、校舎の陰で料理部の練習を覗いてるらしい。なんでサッカー部じゃないんだよ、と思いつつ、俺はベンチに座ってボーッとしてる。


「臼木君、辛君、こっちおいでよ」

納戸さんの声。振り返ると、彼女が料理部の窓の前で手招きしてる。青髪が風に揺れて、なんかCMみたいだ。いや、落ち着け。普通のクラスメイトだろ。

「納戸さん、料理部に興味あんの?」

俺が近づきながら聞くと、彼女は小さく首を振った。

「ん、ちょっとだけ。前の学校でも、料理部だったけど…まあ、いろいろあって」

また「前の学校」。康太がいつもの目で訴えてくる。うるさいよ。

「いろいろって?」


つい聞いてしまった。納戸さんは一瞬、目を細めて、笑顔に戻った。

「大したことじゃないよ。ほら、ここの料理部、なんか楽しそうじゃない?」

話をそらされた。彼女の得意技だな。窓の向こうでは、料理部の先輩たちがケーキ焼いてる。甘い匂いが漂ってくる。納戸さんがじっと見てると、彼女のバッグから何か落ちた。小さなチャーム、銀色の星形。表面に、図書室や古書店で見たメモ帳の模様に似たマークが刻まれてる。なんだ、あれ。

「納戸さん、これ…」


拾おうとした瞬間、彼女がサッとしゃがんでチャームを掴んだ。

「ありがと、臼木君。これは、前の学校の友達からもらったやつ。落とさないようにしないと」

彼女の声、いつもより少し硬い。康太が「ラノベなら、そいつは重要アイテムだろ」と囁いてくる。黙れよ。

その時、サッカー部の練習が終わって、ボールがこっちに飛んできた。やばい、と思った瞬間、俺の顔に直撃。痛え。鼻押さえてうずくまってると、納戸さんが駆け寄ってきた。

「臼木君、大丈夫? ちょっと、鼻血…」


彼女がハンカチ出して、俺の顔に当ててくる。近い。シャンプーの匂いがふわっと。落ち着け、俺。

「いや、大丈夫。ちょっと痛いだけ…」

「ほんと、ごめんね! 俺のミスキック!」

サッカー部の先輩、高橋が慌てて走ってくる。長身で、爽やかなやつ。クラスの女子に人気あるけど、俺には関係ない。普通の高校生だし。


「いいっすよ、俺がボーッとしてただけなんで」


俺が鼻押さえながら言うと、納戸さんがクスクス笑った。

「臼木君、なんかドジっ子キャラみたいだね」

「ドジっ子って何だよ。普通に被害者だろ」

「ふーん、普通、ね。辛君は? ドジっ子?」

納戸さんが康太に振ると、こいつは胸張って答えた。

「俺? ラノベなら、主人公を導く賢者ポジだろ。シナリオ予測、完璧だし」

「へえ、じゃあ、この後何が起こるか当ててよ、賢者さん」

納戸さんがニヤッと笑う。康太、完全に調子に乗ってる。

「よーし、俺の予測だと、納戸さんが料理部に乱入して、なんかすごいスイーツ作る展開!」

「残念。入部する気はないよ。見るだけ」


納戸さんが笑いながら言う。康太が「ちぇっ、予測外れた」と肩を落とす。ほんと、バカだな。

料理部の見学後、納戸さんが「ちょっと用事」と先に帰った。俺と康太はサッカー部のグラウンド脇で休憩。高橋先輩が水筒持ってきて、気さくに話しかけてきた。

「納戸さん、なんか面白い子だな。前の学校でも料理部だったって?」




「みたいっすね。まあ、詳しくは知らないですけど」

俺が適当に返すと、高橋先輩は「ふーん」と頷いて練習に戻った。康太が耳元で囁いてきた。

「崚雅、見たか。納戸さんのチャーム、あれ絶対ヤバいぞ。ラノベなら、物語の鍵アイテムだろ」

「お前、なんでもラノベにすんな。普通にアクセサリーっしょ」

「普通? 納戸さんが普通なわけない。あのチャーム、前の学校の伏線に繋がるって」


家に帰って、鼻の痛みをアイシングしながら、納戸さんのチャームを思い出す。星形のマーク、メモ帳の模様、古書店の本。なんか、繋がってる気がする。前の学校で、彼女が料理部辞めた理由、告白3回失敗の話。普通じゃないな。

月曜の朝、教室に入ると、納戸さんが窓際で本を読んでる。青髪が朝日でキラキラ。いつもの光景だけど、なんかミステリアスだ。

1時間目の体育、鈴木先生のマラソン指導が始まる。納戸さん、走るの速え。まるで陸上部みたい。前の学校でも、運動得意だったのかな。




昼休み、康太と弁当食ってると、納戸さんが近づいてきた。

「臼木君、鼻、大丈夫?」

「ん、ああ、もう平気。ありがと、納戸さん」

「よかった。辛君は? 賢者ポジ、順調?」

「順調も何も、俺のシナリオ予測は外れ知らずだぜ。納戸さん、次は何のイベント起こす?」

康太がニヤニヤ。納戸さんはクスクス笑って、

「イベントって、辛君ほんと面白いね。ラノベなら、私どんなキャラ?」


「絶対メインヒロイン! けど、負けフラグ持ちのミステリアス系!」

「ふーん、負けフラグ、ね。まあ、いいや」

納戸さんの笑顔、なんか一瞬曇った気がした。いや、気のせいか。彼女は席に戻って、例のメモ帳に何か書いてる。チラッと見えたのは、またあの模様。今度は円の中に小さな鳥の絵。なんだ、あれ。

放課後、康太と帰り道で、納戸さんのことが頭から離れない。

チャーム、メモ帳、前の学校。普通の高校生なら、クラスメイトの謎なんてほっとくよな。

でも、なぜか気になる。自分はこんなのに興味持つタイプじゃなかったはずだけどなぁ。



俺の大事な週末の平穏、どこ行ったんだよ。



今のところの登場人物です。


・臼木 崚雅

・辛 康太

・納戸 瑠璃

・高橋先輩(高橋たかはし りょう)

・その他先生達

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