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第3話:青髪ヒロイン、図書室で謎のメモを残すけど、俺の推理は迷子

朝、教室に入ると、納戸瑠璃が窓際の席で本を読んでいた。青髪が朝日でキラキラ光ってる。まるでアニメのワンシーンだ。俺、臼木崚雅、普通の高校二年生、こんな絵になる光景に慣れてない。昨日、納戸さんの弁当や校庭での黄昏っぷりを見て、なんか普通じゃない雰囲気を感じたけど、俺の人生は普通でいいはずだ。

「なあ、崚雅。納戸さんの青髪、今日も負けヒロインオーラ全開だな。俺のデータベースによると、転校三日目で何か事件が起きる確率、87%だ」

隣の席で、辛康太がラノベをパラパラめくりながら言う。


「てか、納戸さんに絡むのやめろ。目立つだろ」

「絡む? 俺は観察してるだけだ。ラノベ的に、彼女の過去には絶対何かあるって」


康太が眼鏡をクイッと上げて、納戸さんをチラ見する。やめろよ、バレる。俺はため息をついて、教科書を取り出した。

水曜日、1時間目は英語。先生の適当な発音で単語テストやられるのだるい。



授業が始まる前、納戸さんが俺の席に近づいてきた。手に小さなメモ帳持ってる。昨日見た、変な模様描いてたやつだ。

「臼木君、図書室ってどこ?」


急に話しかけられて、ちょっとドキッとした。落ち着け、普通の質問だ。

「図書室? 2階の西側、職員室の奥だよ。行くなら案内するけど」


「ん、いいよ。一人で大丈夫。ありがと、臼木君」

納戸さんがニコッと笑う。サファイアみたいな瞳がキラッと光って、なんか眩しい。康太が「ほら、フラグ」と目で訴えてくる。無視だ、無視。

昼休み、康太と弁当食ってると、納戸さんが教室を出ていくのが見えた。例のメモ帳を手に持ってる。なんか気になるな。

「崚雅、見たか。納戸さん、絶対図書室で何かするぞ。ラノベなら、ここで秘密のアイテム発見とか、謎の人物との接触だろ」

康太がカレーパンかじりながら言う。ほんと、こいつの脳は…


「お前、納戸さんをラノベキャラ扱いすんな。普通に本借りにでも行くんだろ」


「普通? あの青髪が普通なわけないんだよなー」





気になって、昼休み終わりに図書室に行ってみた。


納戸さんがいるかと思ったけど、誰もいない。静かな部屋に本棚が並んでて、ちょっとカビ臭い。ふと、貸出カウンターに置かれたメモ帳が目に入った。納戸さんのやつだ。表紙に変な模様、昨日チラッと見たやつに似てる。開いていいもんか迷ったけど、好奇心に負けた。


中を見ると、ページいっぱいに不思議な模様。円形の図形に、なんか文字みたいなのが混ざってる。魔法陣? いや、まさか。ファンタジー脳は康太だけでいい。次のページには、走り書きで「前の学校」「3回」「ダメだった」と書いてある。3回? ダメだった? 何だ、これ。納戸さんの過去、関係あるのか?


「何をしてるの、臼木君…?」


背後から声。振り返ると、納戸さんが立ってる。やばい、めっちゃバレた。


「いや、えっと…メモ帳、落ちてたから…」

しどろもどろで返すと、彼女はメモ帳をサッと手に取った。

「これ、私の。見ないでほしいな」

声は穏やかだけど、目はちょっと鋭い。なんか、怒ってる? いや、違う。なんか、悲しそう?


「ごめん、納戸さん。変なつもりじゃ…」

「いいよ、別に。臼木君、図書室好き?」

話をそらされた。彼女の得意技だな、これ。

「まあ、たまに来るくらい。納戸さんは?」

「前の学校でも、図書室よく使ってた。本、好きだから」



また「前の学校」。康太なら「伏線キター」と叫びそう。俺は無言で頷いた。納戸さんは本棚のほうに歩いていって、なんか古そうな本を手に取った。表紙に変なマーク。メモ帳の模様に似てる気がする。いや、気のせいか。


放課後、康太と校門に向かう途中、納戸さんが自転車を押してるのを見かけた。青髪が夕陽で赤く染まって、なんか幻想的だ。

「崚雅、見たか。納戸さんのあの雰囲気、絶対負けヒロインの黄昏シーンだろ。過去のトラウマ、確定だな」

康太がニヤニヤしてる。ほんと、うざい。

「お前、トラウマって決めつけるな。普通に帰ってるだけだろ」


家に帰って、夕飯食いながら、納戸さんのメモ帳のことが頭から離れない。3回、ダメだった、って何だ。前の学校で何かあったのは確かそうだけど、俺が詮索するのも変だよな。普通の高校生として、普通に過ごせばいい。

翌朝、教室で納戸さんがまたメモ帳に何か書いてる。チラッと見えたのは、またあの模様。今度は星みたいな形も混ざってる。なんだ、あれ。美術の授業で習った覚えはないぞ。

「よ、納戸さん。昨日、図書室で何の本借りた?」

軽く話しかけてみた。彼女はメモ帳をパタンと閉じた。

「古い伝承の本。臼木君、伝説とか興味ある?」

「いや、別に。都市伝説とか、康太が好きそうだけど」

「ふーん、辛君、面白そうなタイプだね」


納戸さんがクスクス笑う。康太が教室に入ってきて、即座に絡んできた。

「納戸さん、俺のこと話してた? やっぱ俺、サブキャラとして輝いてる?」

「辛君、ほんとアニメみたいだね笑」


康太は「ヒロインに認められた」とか言いながら拳握ってる。ほんと、こいつバカだな。


でも、納戸さんの笑顔の裏で、なんかモヤモヤする。メモ帳の模様、図書室の本、前の学校、3回、ダメだった。



普通じゃない何かがある。いや、深入りしないほうがいいよな…。うん。



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