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第2話:青髪ヒロイン、俺の弁当に興味津々だが、勝率0%の影がチラつく

今のところの登場人物です。


臼木うすき 崚雅りょうが

かのと康太こうた

納戸なんど 瑠璃るり

朝、教室に着くと、納戸瑠璃がすでに席にいた。窓から差し込む光に青髪がキラキラ光ってる。昨日より存在感が強い気がする。まるで教室の空気が彼女を中心に動いてるみたいだ。俺、臼木崚雅、普通の高校二年生、こんな幻想的な光景に慣れてない。

「なあ、崚雅。やっぱりあの青髪、負けヒロインのオーラがすごいよな。俺のデータベースだと、転校二日目で主人公に絡むのは鉄板のフラグだ」

隣の席で、辛康太がラノベを読みながらブツブツ言ってる。

こいつのデータベース、ほんと何だよ。

「お前、昨日も似たこと言ってたろ。いい加減、普通に話してくれ」

「普通? あの青髪が普通なわけないだろ。絶対、秘密があるって」

康太が眼鏡をクイッと上げて、瑠璃をチラ見する。やめろよ、目立つ。俺はため息をついて、鞄から教科書を取り出した。火曜日、1時間目は国語。山田先生のダミ声で古文を聞くのは、ぶっちゃけキツい。

授業が始まる前、瑠璃が突然俺のほうを向いた。

「臼木君、昨日、弁当食べてたよね。いつも自分で作る?」

急に話しかけられて、心臓がちょっと跳ねた。落ち着け、ただの会話だ。

「いや、母さんが作ってる。俺、料理とか無理だし」

「ふーん、いいな。手作り弁当って、なんか温かいよね」

瑠璃がサラッと言う。彼女の目はちょっと遠くを見てるみたいで、ほんの少し寂しげだ。ん? 何かあったのか。いや、考えすぎだろ。

「納戸さんの弁当は?」

つい聞いてしまった。彼女は小さく微笑んで、鞄から銀色の弁当箱を取り出した。シンプルだけど、なんか高級感がある。

「私も自分で作るよ。前の学校でも、そうしてた」

前の学校、か。康太が「ほら、過去の伏線だ」と目で訴えてくる。うるさいよ、康太。

チャイムが鳴り、山田先生が教室に入ってきた。今日もニヤニヤしてる。あの人はなんでいつも楽しそうなんだ。



昼休み、康太と弁当を広げてると、瑠璃がまた俺たちのほうに歩いてきた。2日連続で絡まれるなんて、俺の普通ライフが揺らぐぞ。

「臼木君、弁当見せてよ」

瑠璃が俺の弁当箱を覗き込んでくる。近い。シャンプーの匂いがふわっと漂う。落ち着け、俺。

「いや、普通の弁当だよ。卵焼きとか、ウィンナーとか」

弁当箱を開けると、瑠璃の目がキラッと光った。

「卵焼き、ふわふわだね。いいな、こういうの。ね、ちょっと交換しない? 私の唐揚げと、その卵焼き」

「交換?」

俺が困惑してると、康太が横から割り込んできた。

「崚雅、これはラブコメの定番だ。弁当交換は好感度アップの第一歩。でも、青髪ヒロインの勝率0%を考えると、ここで何か起こる可能性も…」

「お前、黙れ。普通に食いたいんだよ」

俺が声を荒げると、教室の視線が集まる。瑠璃はクスクス笑ってる。なんだ、その余裕。

「いいよ、別に交換しなくても。ちょっと気になっただけ」

瑠璃はそう言うと、自分の弁当を開けた。唐揚げ、ポテサラ、ミニトマト。シンプルだけど、めっちゃ美味そう。唐揚げ、でかすぎだろ。あの弁当箱にどうやって入れたんだ。

「納戸さんの弁当、なんかプロっぽいな」

俺が言うと、彼女はちょっと照れたように笑った。

「前の学校で、料理部だったから。まあ、いろいろあって辞めたけど」

また「前の学校」。康太が「ほら、また伏線」と顔で訴えてくる。ほんと、うざいな。

「いろいろって?」

つい聞き返してしまった。瑠璃の笑顔が一瞬、曇った気がした。

「ん、別に大したことじゃないよ。ほら、食べよう」

彼女は話をそらして、唐揚げをパクッと食べ始めた。絶対、誤魔化したな。まあ、初対面で詮索するのは野暮か。


放課後、康太と部活の準備をしてると、校庭で瑠璃を見かけた。陸上部の練習を眺めてる。青髪が風に揺れて、なんか絵になってる。桜の花びらが彼女の周りで舞ってる。まるで演出だ。

「崚雅、あれ見ろ。青髪ヒロインが校庭で黄昏てる。絶対、過去の回想シーンだろ」

康太が興奮気味に言う。こいつ、ほんとラノベ脳すぎる。

「決めつけるなよ。普通に練習見てるだけだろ」

「普通? あの青髪が普通なわけない。俺のデータベースだと、転校生の黄昏シーンは99%、過去の秘密に関連してる」

「そのデータベース、捨てていいか?」

俺が呆れると、康太は「冗談だよ」と笑いながら肩を叩いてきた。冗談に聞こえないぞ。


その夜、家でテレビを見ながら、瑠璃のことを思い出した。前の学校で何があったんだ。料理部辞めたって、なんか重い理由がありそう。いや、俺が気にする必要ないよな。普通の高校生なんだから、普通に過ごせばいい。


翌朝、教室に入ると、瑠璃が俺の席の近くで何かしてる。メモ帳に絵を描いてるみたいだ。チラッと見えたのは、なんか不思議な模様。

魔法陣? いや、まさか。

「よ、納戸。なに描いてる?」

俺が話しかけると、彼女はメモ帳をパタンと閉じた。

「ただの落書きだよ。臼木君、絵とか描く?」

「いや、全然。美術の成績、壊滅的だし」

「ふーん、意外。なんか器用そうに見えたのに」

瑠璃がニヤッと笑う。なんだ、その「意外」は。俺、普通だぞ。

その瞬間、康太が教室に入ってきた。

「崚雅、納戸、聞いてくれ。昨夜、ネットで調べたんだ。青髪(負け)ヒロインの勝率0%、なんかヤバい都市伝説っぽいのが…」

「康太、ストップ。朝からそのテンション、勘弁してくれ」

俺が遮ると青髪、瑠璃がクスクス笑いながら言った。

「辛君、面白いね。なんか、アニメのキャラみたい」

「マジか。ヒロインに認められた。これ、俺のサブキャラフラグ立ったか」

康太が拳を握りしめる。ほんと、救いようないな。


でも、瑠璃の笑顔を見ながら、なんかモヤモヤした。



前の学校、料理部、落書き、勝率0%。普通じゃない何かがある気がする。いや、普通の高校生として、関わらないのが一番だよな。

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