第13話:青髪ヒロイン、炎のダンスでざわめき、俺の日常が遠ざかる
文化祭二日目の夜、校庭はキャンプファイアの炎で赤く染まっていた。生徒たちの笑い声や音楽が響き、星空の下でダンスの輪が広がる。雑用係として、薪の補充やドリンクの運搬を終えて、ようやく一息。汗でシャツが張り付く中、辛康太がポケットに手を突っ込んで近づいてきた。
「なあ、崚雅、物語の王道なら、キャンプファイアは恋のターニングポイントだろ、納戸さん、誰と踊るか楽しみだな」
康太がニヤッと笑う。こいつのラノベ脳、夜でも全開だ。
「お前、また変な視点だな、俺は薪運びでバテてるだけだ」
「バテてる? 親友として、もっとドラマに関われよ」
「親友って言うな、ほら、ドリンク配れよ」
ダンスの輪の近くでは、納戸瑠璃がクラスメイトと談笑してる。青髪が火の光で揺れ、白いワンピースが妙に映える。手に持ったシトラスジュースのグラス、昼のカフェで出したやつだ。彼女、なんかいつもより落ち着いてる。
「臼木君、薪お疲れ!」林奈緒、美術部のボブカット女子が、グラス片手に絡んできた。
「林、雑用係ってほんと休まる暇ねえな」
「えー、でも頼りになるじゃん! キャンプファイア、楽しそう!」
林が笑う。火の揺らめきや音楽、確かにテンション上がる雰囲気だ。けど、俺には関係ない…はず。ダンスが始まり、生徒たちが輪になって動き出す。この学校のジンクス、キャンプファイアで踊った相手と告白が100%成功するってやつ、ガチらしい。去年の先輩カップルが話題だし、康太が昼間「ジンクスは鉄板!」と騒いでた。
林の次は田中彩花が輪の外でジュース飲みながら話しかけてきた。
「臼木君、ジンクスの話、聞いたよね? 踊る相手、気になる人いる?」
「俺? いや、別に、普通に過ごしたいだけだ」「ふーん、つまんない! 納戸さんは? 昨日、気になる人いるって言ってたよね」田中のメガネが火の光でキラッと光る。納戸さんの「気になる人」昼のカフェでの言葉が頭に残る。
音楽がアップテンポに変わり、ダンスの輪が賑やかになる。納戸さんが輪の端で、クラスメイトの女子と笑ってる。そこに、飛松大翔がいた。同じクラスのバスケ部、イケメンで長身。笑顔がやたら爽やかで、女子に人気だ。納戸さんが彼に近づき、グラスを置いて声かけた。
「飛松君、ねえ、踊らない?」
彼女の声、いつもより少し高め。飛松が振り返り、ニコッと笑う。
「納戸さん? お、いいね、行こうか」
納戸さんが飛松の手を取って、ダンスの輪に入る。青髪が火の光で揺れる。康太が俺の肩を叩いてきた。
「崚雅、見たか! 納戸さんが飛松を誘った! ラノベなら、ヒロインの恋が動き出すシーンだぞ!」
「お前、また変な妄想だろ、いい加減にしろ」
「妄想じゃねえ! ジンクス100%だぞ! 納戸さん、告白成功確定じゃん!」
康太が目を輝かせる。
俺、なんかモヤッとする。納戸さんが飛松を誘った? ジンクス、ほんとに100%か?
ダンスが進む中、納戸さんと飛松が輪の中心で踊ってる。彼女の動き、軽やかで、火の光が青髪をキラキラさせる。飛松もリズムに乗って、笑顔で話しかけてる。クラスメイトの男子が「飛松と納戸さん、めっちゃ絵になるな!」と騒ぐ。林も「ジンクス、今回も当たるかな?」と笑う。
音楽が一段落し、納戸さんが輪から出て、ジュースを取りにくる。俺、思わず声かけた。
「納戸さん、ダンス、楽しそうだったな、飛松、誘ったんだ」
「ん、うん、楽しかった、飛松君、ダンス上手いね」
彼女の笑顔、いつもより柔らかい。けど、目がなんか遠い。康太が横から割り込む。
「納戸さん、飛松を誘うなんて! ジンクス発動だろ! 告白する?」
「辛君、ほんとノリいいね、…まあ、ちょっと、考えてる」
納戸さんがクスクス笑う。考えてる? マジか。俺は聞き返しそうになったけど堪えた。
キャンプファイアが盛り上がる中、ダンスが一区切り。納戸さんが飛松を校庭の端に呼び出す。火の光が届かない、静かな場所。俺、薪の片付けしてたけど、チラッと見えた。彼女、深呼吸して、飛松に話しかける。
「飛松君、ちょっと、話したいことあって」
飛松がニコッと笑う。「お、なになに?」納戸さんが一瞬、青髪を指でいじる。声、いつもより真剣だ。
「私、転校してきてから、ずっと気になってたんだ、飛松君のこと、…好きだよ、付き合ってほしい」
彼女の声、静かだけど、しっかり響く。俺、薪持ったまま固まった。康太が近くで「マジか!」と囁く。飛松、ちょっと驚いた顔して、頭をかく。「納戸さん、え、マジで? めっちゃ嬉しいけど…ごめん、俺、好きな子いるんだ」納戸さんが一瞬、目を伏せる。笑顔、ちょっと硬い。「そっか、…うん、わかった、気持ち、伝えてよかった、ありがと、聞いてくれて」
彼女が小さく笑う。飛松も「ごめんな、納戸さん、めっちゃいい子なのに」と返す。
二人、ぎこちなく輪に戻る。その瞬間、近くのクラスメイトがザワザワし始めた。
女子が「え、納戸さん、飛松君に振られた?」「ジンクス、100%じゃなかったの?」と騒ぐ。
男子も「マジか、初めて破れた!」と叫び、林は衝撃で目を丸くする。康太が俺に耳打ち。
「崚雅、見たか! ジンクス破れた! ラノベなら、ここで物語が動くぜ!」
「お前、また変なこと言うな、…でも、マジで破れたのか」
俺、なんか胸がざわつく。納戸さんの告白、振られた。ジンクス、100%じゃないの。
キャンプファイアが終わり、生徒たちが校庭を片付け始める。納戸さんがベンチに座って、ジュース飲みながらぼーっと火を見てるとこに俺は薪の片付け終えて近づいた。
「納戸さん、…さっき、大丈夫か?」「ん? うん、大丈夫だよ、臼木君、雑用お疲れ、キャンプファイア、楽しかったね」
彼女の声、静かだ。
告白、ジンクス、振られたこと。なんか、繋がってる気がする。家に帰って、ベッドに転がる。納戸さんの告白、飛松、ジンクスの破れ。校庭のザワつき、彼女の笑顔。文化祭の夜、こんなドラマチックな展開、俺の静かな高校生活には派手すぎる。
こんな恋の波乱に巻き込まれるキャラ、俺じゃねえよな。




